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向井俊介が上司から学んだ、お客様と向き合うための「マインドセットと行動」

「私の未達時代」では営業の第一線で活躍するトップセールスを訪ね、彼らの考える営業の極意を語っていただいている。今回は、約20年の営業経験を持ち、現在は法人営業のアドバイザーとして活躍する、向井俊介さんに取材。前半では、彼の新人時代にまで遡り、これまでの営業人生についてお伺いした

後半では、商談中に大事にしていることや、売れる営業になるために必要な具体的なノウハウについて紹介してもらった。ぜひ読者にとって、今日からの営業活動の参考になれば幸いだ。

初回の商談で、相手の「価値観」や「生き方」を探る

——商談プロセスで、特に注力している部分はどこでしょうか?

もちろんどのフェーズも注力していますが、特に重要視しているのが「初回の訪問」です。

お客様と真摯に向き合うためには、相手を知ることが重要。いかにお客様の情報を引き出し、信頼関係を築いていけるのかは、初回の時間にかかっています。

——具体的にはどんなことをしているのですか?

例えば、名刺交換をした後はそれを眺めながら「珍しい苗字ですね、ルーツはどこなんですか」と聞いています。すると、お客様が「新潟のさあ、めっちゃ外れた村なんですよ」って言って、答えてくれるんです。

そうしたら「え、その村に行くと何々さんがいっぱいいるんですか?」とか、「じゃあなぜこの会社にいるんですか?」とか、どんどん興味を持った相手の情報を聞いていきます。

——なるほど、そうやって相手のことを知っていくのですね。

そうですね。もちろん無理に質問を絞り出さなくてもよくて。ただ相手と向き合っているうちに興味が湧いたことについて聞いています。下心がないことが相手に伝わると、自然とフラットに接してくれるようになるんです。

他にも「勝手ながら、地方だと〇〇会社に行くと思ってたんですけど、この会社に入ったのは何か理由があったんですか?」と聞くと、相手の「価値観」や「生き方」が垣間見れますよ。

自分をいじり倒してもらうため、上司に同席してもらう

——初回面談で相手の「生き方」に迫るのは簡単なことではないと思います。

きっと向井さんが「目の前のお客様と向き合う」ことを大切にされているからこそ、相手への興味が自然と湧いて、質問できるのかなと。いつから向井さんはこのような考え方に至ったのでしょうか?

きっかけは、あるマネージャーの存在だったと思います。

その方は、売るテクニックも喋りもなく、商談で使う資料が秀でているわけでもなく、コンサルティング力が高いわけでもありませんでした。しかし、9年連続トップで売り上げており、周りからは「伝説の人」と言われていました。

ある時、そのマネージャーに営業のコツを聞きました。そうしたら「ただ目の前の人に向き合っているだけだよ」と。その頃から彼のような営業になりたく、お客様と真摯に向き合うことを一番に考えるようになりました。

——まずは、売れている営業の行動やマインドセットを真似をしようと。

そうですね。「守破離」の考え方で、まずマネージャーのアドバイスは、全て受け入れて守るようにしました。守っていく中で、だんだんとオリジナリティを出せそうなフェーズが見つかるので、次は他の上司のやり方を真似て、取り入れてみるのです。

それを繰り返しているうちに、自ずと、自分のスタイルが確立していきました。そうなると、上司を“商談のカード”の一つとして使う、ということができるようになりました。

——“商談のカード”とはどういうことでしょうか?

重要な提案の際に、上司に同席してもらうことはよくありますよね。しかし、本当はしっかりとお客様と向き合うことができていたら、その場面で上司に同席してもらう必要はないんです。

例えば、面白い目的としては、商談中にいじってもらうために上司に同席してもらっていました。当時、仕事が忙しく働きすぎていたので、ちょうど頭頂部がハゲてきていて(笑)。それを商談中に「こいつ最近ハゲ始めているんですよ」と、言ってもらうようにしていました。

結果、お客様からは「大丈夫なの?忙しすぎるんではないの?」と笑ってもらっていました。

——商談中に笑いが生まれることによって、場が和んだり、お客様と深い関係を築くきっかけになったりしそうですね。

おっしゃる通りです。

何か提案を受ける時は、もちろん相手も緊張しています。その相手の緊張を、少しでもほぐすことが大事です。

あとは相手が話しやすい場が作れると、私に依頼できないことを「せっかくだから」と上司に相談してくれることもある。上司には商談をクロージングするためではなく、お客様の安心感の観点から、同席してもらうようにしています。

誰一人同じメールを送らない。上司から学んだ「お客様との向き合い方」

——上司の意見を参考にしながら、自分なりのオリジナリティを出していったとお話されていました。向井さんが自分のスタイルを確立するまでに、参考にした方はどのような方だったのですか?

先ほどの話とはまた違う上司なのですが、尊敬している方がいました。その方はお世辞にも洗練された方ではなく、饒舌なわけでもなく、何かが秀でてる方ではなくて。しかし、結果は出し続けていました。

なぜかと聞いてみると、やはり「お客様との向き合い方」に鍵がありました。彼の場合は、特に既存のお客様に対するケアが丁寧で、お客様が何に困っているのか、何をしたいのか、それはいつなのかを細かく管理していましたね。

——全てのお客様の状態を細かく管理したあとは、何をしていたんでしょうか?

お客様一人ひとりにカスタマイズしたメールを送っていました。あとは、お客様の領域に合わせて、時には会社外のものも含めコンテンツを見繕うんです。

「前回お会いしたときに〇〇とおっしゃっていたので、興味があるかなと思いレポートをお送りします」とか、「近々このようなイベントあるのですが、▲▲さんのお仕事領域からすると関心があるかなと思い、ご案内します」など。

しかも彼は既存顧客や提案中の方々だけではなく、確度が決して高くない見込み顧客の方々に対しても同じことをしていました。完全にカスタマイズしたメールを何百人も送っていたんです。

——すごい。お客様に対しての徹底度合いが違いますね。

そうなんです。

例えば、2日間にわたりコンテンツが同時並行で走るような、大きなイベントがありますよね。その方は特に注力している企業のお客様一人ひとりに対してタイムテーブルを作るんですよ。それをメールで「あなたに向けたタイムテーブルを作ってみました。本当におすすめです」と送っていて。相当な努力ですよね。

——向井さんは、その方の行動をどのように真似してみたのでしょうか?

いきなりこれは難しいですが、まずは似たようなことから始めようと、一人ひとりのお客様に対してきちんとフォローアップをしていくことを徹底しました。

あとは、その上司の振る舞いを見て「コンテンツを送られる側」の気持ちを考えるようになりました。「一斉送信」という概念が、僕の中では一切なくなって。

現代ではお客様とコミュニケーションをする手段として、MA(マーケティングオートメーション)を活用したメルマガを使うという場面も増えました。もちろんそれらを利用すると効率的ではありますが、「お客さんにとってこのコミュニケーションで本当にいいんだっけ?」ということは、みなさんに考え続けてほしいですね。

ライター:フジカワハルカ

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