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鬱から始まる異世界ブラック企業狂想曲③

今回は、山形に配属されてから鬱の原因となった上司に出会うまでを書きたいと思う。

初めての山形
電車でトンネルを越えるとそこは雪国だった。
その年は記録的な大雪だったのだろうか?(記録としては積雪量約6.7m、北海道が約3.5mだった。)
歩道には私の身長より高い雪壁が立っていた
駅を降りて10㎞近くを歩いていく。
やっと、配属先についた。

最初の半年は強制的に寮生活
寮の人に中を案内された。
「ここが乾燥室です。」
ん?乾燥室の右奥の方に黒いモヤがかかってるように見える。
「何かあそこに黒いモヤがかかってるように見えるんですが。」と聞くとその人は口篭った。
暫し沈黙のあと
「1週間前にそこで首を吊って自殺した人がいました。」

うわー、マジかよーと思いながらその日は与えられた4人部屋で就寝
夜中一時半頃、ふと目が覚める。
トイレに行きたい。
しかし、例の乾燥室はトイレの隣である。黒いモヤが見えてる以上、そこには行きたくない。
暫く我慢したが、社会的な死を迎えるよりは良いとトイレに向かった。


....乾燥室のドアがほんの少し空いている。これは絶対に誘われてる。見てはいけない。おしっこちびりそう。
しかし、このまま見ないふりしてずっとモヤモヤしたくはない。確認せずにはいられない。
意を決して乾燥室に近づいた。
「ギシッ...ギシッ」何かがぶら下がってる音がする。
「あー、これ見ちゃいけないやつだ」と思いながら、隙間から乾燥室の中を覗いてみる。
暗闇の中に黒い人影があり、人が死んだ場所に明らかに人間がぶら下がってる。
その人影はゆらゆら揺れ...

てはいなくて上下に動いてる。
灯りをつけたら同じ日に配属された同期が、そこにぶら下がって深夜に懸垂をしていた。
乾燥室の熱気と洗濯物の湿気が充満している部屋で。
キチガイかこいつ。

その同期が毎日深夜にそこで懸垂をしているのが霊も嫌だったのだろう。日に日にその黒いモヤが薄くなって消えていった。

地方に配属されて最初の半年、仕えたのはとても良い上司だった。優しく温かく色んなことを教えてくれるし、各部署の現状をきちんと把握し上手く各部署や上司の上司をコントロールしており、その采配がとても勉強になった。

また、私が下についた先輩がとてもよかった。
ある日、要請があり現地に急行した。
そこには動かすと爆発する可能性が高い超危険な物があり、周囲の環境上、そこから動かさざるを得ない状況だった。
その人は部下に「車をあそこまで下げてきて?」とさりげなく退避させ、その間にその超危険な作業を1人で行った(同じ状況で私がそれをやれるか、と考えた時にはやらないと答えただろう。)。

まったくイケメンではなかったが部下のために体を張れる人で、私にとってはとてもカッコよかった。
その後、不幸にも交通事故に遭い九死に一生を得たが障害が残り昇任は望めなくなった。
今は階級も立場も逆転したが、今でもその人のことは尊敬している。

それから半年後に適性によって決められた専門に関する研修をさらに半年間受けにいく。
その後連接で9ヶ月、その専門の専門に関する研修を受ける。
まあ、最初の半年の研修は正直素人に毛が生えた程度の人が教えるので内容は本当に酷いものだった。まあ、中身は割愛する。

研修から帰ってきたら敬愛する上司が定期異動で転勤しており、新しい上司配置されていた。
正確には、会社内の別の部署からきた。
我々総合職は2〜3年ごとに異動するのだが、その人は16年ここの会社から異動していない。異動を希望しても他の会社から断られる人だった。

研修から帰ったその日、その上司に挨拶をした。
そのままその上司に「おい、タバコ行くぞ。」と誘われた。
私はタバコを吸わないので自販機で飲み物を買い、話を聞いていた。
上司は「チッ、お前煙草吸わねーのか。」と吐き捨てるように言った。
その上司は岡田信弥といった(以下、Oとする。現役で現在また山形にいる。)。
Oは言った。
「お前、何歳だ?」
「24歳です。」
Oは指折り数える。
「お前が俺の階級を越す時は、俺は定年迎えてるな。」

その人は高卒からの叩き上げで総合職に上がってきた人だった。

「お前が俺の階級を越す時は、俺は定年迎えてるな。」
その言葉の意味を知るのにあまり時間はかからなかった。


新入社員は全てが初めてであり何も知らないので、
上司からどんな無理難題を言われようが、毎日深夜まで残業しようが、いじめられてさえも
これが「普通」なんだと思ってしまう。
そして、段々その思い込んだ「普通」に耐えられなくなり
できて当然なんだと洗脳されていた「普通」ができなくなっていく。
するとその「普通」ができない自分が悪いのだ、能力がないのだと自分を責め、精神が壊れていく。

今回は、新入社員が生きるも死ぬも上司次第だということを世の中の管理職になる人には知っていて欲しい。ということを語りたかった。

最後まで読んでくれてありがとう。

※この話はフィクションです。
実在の人物や団体などとは関係ありません。
ということにしておいてください。

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