被殻出血後のADL予後予測は可能か!?
こんにちは。BRAINの針谷です。
先日、LINEオープンチャットにて『被殻出血後のADLの予後予測に関する論文はありますか』とご質問いただきました。
せっかくですので、noteでも論文を紹介します。
加えて、予後予測の研究に関する世界と日本の現状についても整理してお伝えします。
ちなみにLINEオープンチャットはこちら
脳卒中EBPプログラム第3期のご案内
本題に入る前にお知らせをさせてください。
2022年3月1日より、脳卒中EBPプログラムのエントリー受付が開始しております。
第3期は5コース編成になっており、EBPの基本や脳卒中リハビリテーションの基本を学べる構成です。
4月〜9月の6ヶ月、少々長い期間にはなりますが、6ヶ月後は自信を持ってEBPに臨んだり、脳卒中患者さんのリハビリに臨めるようになっているはずです!
よかったらホームページを覗いていただけますと嬉しいです。
被殻出血後のADL予後予測は可能か!?
最初に本記事のまとめです。
それでは、詳しく紹介します。
被殻出血後のADL予後予測をするためには被殻出血の患者さんだけを対象にした研究が必要
被殻出血後のADLについて予後予測をするためには、被殻出血患者さんだけを対象にして経過を追った研究が必要です。
あるいは、被殻出血だけでなく視床出血や脳梗塞後など様々な患者さんを対象にしつつも、データを解析するときは各病巣ごとに分け、病巣ごとの経過を報告する研究が必要です。
病巣ごとの予後予測は一般的ではない
しかし、そのような研究は圧倒的に少ないのが現状です。
世界的には、病巣に関係なく、初期の運動機能や認知機能、ADL自立度などの患者さんが表現する『運動・動作・行為』に基づいて予後予測するケースが一般的です。
例えば、発症3日以内の座位バランスから6ヶ月後の歩行自立を予測するとか、発症5日以内の上肢運動障害の程度から3ヶ月後の上肢運動パフォーマンスを予測する、というイメージです。
なので、一般的には病巣ごとに予後予測しようとするのではなく、運動障害やADL障害などの重症度から予後予測をしようとした方が良い文献がたくさん見つかります。
被殻出血後のADLの経過を報告した研究
さて、被殻出血後の患者さんだけを対象にして経過を報告した2件の研究を紹介します。
まず、これから紹介する研究で使用されているmRSについて紹介します。
modified Rankin Scale(mRS)
mRSは7段階で患者さんの状態を表す評価指標です。
ご覧の通り、0が良好な状態を、6に近づくほど状態が良くないことを示します。
予後予測の研究では、『発症直後はmRSで5レベルだったが、6ヶ月後は2レベルになった』のように使用されます。
Watanabe M (2020) は年齢や血腫の大きさごとのADL予後を報告
被殻出血の出血量や高齢者か若年者かに分けて、発症およそ1ヶ月から3ヶ月くらいまでのデータを報告した研究です。
例えば、
…のようなデータを教えてくれます。
脳出血は血腫の大きさや年齢が予後に関わってくるので、このように条件別の予後を報告してくれている研究は助かりますね!
Last (2015) は被殻出血後に外科的治療をした人のADL予後を報告
被殻出血後、外科的治療をした患者さんの退院時及び退院後平均1年程度のmodified Rankin Scale(mRS)の経過を報告した研究です。
研究開始時のmRSレベルは記載されていないのですが、外科的治療をするくらいなので、対象者のmRSは4〜5レベルだったのではないかと想像します。
退院時のmRSは
だったのですが、退院後1年では
…になっていたというデータです。
被殻出血後、外科的治療をする患者さんは、退院1年でもmRSで1レベル(症候はあっても明らかな障害はない)となる人は少なく、4レベル(中等度から重度の障害)〜5レベル(重度の障害)にとどまってしまうことが多いことを意味しています。
Watanabe M (2020) の文献も、Last (2015)の文献も参考になるので、ぜひご一読ください!
参考文献
Watanabe M, Takeda K, Maeshima S, Suzuki T, Sonoda S. Influence of hematoma volume and age on cognitive functions and ADL after putaminal hemorrhage. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2020 Sep;29(9):105063.
Last J, Perrech M, Denizci C, Dorn F, Kessler J, Seibl-Leven M, Reiner M, Ruge MI, Goldbrunner RH, Grau S. Long-term Functional Recovery and Quality of Life after Surgical Treatment of Putaminal Hemorrhages. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2015 May;24(5):925-9.
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