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人生初バックパック旅 -ぼったくりガイドについて行った編-

前回、旅行の1番の目的であるシャウエン観光を終えました。
次に目指すは、モロッコの迷宮都市ことフェズ。観光の難易度がモロッコの都市の中ではトップレベルであるという事前知識はありましたが、今回の旅行で1番刺激的な1日となるのでした…


シャウエンからフェズへ

先晩のハプニングがなかったかのようにぐっすり眠って元気になったところで、再びCTMに乗ってフェズへ向かいます。

車窓から見えた虹

フェズに向けて気を引き締め直す我々には、実はもうひとつ懸念点がありました。
旅行前、よく調べずにフェズの激安宿を予約し、当日になってクチコミを確認したところ、「お湯が出ない」「ゴキブリが出る」「ベッドが硬い」等、散々なことを書かれていました。モロッコのゴキブリなんて見たこともないですが、おそらく、どころか確実に、日本のゴキブリより戦闘力が高い(調べることすら怖いので、どなたか結果がわかったら教えてください)。
絶対に会いたくない。

フェズに着いてすぐに、覚悟を決めてリヤドに向かいました。インターホンを押してしばらく待っていると、2年ぶりに再会した地元の友人のようなテンションで、宿主の女性が出迎えてくれました。筆者は英語にそこまで詳しいわけではないですが、ニュアンスは「お待たせ〜よく来たね〜!入って入って〜!」と聞こえるような話しぶりでした。

そして、中に入ってみると…

特に意味はなさそうなタジン鍋風のお皿
ららぽーと並みに高い吹き抜け
モロッコすぎる鏡

え、めっちゃ良くないですか???
受付だけでお腹いっぱいになるくらいモロッコ。そして肝心の部屋はというと、すごくいい感じ。なんと、写真は撮り忘れました。

謎の鏡を真剣に撮るなら部屋の写真も撮って?

ベッドは触ったり座ったりして確認したところ、至って普通の硬さ。そもそも床にぺらぺらの布団でも寝られる日本人にとって、マットレスがあってもベッドが硬いと感じることなどあるのだろうか。
ちなみにお風呂のお湯に関しては、確かに油断すると冷水になるので、蛇口をガチャガチャして定期的に念を送る必要がありました。

そしてゴキブリはいなかった。本当によかった。

さて、2年ぶりに再会したテンションの宿主に、観光のおすすめを聞くと、モスクは外せないとのこと。ほな行くか〜と軽い気持ちで向かったのですが、まさかここに行ったことで、我々の運命が大きく変わってしまうとは、このとき想像もしませんでした。

フェズ探索

モスクや、タンネリと呼ばれる皮なめし工場のような有名スポットに行くには、市場を抜けないといけません。歩いているだけで、たしかにシャウエンの数倍は声をかけられます。しかし、どうでもよければスルーすればいいだけなので、覚悟していたほどではありませんでした。

市場レベル1

同行人は、せっかくなので革製品が買いたいと、店主が不在のお店に入店。しばらくすると店主が帰ってきましたが、日本の服屋さんと同じで、気になると言えば色違いや似た商品を色々見せてくれました。日本の服屋さんと違うことで言うと、やたらライターを使って実演販売をしてくること。
当時はなにを見せられているのかよくわからず、ただベルトがライターで炙られている様が衝撃で「おぉ〜」と言っていました。店主も満足げににっこりしていたので、それはそれで良し。

後からわかった話ですが、タンネリは、工場の中に直営の革製品のお店がある一方で、周辺の市場には偽物のプラスチック製品を売るお店も多いらしく、「プラスチックじゃないよ!」とアピールするためにライターで炙って見せてくれていたようです。

市場レベル2

奥へ進むにつれて、フェズも本気を出してきました。油断するとスリに遭いそうな人の量と道幅の狭さ、あとは薄暗さ。あまりスマホを出していても危ないので、迷宮都市をほぼ地図なしで進みます。

そして、なんとか目的のモスクに到着。しかし、どうやら中に入ることはできないようで、よくわからず外をウロウロ。この行動が観光客感丸出しだったのでしょう。1人の男性が声をかけてきました。

