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7度目の正直

職場復帰して1ヶ月が経とうとしていた。
6年以上のブランクがあったが、案外覚えているもので、順調に色々な手術に就き出した。

手術室で1番のメインになる手術が心臓の手術になる。勤めていた病院には、日本屈指の名医がいた為日本各地から患者がやってきた為、毎日1.2件の手術をしていた。

手術は、短ければ3時間、長ければ、24時間かかったこともある。当時はその間休憩は夕方1回だけという過酷な手術もあった。2ヶ月目心臓外科の手術についてもらうねと言われた。

そうなると、もしも、治療を再開しようとなった時、同じ時間に薬を使えなくなったらどうしようと思い、心臓の手術に就く前に、もう一回だけ治療しとこうと思った。それでダメならやっぱり諦めがつく。

芸能人御用達病院に向かう途中、ふと病院のホームページを見た。そこには、良い卵子を作るための新薬の注射が紹介されていた。良い卵子が取れる注射ってどんな物だろうと、開口一番医者に聞いた。

すると、注射薬1本3万円くらいするが、点鼻薬もしなくて良いし、注射の回数も短くなる。ただし、反応する人しない人がいるし、卵子の数もそれほど出来ないという説明だった。
職場復帰して間もなかったのもあり、あまり時間もかけられないし、試してみることにした。

高級な注射を5本持ち帰り、セレブ御用達病院で注射を打ってもらうことなった。3日のエコー検査を見てびっくりした。大きな丸い卵胞が2つ出来ていた。
4本目を打ち、採卵に適した大きさになったため、今度はまた、芸能人御用達病院に行った。

簡単に書くが、仕事をしながらだったため、全部仕事が終わって夕方からの時間でしていた為、クタクタになったが、やることをやらないと後悔すると思い頑張った。

採卵は、無事に2個取れた。問題は受精するかだったが、これも見事クリアした。分割も綺麗に進んで、いざ戻す日が来た。

卵を戻す為にいつも通り処置台の上に寝ていると、「来たー!!ラスボス来たー」望んでいたラスボスが満を辞して現れた。そしてまた、例の「うん、今回は大丈夫、妊娠するよ」発言をしてくれた。
良い予感しかしないが、成功しそうな時しかラスボスは現れないのか?手柄だけ持ってってる?という疑問も持った。

この魔法の注射は、その後ホームページ上から消えていた。今までの苦労はなんだったのかなという位のスピード採卵と、良い卵子、しかし、今でもなんの薬なのか不明なままだ。

綺麗な大きな卵胞が印象的だったのか、もしかしたら双子かもの疑念がその日からずっと湧いてでた。

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