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記事随想-羽田・ディズニー直通構想

日本全国、いや、今や世界各国からの国際線もどんどん就航している羽田空港から、夢の国、東京ディズニーリゾートへ直通列車が行くだなんて、それこそ「夢のような話」です。

羽田空港直結鉄道構想とは

そもそもこの話ですが、羽田空港アクセス線というJR東日本が構想している路線に関係しています。この羽田空港アクセス線は、2000年の運輸政策審議会答申で取り上げられた「東京臨海高速鉄道臨海副都心線及び羽田アクセス新線」が源流となっています。

羽田空港への鉄道系交通アクセス手段は、長らく1964年開業の浜松町から出る東京モノレールが担ってきましたが、1998年に京急空港線が羽田空港駅まで延伸し、以来、モノレールと京急の2社がその覇を競い合ってきました。羽田アクセス新線については計画こそあれど、事業主体となるべきJR東日本が2002年に東京モノレールを買収したこともあって前進の気配は見えませんでした。また、アクセス新線のルートとしても、JRではない東京臨海高速鉄道りんかい線を通るため、建設時に営業主体をどうするのかという懸念もありました。

ところが、増大する羽田空港の旅客需要を裁くためには、もう1本の羽田空港アクセス鉄道が必要という声が高まり、一時は都営浅草線が東京駅地下に乗り入れるルートも検証されましたが、2014年頃からJR東日本も構想を発表するようになりました。残念ながら今年の東京オリンピックには間に合いませんが、このアクセス新線ができると東京駅や首都圏からの羽田空港アクセスが飛躍的に便利になることが予想され、期待が大きくなっています。

羽田アクセス新線のメインルートは東海道本線の貨物支線である大汐支線から東京貨物ターミナルを抜けて、ちょうど首都高湾岸線に沿うような形で羽田空港の直下を目指すものです。この大汐支線というのは、ちょうど田町付近から東海道新幹線の車庫へと向かう回送線に沿うような形で伸びる支線で、今は使われていませんが、土地だけは残っています。皮肉にも、このアクセス新線ができると将来が不安になってくる東京モノレールが浜松町を出発した直後に高架から望むとその姿がよくわかります。

この大汐支線を通って東京駅を経由するルートがメインの東山手ルートと呼ばれています。その他に、りんかい線を通って大崎・渋谷・新宿方面へと抜けるのが西山手ルートと呼ばれ、今回の記事である舞浜方面を目指すのが臨海ルートと呼ばれています。この臨海ルートですが、もともと東京貨物ターミナルの端にはりんかい線の車庫があり、そこから東京テレポート方面にトンネルが伸びていますので、その線路に繋げることでりんかい線の新木場へ、りんかい線は京葉線と線路が繋がっています(ただし、現在は運賃精算の影響もあって直通列車はなし)ので、京葉線へと乗り入れていくことが予想されています。

羽田アクセス新線の「妄想」ダイヤ

今回の東京新聞の記事によれば、羽田アクセス新線は東山手ルートとして東京駅を経由して茨城・栃木・群馬方面へ、西山手ルートは中央線方面、そして臨海ルートは舞浜方面に列車を走らせるとして、1時間当たり8本を運転する計画とあります。実際の開業は2029年以降ですので、まだ相当先の話ですが、開業後、8本の運転として、実際のダイヤはどうなるのでしょうか。鉄ちゃんはすぐにこういう構想を聞くとダイヤを妄想してしまうのですが、今回もそうしてみたいと思います。

まずは、今回のメインルートはあくまでも東京駅直通の東山手ルートですから、こちらは半分の4本が直通することを仮定します。現在、東海道本線はほとんど上野東京ラインとして宇都宮線、高崎線へと直通しており、一部品川折返しの常磐線がありますので、基本はこの3方向へ行くことが予想されます。ここでは、2本を常磐線土浦、各1本ずつを宇都宮線小金井と高崎線籠原へ向かわせるのではないかと勝手に予想します。ちょうど常磐線が品川折返しで乗り入れていますので、品川ではなく羽田空港へ乗り入れさせる算段です。

つづいて、西山手ルートは、東京新聞の記事では中央線への直結で山梨・長野方面を目指すとありますが、悩みどころです。そのまま湘南新宿ラインを通って宇都宮線や高崎線へ向かわせるのもいいでしょうし、埼京線に乗り入れて大宮・川越方面へと乗り入れさせるのも悪くなさそうです。1時間に2本程度が限度でしょうから、1本は埼京線、もう1本は中央線の八王子まで、さすがに山梨県方面は遠い気がしますが、大月くらいまでならあり得るでしょうか。特急あずさが新宿から羽田空港まで足を延ばしたら、それはそれで面白そうです。

最後に、今回の記事となった臨海ルートですが、こちらは京葉線へ乗り入れて舞浜方面へ2本が乗り入れることが予想されます。ただし、舞浜には折返しをさせる余裕がありませんので、そのまま京葉線を走らせて海浜幕張や蘇我まで走ると考えます。海浜幕張まで来れば、相当便利になると思います。一方、京葉線から先、内房線や外房線にまで乗り入れるかどうかは微妙な気がします。内房線の木更津方面は、現在は東京湾アクアライン経由の高速バスの独壇場ですから、そこまで乗り入れて行っても競争力がなさそうです。せいぜい蘇我くらいまでが関の山でしょうか。武蔵野線に乗り入れることも可能でしょうが、迂回路線なので、どこまで需要があるでしょうか。

乗り入れとなると心配事も

既に上野東京ラインや湘南新宿ラインでも同様の事態が起きていますが、たくさんの路線に乗り入れるということは、ひとたび、どこかで人身事故でも起きようものなら、ダイヤ調整が大変になります。羽田アクセス新線も常磐線、宇都宮線、高崎線、中央線、埼京線、そして京葉線と、多数の路線に乗り入れるとなると、ダイヤ乱れが発生した時は想像を絶する大変さになりそうですね。

いずれにしろ、2029年に羽田アクセス新線ができると、都心や首都圏方面の羽田空港アクセスが乗り換えなしにできるようになります。この時、1964年開業の東京モノレールは開業65周年。コンクリートで作られた構築物も老朽化が深刻化する時期です。ドル箱の羽田空港利用客が取られてしまった時、東京モノレールがどうなってしまうのかも、少し心配なところです。

(トップ写真は筆者撮影。2014年11月、羽田空港から舞浜方面を望む)

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