Shallマインドの存在 ⑴Must・Want+Shallの構造

目次
Mustマインドからの脱脚-前書き
前回記事
Mustマインドとは
⑷Mustマインドとモラルハザード

前回、「Mustがあってもなくても良くないのなら、どうしたらよいのか」という問で終えたが、今回はそれに答えていきたい。

本シリーズの最も核心の部分である。

結論から言うと、MustでもWantでもなく、「Shallに従う」ということになる。

勘の良い方は目次を読んだだけで
「ああ、MustでもWantでなくて自分の判断基準を持ちましょうってことね。はいはい」
と思われるとだろうが、まあそう結論を焦らずに読んでいただければと思う。

Shallマインドとは

これまで、人の行動の動機として「Must」と「Want」の2つがあるという整理をしてきたが、実際にはその間にShallがある(と私は考えている)。

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Shallとは、
①自分の価値基準に照らし合わせて
②WantもMustも踏まえたうえで
③あくまでも内発的動機として動くことである。

以下で要点を説明していく。

①自分の価値基準を持つ

これまで述べてきたように、Want偏重(渋谷のハロウィーン)も、Must偏重(品質改ざん)も、問題行動につながることがある。

うまくバランスを取ることができればよいが、この「バランスを取る」ということが難しい。

車の免許を持っている人はわかると思うが、教習所などで運転したてのころは、左右のバランスを取るのが難しく、フラフラしてなかなかまっすぐ、思ったように走れなかったと思う。

そのとき、「遠くを見て運転すると良い」と教わらなかっただろうか?

あるいは綱渡りなどでも、同じように遠くを見ることがコツのようだ。

「右と左の間に居続ける」のではなく、「遠くの目的地をまっすぐに目指す」ことで、結果的にバランスが取れ、安定する。

その遠くにある目指すものこそが、自分の価値基準(=Shall)である。

しかし、いきなり価値基準を持つ、ということはなかなか難しい。
だからこそ、時間をかけて、少しずつ更新していく必要がある。

昔から「芯がある」という言葉は人を誉めるときに使われてきた。
その「芯」こそが、「自分自身の価値基準」ということになる。

外面ばかりを気にするのではなく、また、合理的な頭脳ばかりを鍛えるのではなく、自分の内面にある「芯」を叩いて叩いて鍛えることが、Mustから脱却する鍵となる。

②WantもMustも、両方の声を聴く

自分の価値基準を持つとき、結局「やりたいことをやる」と「やるべきことをやる」のどちらに寄ればいいのか、という話になる。

しかし、「両方の声をしっかりと聴いて、バランスのよい点を見定める」ことこそが、自分の価値基準を持つということに他ならない。

それに正解はないし、正解がないからこそ、難しい。

Mustに従うのも、Wantに従うのも、ある意味では非常に簡単である。
簡単だからこそ、人は流されてしまう

そして、バブル以降、我々は自分の価値基準を持つことから逃げ、大半はMustに流されて思考を停止し、一部はWantに従い破滅を迎えた。

「Must=環境」と「Want=自分の気持ち」を見比べ、日々基準をアップデートしながら、より良い基準を目指していくことが、Shallマインドである。

③Shallは内発的動機である

MustとShallの決定的な違いは、Shallはあくまで内発的動機であるという点である。

例えば、あるルールを守らなければいけないときにも、「ルールだから」と捉えるのはMustマインドである

そこを、「このルールがある背景は何で、それを守らないとどうなるか」を理解し、納得したうえで、「守った方がよいな」と捉えるのがShallマインドである。

つまり、きっかけは外発的かもしれないが、それを内発的動機に置き換えていくというプロセスになる。

これには非常にパワーが必要だ。だが、そこから逃げてはいけない

自戒も含めてだが、テクノロジーの影響なのか、身の回りのコンテンツの影響なのか、我々は何かを少し変化させたり、ちょっとした取組みをするだけで、大きな利益を得ることができる、いわゆる「ウルトラC」があると思いがちだ。

しかし、そんなものないし、あったとしても簡単に手に入るものには価値なんてない。

正面のことから逃げずに向き合って、一つ一つ内発的動機に置き換えていく必要がある。

そして重要なのは、どうしても置き換えられないものは、無理して置き換えないことだ。そんなときは「やらない」。自分の価値基準に合わないことはやらない。

無理してやるから少しずつ自分を消耗していってしまうのである。

とは言え、現実を見たときには私たちの周りはやらないといけないことだらけである。

だからこそ、外発的なものもできるだけ内発的に捉える術を身に着けつつ、長期視点でやらなくてもよくなる方法を考えることが重要である。

結論を言うと・・・

ここまでの結論を、ものすごく乱暴にまとめると
「やるなら納得しろ。納得しないならやるな」
である。

ただ、このシリーズで言いたかったのは、この結論部分でも、方法論的部分でもなく、「なぜ我々はMustマインドになってしまったのか」を理解した上で、そうすべきかを考える、という点である。

次回以降、この「Shallマインド」という観点も踏まえて、改めてMustマインドについてと、そこからの脱却について考えていきたい。

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