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旅の途中

(アップしようと読み直している最中に寝落ちしていたので昨日書いたものです)


高三の夏に入った軽音部で、高二の冬に習い始めたギターを弾いていた。その生活も今日で終わりだ。と言っても、十月の文化祭で二曲、そして今日行われた卒業ライブで二曲演奏した(それと一曲歌った)だけなので、活動量としては「部活に入っていた」というレベルに達していないけど。



高校入学以前から「軽音部」という存在に対して漠然とした憧れを抱いていたのだけど、高校一、二年生は燃え尽き症候群のような状態で、何かに挑戦していく気力がなく軽音部にも入らなかった。本や映画、そして音楽を開拓していくことすら億劫で、かといって勉強に熱中するほど真面目でもなくて、遊び呆けるほど不真面目でもなくて、そんな文字通りの虚無とともに高校生活の三分の二を無駄にしてしまった。何をして過ごしていたのかと問われたら返答に窮するような、そもそも自分でも思い出せないような、味のしない毎日。


そうやって高校生活を惰性で消化してきた私を、三年生の夏に大切な友人が軽音部に誘ってくれた。そこから私の高校生活はようやく動き出した、のだと思う。初めて一緒にカラオケに行ったとき彼女が歌ってくれた曲を、文化祭で弾き語りデュオとして披露した。文化祭の後、たまたま部室に残っていた四人組で打ち上げに行って急速に仲が縮まった。その中の二人が恋人どうしになって、微笑ましく見守らせてもらえる立場もゲットした。春休みの合宿では深夜に部屋で馬鹿騒ぎしたり、件のカップルのイチャつきを盗撮したりした。そして今日、軽音部をきっかけに仲良くなれた友人たちとともに人生で初めてライブハウスのステージに立って卒業ライブ、これでもう、完全に高校生はおしまい。


制服の賞味期限が一年をきった頃に、今までの分を取り返すかのような密度と速度で展開していった高校生活。それは息苦しくて単調な私の人生にとって、あまりに眩い日々で、だからこそあっという間に過ぎてしまった。「登校したら会って話したい人がいる」という事実はこんなにも有難いことなのかと、初めて実感できた。楽しくて苦しくて幸せな瞬間、つまり世間の言う青春、その断片をたくさん分けてくれた友人たちには感謝してもしきれない。


今日演奏した曲のひとつ、フラワーカンパニーズの『深夜高速』には、生きててよかった、生きててよかった、と訴えかける歌詞がある(ちなみに私たちのバンド名はIkitete Yokatta☆になった。ネタみたいな実話)。本気で死にたいと思ったのは一度しかないけど、かといって生きててよかったと心から思ったこともない、中途半端な人生を送ってきた。全力を尽くすとか、何か・誰かに人生を捧げるほど熱中するとか、そういった、うまくいかなかった場合ズタズタに傷つく可能性のあることにはあまり手を出さずに生きてきた。だからローリスクローリターンの言葉通り、特大の幸福なんて得られないはずだった。
こんな私とそれでも奇跡的にめぐり合ってくれた人たちに対して、いつまでも受動的な姿勢をとり続けるわけにはいかないよな、と思う。幸福のきっかけをこんなに(量的にも質的にも)与えてもらっておいて、それを気楽に消費して終わるのは情けないよね。


友人たちに何をどうやって恩返しできるのかはまだ分からないけど、彼女たちが嫌でなければ、大学に進んでも社会人になってもたまにカラオケとかで集まって、生きててよかった、と熱唱したいし、その夢が現実になったとき、顔を合わせても恥ずかしくないような自分でいたいと思っている。人生に真剣に向き合うことなく18年も生きてきてしまったけど、全開の胸、全開の声、全開の素手で感じることだけが全てだとフラワーカンパニーズも言っていたことだし。


生きててよかった、生きててよかった、と打ち上げのカラオケでみんなで熱唱した今夜はたぶん実際に、生きててよかった、そんな夜だった。こんな私でも、しぶとく生き続けてきたからこそ今この瞬間ここに居られるんだ、と思ったら、たしかに生きててよかったのかもしれない、と。
『深夜高速』の歌詞をいっそ全部載せたいくらいだけど、特に最初の「青春ごっこを今も 続けながら旅の途中」というフレーズの意味をずっと考えている。高三の夏に始まった青春ごっこは、今日で一区切り、なのかもしれない。けどそれを完全な終わりにするのではなくて、形を変えながら持続させていくことだって、やろうと思えばできるはずだ。目的地はないし、ここへの帰り道も忘れていってしまうけれど、生きててよかった、そんな夜をずっと探してるし、青春ごっこを続けていきたいと思っている。寝て目が覚めて読んだら既に恥ずかしくなっていそうな長文を深夜テンションで生み出してしまったけれど、今月いっぱいは高校生なので許してください。


関わってくれた皆様へ
ありがとう、そしていつかリアル深夜高速(深夜に高速道路を疾走)しながら生きててよかったと熱唱しませんか? 伶ちゃんが運転してくれるらしい(?)です。とにかく、またお会いしましょう。大好きです。それから、ギターも歌も普通に納得いかない出来だったので精進します……






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