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一番怖い人は

実は一見、普通に見える人が一番恐ろしいと思う。

もう15年以上前になるが、うどん屋さんでアルバイトをしていた時のこと。

初めての飲食店でのアルバイトだったのでビールサーバーの使い方が分からず、ビール3、泡7のジョッキを出したらお客さんに流石にそれはねーよ、と爆笑された。(当時はビールなんて口にしたことがなかったから泡もビールだと思っていた笑)

そのお店は11:00~23:30まで営業しておりビールサーバーの使い方に慣れてきた頃、夜のシフトに組み込まれた。そうそう、はじめはホールスタッフとしてアルバイト採用されたけれど、結局人手が足りずに最終的にはキッチンも兼用するようになった。飲食店で働くと分かるが、冷凍食品を揚げただけなんてこともザラなので外食する気が失せる。


その日は夏休みということもあってか昼から客足が途切れることなく慌ただしかった。まかないを頂いてほんの少し休憩を取ったら再びホールに立ち、初めての夜間シフトに突入。

23時を回った頃だろうか、ガラの悪そうな集団がぞろぞろと入店した。
一見して、そっち方面の気質じゃなさそうなお兄さん方。

お冷を出している間に

ビール!
ハイボール!

と注文してくる。
店員の状況なんて知ったこっちゃない。

でもヤクザ映画に出演しても違和感がない、いで立ちのお客様に粗相をしてはならい、決して粗相をしてはならないと笑顔で接客する。

しかし数分後、僕はやらかしてしまった。

ヤーさんたち(ヤクザと断定してすみません…)が注文したカレーうどんをテーブルに運ぶ際、足がもつれてバランスを崩す。
幸いテーブルの手前で器を落としたのでお客様に被害はなかったものの、お腹を空かせたヤーさんは激怒。

何しとんじゃ、こら

怒号が店内に響く。
平身低頭ですぐに床の清掃をしながら新しい料理を厨房にお願いする。
店長も駆け寄ってきて

まだ新米なもんで勘弁してやってください

と詫びを入れる。

新しい料理ができて恐る恐る配膳しながらも内心は早く帰ってくれないかなと思っていた。

ヤーさん一行の会計を終えヤレヤレと思っていると一人のサラリーマン風の男性が僕のところにやってきて

さっきはうちの若いのが騒いですみません。
また来るから、ひとつよろしくお願いします。

と言って僕の肩をぽんぽんと叩いた。
ふと後ろ姿に目をやると首筋のあたりに刺青のようなものが入っていた。


このエピソードから本当に怖い人というのは、普段からワーワー言うんじゃなくて一見して温厚そうに見える人が実は恐ろしいのだと思った。見えないところで想像を絶するようなシゴキをしていたりして…。

そう言えば、初対面での僕の第一印象は悪いと以前に書いたが、少しはましになったかな。

今日も皆様にとって良い一日になりますように。

ただリアルで会った時に優しい人だと言われるより怖い人だと言われた方が、あぁ僕のことをよく見ているんだなと腑に落ちる。

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