アブドゥルとの出会い

突然、イカつい男性が「モスクにはイスラム教徒しか入れない」「女性の出入り口はあっちにある」等、モスクについて説明を始めました。
フェズでは、ガイドや道案内を一方的にしてくる人がおり、話を聞いてしまうと後からチップを要求されると聞いていたので、一気に警戒心マックスに。

すると、その男性が「俺はここのGuardianだから安心しろ」と言ってきました。見た目が完全に一般人なので、ほんまか?と思ったのですが、説明もなく「俺についてこい」と突然歩き始めるGuardian。筆者は先天的ネガティブ後天的ポジティブ人間なので、「絶対変なところに連れていかれて、この人の仲間に囲まれて袋叩きにされるに違いない」と怖くてたまらなかったのですが、同行人がついて行くので、そのまま後を追いました。

白い上着の男性が自称Guardian(絶対ウソ)

そして、1人しか通れない幅の階段を登りながら、後ろからこの人の仲間が来て挟み撃ちされたら絶対逃げられないな、と思いつつ、よくわからない建物の屋上にたどり着きました。

「ここが1番綺麗だから写真を撮れ!!」ともはや強引に写真を撮らされ、「お前らの写真撮ってやるよ!」と写真を撮ってもらい、よくわからぬまま次の場所へ。

きれいかもしれない。

半ば諦めながら、道中名前を聞いたところ「アブドゥル」と名乗ったので、アブドゥルと呼ぶことに。

アブドゥルは英語があまり話せないらしく、定型文のガイドだけ大変流暢に話してくれるものの、質問をすると、もう一度同じガイドが始まってしまうため、ゲームのNPCと会話をしている気分になりました。

同じガイドを何度も聞いたので、3ヶ月近く経った今でもぼんやりと覚えているのですが、この施設では女性が使うリップクリームやヘアケア製品などを調合している場所があり、そこに連れて行くとのこと。

LUSHの入浴剤みたいな色の粉

しかし、思い出していただきたい。我々はもともとモスクとタンネリを見にきたのであって、ここで時間を使いすぎるとタンネリの営業時間に間に合わない。
ここの販売員のような女性に「17:00にタンネリが閉まっちゃうのでもう行かないと」と何度訴えても、「今から1時間後までやっている」みたいなことを言われ、もはやお互い「お前何言ってんねん」と言いたげな空気になってきたので、そのまま退散。
すると、出口にアブドゥルが待機しており、「満足したなら次行くぜ!」と言ってくるので、「こっちはタンネリに行きたいんだぜ!」と伝えたところ、「はいはい、タンネリね。近道知ってるから任せろ!」とノリノリで出発。

そしてその道中、アブドゥルがとうとう本性を表しました。


「で、最後まで案内したらいくらくれる?」

ガイドやん。薄々どころか濃々気づいていたけど、やっぱりガイドでした。
「GuardianじゃなくてGuideやね」と言ったところ、「子供がいるからね、色々兼業しているんだ」とのこと。いやそうじゃなくて。

しかし、アブドゥルの頼もしい背中と辿々しい英語に愛着が湧いてしまったので、諦めて値段交渉をしたあと、そのままついて行くことに。

安心感のある背中

タンネリ到着

アフリカに関する文化人類学の書籍やエッセイ本を読む機会がたまたま重なったのと、実際にアブドゥルや他のモロッコの人々と接してみて感じたのは、お金さえ払えば、誠実に対応してもらえるということ。お金を稼ぐために、多少強引なことをしてくるときもありますが、逆にお金さえもらえれば、きちんとその分の仕事はする、というスタンスの人がほとんどな気がします。

もはや大昔に感じますが、タンジェの空港から市街地まで乗ったぼったくりタクシーの運転手も、乗ったあとはきちんと安全運転で目的地まで行ってくれ、降りるときに我々はお札しかもっておらず(これはやばい、運転手に釣り銭持ってないってぼったくられそう)と思ったものの、きちんと乗る前に交渉した通りのお釣りを返してくれました。

