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【学年通信】 かけ算

 いつのことだったか「かけ算は、なにしろ数学のことだから、どう考えても、日本の小学校のかけ算の順序へのこだわりは、奇妙な悪習でしかなく、救いようがない」「頭を冷やした後でも、かけ算の順番にこだわる教科書は、くるくるパーだとしか思えない」と脳科学者の茂木健一郎氏がツイートしていた

どのようなことかというと、2×3 も 3×2 も答えは6であり、かける数とかけられる数の順序を問題にするのはおかしいと言っているのである

このことは1972年に新聞で取り上げられ、全国的な論争になっている。具体的に言えば、日本の小学校二年では「一つぶんの数 × いくつ分 = ぜんぶの数」と指導される。従って、「豚が三匹います。豚の耳の数は全部でいくつですか」というかけ算の問題が出された場合、指導に従えばその式は 2×3=6 かくべきで、3×2=6 と書いてはいけない。極端に言うと、テストで後者の式を書くと不正解になる。これは極論であって不正解にする先生はいない

はっきりと確かめたわけではないが、アメリカの指導は「いくつ分 × 一つぶんの数 = ぜんぶの数」と日本のそれと逆であるという。また、かけ算の順序はあまり気にされないらしい。だとすれば、これは数学の真理に基づくものではなく、母国語に応じた「指導の問題」である

筆者も小学生の時にこのように指導されたはずだが、このことは小学校の教員になるまで忘れていた。教員となり、こうした指導方法を知り、とても驚いたのを覚えている

茂木氏の論は、数学的見地からすればもっともなことであるが、指導の現場をあまりよく理解していない感情論であるように思える。学習の最初においては、理解のためにもかけ算の順序は大切であろう

しかし、いつまでも算数・数学を現実の現象を翻訳するための道具としていたのでは、茂木氏の「救いようがない」という誹りはまぬがれない。スタートは具体であっても、最終的には交換法則により、2×3=6、3×2=6、どちらでもよいのである。

(2021年7月)

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