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哲学カフェ 試行1

豊岡市にあるだいかい文庫に置いてあったチラシを見て、地域しごとサポートセンター但馬のセミナーに参加したのが2023年夏。
普段自分が思ってること、特に社会構造の不均衡、お金、政治、経済、国の仕組みなどを誰にもなんの気兼ねもなく喋れる場がないか、例えば”立ち飲み屋”的なものができないか、意見を聞いてみると、アルコールはどうしても女性や子どもは入れないので、”哲学カフェ”はどうかとの提案を受けた。

※哲学カフェとは、飲み物片手に進行役のサポートのもと、私たちの暮らしや社会 に関わるテーマについて、参加者同士で話し合う営みです。1992年にフランス、 パリのカフェで自然発生的に生まれ、その後、世界中に広がりました。日本では 2000年ごろから行われるようになり、現在では全国100カ所以上の場所で行われて いると言われています。
(参考文献) 主権者教育のための成人用参加型学習教材(平成27年度版)総務省

このサポートセンター但馬の職員の方、近郊で”哲学カフェ”をやった事があるNPOにコンタクト、アドバイスをもらい、だいかい文庫のだいかい大学のフローを使って実行しようと決意。
自身初めてやる”哲学カフェ”のテーマはできるだけ身近で分かりやすいものが良いと考え、だいかい大学運営スタッフと協議して「物価高騰、どう思う?」とした。

哲学カフェ初回の掲示チラシ

当日は、サポートセンターから2名、公務員の方2名、大学生1名(私が面識のある教授が推薦してくれた模様)、会社員の方1名(だいかい文庫現お店番)、大型店舗の経営スタッフ1名と参加者7名が来てくれ、偶然にも丁度話しやすい人数となった。
初めに私がこのテーマをやろうとした想い(今、自分は物価高を身に沁みて感じているが消費者、生産者、販売店といったいろんな角度から物価高という事象について対話して、他の背景の異なる人たちが、どう考えているのかを知って自分の考えを深めたいということ)を皆さんにお伝えした。
続いて参加者の皆さんから一人ずつ参加の動機を語ってもらった。

その中の学生の方が「実際に一人で生活するようになり物価高を体感している、友達同士でも光熱費や食費について話す事がある」と喋ってくれ、これが良いきっかけとなり対話を始めることができた。

喋っている人の意見を隣の人がメモ、真ん中のテーブルに貼付、良い方法だ

さまざまな意見たち
・買い物も親と一緒に行くだけでこれまでものの値段を気にしていなかった
・実際に一人で生活するようになり、光熱費や食費の高さに驚いている
・妻に任せっきりでやりくりしてもらっていたので、余り気にすることはなかった
・公務員というと友達から安定してて良いなと言われるが、実際はそんなことはない、給料も民間に引っ張られる
・物価は上がっているが原料費、人件費の割合が多く売上が上がったとしても、利益は少ない。人件費はかかるが人を大切にしないと集まらないので最近休みはきちんと取るようになった。売り上げを目指すのではなく、地域に貢献することを目標とするようになった。
・待遇を良くしたり心の豊かさに配慮した結果、物価高になったとすれば致し方ないのかもしれない。
・将来の不安とかで貯金が必要だというが、その時生きてるかどうかも分からないのに今使いたいと思う
・一般企業は儲かったとしても何らかの将来的なリスクのため、設備投資や給料ではなく内部留保に充てており、結果として給料は上がっていない
・これ以上物価も上がらず給料も上がらずそれを維持しているほうが良いと考える、資本主義はやめたほうがいいのではないか
・給料が上がっていくと上がらずに取り残される人が出てしまう、どうすればいいのか
・物価は上がってても賃金が上がれば良い、海外では物価も上がるが賃金も上がっているが日本はそうなっていない

私が特に心に残った言葉は「これだけ物価が上がっているのに賃金は上がらない、一体そのお金はどこに行っているのか。」「買い物に行くと輸入品は安いという風に感じるが、なぜ海外から運んでくるのに安いのか、一方で国産品は高い。おかしいのではないか。」「免許取り立ての頃ガソリン価格は100円を切っていた、今は160円。トリガーも効かない、減税しないと給料は上がらないのではないか。」

皆さんに”哲学カフェ”をやりますとは言わなかったが、対話を積み重ねていくに連れて、ぽろっと出た一言が結構物事の本質的な部分をついていて、話の内容が段々と哲学的になっていくというところが非常に興味深くおもしろかった。これこそ人間という社会的な生き物のすばらしいところだなと思った。

こんな風にある共通のテーマについていろんな立場の人が、自分の視点から意見や質問をしたり、他人の意見を聞いたりする場が街中のそこら中にできれば、豊岡の街がもっとよくなっていくのではないか。
そしてそれが徐々に周りに広がってゆき、いずれは日本中の街中のそこかしこが対話で溢れている。その時にはきっと誰もが相手のこと尊重でき、誰もが住みやすい世の中になっているだろうと夢想している。
そのためにもこの活動は続けていきたいと思っている。(了)

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