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甘さと人類(雑記6 産業革命〜現代)

甘さに対する人の認識や意味は時代の傾向に左右される。原始・狩猟採集時代の魅力的なものでありながらも首長が自分の寛大さを示すために人へ再分配しなければならなかった時代には欲望に対する踏み絵のようなものでもあったし、農耕が開始されるとヒエラルキーのトップ(貴族や富裕層など)にとっては薬的な意味を持っており万能薬であったり儀礼用に振る舞ったりするための権力としての象徴であったし、文明が発達し商業が盛んになり富の道具となり、砂糖の流通量が増えて産業革命により二次三次産業などが主流ると、労働者を働かせるツールになると共に、市民の娯楽へと変わっていった。
 
 人の体は文化を表すと言われている。アメリカの全ての地域という訳では無いが、昔は所有する土地のサイズと体格は関連していて、一次産業が主流だった時代には広大な土地を持つ者は太った大きな体格をしていた。体格の良さが富の象徴であったようである。広大な土地を持つ地主は労働者や奴隷を雇って働かせ、それらや作物その他を管理をすることを行っていたためであろう。時代は移り農業のような一次産業から二時三次産業の従事者が増えて都市化された地域では人が密集するために、スマートな体格の方が良いを言われるような現代に変わっていった。恐らくその傾向はアメリカに限定する必要は無いだろう。医療の発達と共に平均寿命は増加していき老後に年金などを受け取る社会が到来し、国が増え続ける社会保証の対策も兼ねて健康を促すために砂糖税というものも登場した。カロリー0糖質0の商品もよく目にするようになった。糖質を取る事にいつしか少しづつ罪悪感を気にする時代へと突入してきた。甘さとは人を魅了するものだけでなく罪悪感までも与えるようなものになってしまったようで、甘さというものはポジティブなイメージとネガティブなイメージの両方がしみついた不思議な時代に突入してしまったようだ。
 機械化すれば、ITを導入すれば人の労働量は減っていくと言ったのは誰であろうか。労働時間は減らず、むしろ増えていたりもするのでは無いだろうか。競争と比較の社会が到来して自由主義の元に自己責任論まで登場し、雇用者は砂糖を提供する必要もなく、非雇用者は疲れたら自己責任のもとに自分でエネルギーを求めお菓子や甘い飲料などを購入するようになった。本人自らが自分に体にムチを打っているかのようである。
 
 産業革命から現代への流れの途中をかなり端折ってしまったしまったので世の中の変化を少し思い出してみる。産業革命を経て社会を駆動するドライバーは金融と結びついた経済となり資本主義が主役に踊りでた。重商主義と成長への欲望は土地や自然、人などを商品化していった。良く言えば封建的だった環境から抜け出すことができて人は自由になり欲望にむき出しの時代となった。社会学者マックスウェーバーがいう鉄の檻という名の禁欲から市民は脱出したのだった。さらには教育の普及も進み自由主義は加速された。
 産業革命の結果生まれた経済自由主義は人々へバラ色の未来をもたらすように見え、多様で暴発寸前だった世界での全面戦争の抑止力となっていたが、これらの幻想もインフレなどの経済悪化により多くの国が不況を迎えることになる。不況になると分配や政府の介入による調整により社会のバランスを取ろうとする社会主義派も登場し人々の意見は割れていった。
 この頃になるとフランス革命により単一民族のイデオロギーの方が戦争に有利なことが知れ渡った影響で多くの国家が国民感情やイデオロギーを統一しようとするようになり、国家というものが形成されるとその国家内の多様性は軽視されて、また他の国との仲違いも発生してくる。無理やり引いた国境線の影響で民族紛争が起こり第一次世界大戦に発展していった。思想の分断と不況から軍国主義と自民族主義へ進んでいきファシズムなどが登場した。
第二次世界大戦の反省により、多くの国は経済自由主義と社会主義の複合主義が採用されるようになった。複合主義とは、社会主義を受け入れながら自由の再生を図り、忍耐強く社会の現実を受け入れ、また自由を維持する手段が自由を破壊することを認識するものである。
 19世紀には植民地を支配するためだったり他民族を理解するために文化人類学というジャンルの領域が成立した。欧米諸国以外からすれば割と自然に意識をしている当たり前の多様性の尊重などの概念は欧米諸国へも広がっていったように思う。
 
 この時代の甘さとは、、なんてまとめようが無いほどに社会は産業革命と共に激動に変化していったし、今まで多く文献が残っている欧米の情報を主に述べてきたが、実際には地域性によっても異なるし、実際こんな単一に意味を語れるものでは無いのだろう。それでも人は甘さを自由を楽しんでいただろうし、その一方で社会のいろいろなものに束縛される時代だったのであろう。

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