見出し画像

ラブストーリー

わかっている。
君の視界に僕が入っていないことくらい。
君が好きになるのはいつだって、天然人たらしで喰えないタイプの霧みたいな人で、そして、ちょっとSっ気のあるような、そういう僕とは正反対の人。
痛いほど、わかってる。

あいつのこと好きでしょ。

そう指摘すると、なんでわかったのと目を見開いて驚く君。

わかるに決まってるだろ。
僕がどれだけ君のことを見ていると思っているんだ。

そう言いたいのをぐっと堪えて答える。

「君のラブストーリーの登場人物はいつもそんな男だよ」



わかってる。
君のラブストーリーに僕の居場所はないんだって。招かれたのは、どうやら別の人らしいから。   

僕はこうして君と招待状を作ってる。
初めから、君は作者で僕は校閲。
君の物語が綺麗に進むように、僕はそっと赤を入れて訂正する。

いつもありがとうねって笑う君。
当たり前だろ、だって好きなんだから。
幸せになってほしいに決まってる。
勝ち目のない恋に冷めるほど、浅い「好き」じゃないんだよ。

君のラブストーリーに招かれたのは僕じゃなくて、天然人たらしで喰えないタイプの霧みたいな人で、そしてちょっとSっ気のある、僕とは正反対の人。


「君のラブストーリーの登場人物はいつもそんな男だよ」


これが糸だったらいいのにと思いながら、今日も赤いサインペンを手放せない。


(共同著者 https://note.com/pman_kirin)




この記事が参加している募集

#私の作品紹介

96,147件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?