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人間の特権

※『ザ・クリエイター/創造者』のネタバレ含みます。個人的に大佐の描かれ方が良かった。

この映画の話しかないです。比べたりする程、映画観てない。

嘘をついたのはどちらか


「もしもAIが人類を絶滅させたり、支配するなら時間をかけて行うと思わん?人間には寿命があって時間に限りがあるけどAIにはそれがないじゃん。時間の制限がないなら気づかれないようにゆっくりと人類を減らす方法を取ると思う。面と向かって攻撃するよりその方がAI側は犠牲が少ないだろうし。賢いAIが核攻撃をしたって導入が納得いかなかったけど、人間側がAIにミスをなすりつけたならわかるわ〜。」
こんな主張を夫にした。特技の屁理屈攻撃。

「AI(劇中ではシュミュラント)が嘘をついているだけかもしれないじゃん。」
と笑って流された。どちらが真実だろう。

ハウエル大佐は母か仲間か女か

「ネアンデルタール人は絶滅し、それよりも意地悪な種(ホモ・サピエンス)が生き残った」
ハウエル大佐はジョシュアにそんな話をする。生き残るには「意地悪(悪意や嘘)が必要だ」そんな風に取れる。この印象的なセリフは大佐というキャラクターを表している。またこの作品のテーマの1つではないかと思った。いいキャラしてるよ、大佐。セリフから大佐という人物を紐解いていく。

大佐は非情な人物だが、「AIに騙されて死んだ息子」の話では涙を流し、ジョシュアには「奥さんを見つけられると良いけど」と言葉を投げかける。

このシーンのみだと大佐はマヤを恋しがるジョシュアに同情し、寄り添っているように見えるが、大佐はこの時点で既に「マヤがニルマータである」と把握していたことが途中で明かされる。その為、あのセリフの真の意味は「(我々の為にも)奥さんを見つけてね」である。
更に「マヤがもうずっと昏睡状態」であったことも大佐は知っていたことが終盤で分かる。あのセリフの最終的な意味は「(我々の為にも)奥さんを見つけてね(会えても意識はないから対話は出来ないと思うけど)」という意地悪である。きつぅ…。鬼畜か…。

そしてジョシュアの他にもう一人、大佐に動かされた人物がいる。
マクブライドだ。
大佐が涙を流した直後、意味深にマクブライドがカットインする。劇中何度か「軍とはいえ上下関係だけでここまで命を賭けられるか?」と思った。ここであのカットインが効いてくる。
恐らく、マクブライドは大佐の事が好きなのではないだろうか。好意でなくとも大佐への尊敬や仲間としての親しみを抱いている。好意を抱いている相手の涙程突き動かされるものはない。
さて、もし大佐がマクブライドのそれすらも気づいていたら?大佐の涙は本物だろうか?
これには答えがない。涙以前に「息子がAIに嘘をつかれて殺された」話すら怪しくなってくる。大佐の言動はどこまでが本物だろうか。息子の死因を別の誰かに偽られている可能性も考えられる。なんてったって人類は嘘をつくのだから。

余談(悪意と思惑)

二足歩行する爆弾が大佐(自爆指示を出す人間)に向かって「ご一緒出来て光栄でした」と言って敵陣に突っ込んでいくシーンに人間の悪意を感じた。
自爆ロボットを作った人間から兵士への皮肉が込められてる気がしてならなかった。戦地であんなこと言われたら病んじゃうって。軍の中にも反戦の人がいるんだろうか…とか想像した。

○ジョシュアを部隊に参加させる為に嘘の映像を見せる。
○AI側に捕まれば酷い目にあう、と言って部隊を鼓舞する(実際に捕まったドリューはシュミュラントの恋人もいて幸せそうだった)。
○降参したと見せかけて警察車両とロボット達を爆破する。
○大佐とマクブライドは警察(シュミュラント)に嘘をついて気を逸らす。その隙を突いて殺す。
○ジョシュアも嘘をついて車をジャックする。
○シュミュラントを助けるふり(治療を施し)をして、得たい情報を吐かせてから撃つ。

劇中、人間側がつく嘘は枚挙に暇がない。一方、AIは嘘を付くどころか人間(ニューアジアの人)への被害が及ばないような行動選択をする。そのように描かれている。
ディエンダン(マヤが眠っている土地の名前忘れた。これで当たってますか?)に大佐達が攻めてきた時もラマ僧のような格好をしたロボット達は話し合おうと友好的に船体に近づいていく。しかし人間達は容赦なく銃を放つ。そんなシーンが印象的だ。これが何(主に国や民族)に対してのネガティブキャンペーンかは置いておく。

冒頭の問いに戻る。どちらが嘘をついていると思いますか。


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