「きちんと」のハードル低くない?と思われるかもしれませんが、最初にした口約束をきちんと守るって、歌舞伎町の客引きやなにかしらの作品の悪役に比べれば、誠実度はかなり上だと思います。

と、少し脱線しましたが、アブドゥルも約束通り、タンネリに最短コースで連れて行ってくれました。俺は入り口で待っている、と謎のおじさんにバトンタッチ。
今度は、謎のおじさんにミントを渡され、また1人しか通れない幅の階段を上がって屋上へ。ちなみに、このミントは、皮の加工に使う薬品や染料の匂いにやられたときの回復アイテムらしいです。

想像以上のスケール

写真に写っている人が見えるかわかりませんが、思わず声が出てしまうくらいにはスケールの大きい景色でした。なぜか屋上に、檻と、檻に閉じ込められた大型犬がおり、あれを突然解放されて襲われたら、屋上でデスゲーム始まるな…と思いながら、満足するまで写真を撮りました。

謎のおじさんに、左から順にこういう作業をするんだよ(全部忘れた)と説明してもらい、せっかくなので一緒に自撮り。

いい笑顔

おじさん、JK並みに自撮りが上手かった。
そして、階段を降りて戻る直前に謎のおじさんがひとこと。

「いくらくれる?」

あんたもかーい。現金がなくなってきてピンチだったので、本当に少額渡したところ、「ビンボー!!(原文ママ)」と笑われました。「学生だからお金ないの」と説明すると、「俺もビンボーなんだ!」と訴えられましたが、そのまま受け取ってくれました。モロッコでは「貧乏」という日本語が通じます。

そして、優しい謎のおじさんとお別れし、アブドゥルと合流して最後の目的地へ。ガイドはタンネリまでという話でしたが、友人がストールを編んでいるからその作業場を見せてあげるよ、と言うので、もう今更足掻いたところでぼったくられていることに変わりはない。そのままついて行くことに。

道中、別のぼったくりガイドに話しかけられ、「俺が案内してるんだ」とアブドゥルが追い払ってくれるというプチキュンイベントがありつつ、もはや自力では辿り着けない入り組んだ道の先にストール工場がありました。

モロッコミュニティを垣間見る

中に入ると、まさかの先程のぼったくりガイドがおり、アブドゥルと仲良さげに挨拶…いや、そこ友達なんかい。もはやここまでくると面白い。
これがモロッコのコミュニティなのか。単独行動ではなく、みんなで繋がって支え合って稼いでいるようです。

そして、小さな部屋に、ストールを編んでいるおじさん。

鶴の恩返しでしか見ないやつ。
素直にきれいだと感動できるストール

編みながら仕組みを教えてくれたり、糸が植物性なんだとライターで炙って見せてくれたり…モロッコ人ライターで炙りがち。
私も日本からストールを持参していたのですが、端っこの糸を切って炙られました。アクリルだから燃やすとネバネバになるでしょ〜って説明されたけど、あんま人の持ち物を勝手に炙らん方がいいよ。

そして、在庫をたくさん出して様々なストールの巻き方を教えてくれたのですが、繊維が植物性なだけあって、全くチクチクせず、普通に欲しくなって買っちゃいました。

これは、すごく欲しかったけど高くて買えなかった高級ストール

筆者は肌が弱いのですが、何を着ても首がチクチクしてしまう時期にも、ここで買ったストールを巻くと症状が治まっていたので、普通にいい買い物でした。

そして、最後に記念撮影。カメラマンはアブドゥルの友人。なお筆者はストールをターバン風に巻かれております。

ただのいい写真

この1日だけで色々お金を請求され過ぎた結果、現金が底をついて後々大変苦労するのですが、その話はまた次回。

結論、ぼったくりガイドについて行ったら、ただの観光では味わえない現地の生き様に触れることができました。ぼったくりと言ってもモロッコ価格のぼったくりなので、経験代だと考えれば全然払える。


次回はモロッコの首都、ラバト編です。それでは〜

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