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月見 まる
2021年7月30日 08:26
「楽しい夢ばかりだったらいいのに」最後の王様がそう言いました。「君はどんな夢を見たんだい? 楽しい夢じゃなかったの?」「僕は夢の中を歪んだ風が通るんだ」「歪んだ風って? それが通ったらどうなるの?」「一瞬で変わっちゃう。大好きな人が遠くへ行っちゃったり、取り返しのつかない失敗をしちゃたり……」「そりゃ悪夢だね……」そうなんだ、と最後の王様がため息をついた瞬間、王様達
2021年7月28日 07:18
「わたしはまた夢を見なかった」と、暗い顔の王様が話し始めました。「そこはただの暗闇。まるで海の底に沈んでいるような夢だった。上も下も分かりやしない」「それはまだ夢を見てないんだよ」隣に座る王様が笑って言いました。「でも確かに寝ていたぞ? わたしは暗闇から目が覚めたんだから」「そりゃ夢の途中を歩いてたんだ」反対側に座る王様が言いました。「なんてつまらない」そう言っ
2021年7月26日 06:50
「僕の夢はこんな感じ」と、笑顔の王様が話し始めました。「僕は宇宙の真ん中にいてね。きらりキラリと輝く星たちの楽しそうな話を聞いていたんだ」「どんな話をしていたの?」「昨日の調子はどうだった? 明日晴れるといいね、とか。本当に些細なことを。そして小さな声で笑うんだ」そう言って天井を仰いだ王様達の目の前に、輝く宇宙が広がりました。その宇宙からシャラシャラと小さな鈴音のような笑い声
2021年7月21日 07:10
「僕の夢は美味しかったよ」と、少し太った王様が話し始めました。「目の前に広がるのはオレンジ色の海。ドーナツの浮き輪で飛び込んで、底に落ちてるキャラメルを取りに行くんだ。食べても飲んでも無くならない。本当に夢の国のようだったよ」「それ以上食べたらまたお腹が出てくるぞ」そんな言葉も気にせずポヨンと頬を抱る王様が舌なめずりをすると、みんなも口の中に夢の様な甘い世界が広がりました。つづ
2021年7月19日 06:47
「私の夢はね…」と、ある王様が小声で話し始めました。「初めはとても静かだったの。でもね、段々と光が近づいてきてね、それはピョンピョンとラインを飛び跳ね音符になっていったんだ。色んな音が交差してメロディになっていって私の声に寄り添ってくれた」「思わず歌っちゃったんでしょ?」小声の王様がフフフと笑うと、みんなにも素敵な音楽の夢が聞こえてきました。つづく
2021年7月16日 07:01
「私はこんな夢を見ましたよ」と、違う王様が話しました。「私は地面に寝転んでていてね。土の匂い、そこから生える草木の青々とした香り。穂を付け開いた花からは甘い蜜の匂いがただよってきてね。まるで虫にでもなった気分だったよ」「とてもいいね」「ずっと忘れてた、子供の頃の時間を思い出す懐かしい匂いのする夢だった」そう言って目を閉じ思いを馳せると、みんなも花畑の中にいるような自然の夢の香り
2021年7月14日 06:22
ある王様が「こんな夢を見たんだよ」と話しはじめました。「いろんな丸が輝いていてね。それは次第に三角、四角って……様々な色に変わっていくんだよ。まるで星が踊ってるみたいだった」残りの7人の王様達は笑顔になりました。「とても楽しくて面白いカラフルな夢だったよ」王様が想像するとみんなの目の前にもその夢が見えました。つづく
2021年7月12日 07:55
大きな円卓を囲み、王様達の話題が尽きることはありません。何でかって?そこには世界中から集められたありとあらゆる「夢」の話があったからです。王様達はそんな夢の話を記した本を読みなながら、最近見た自分の夢の話を始めました。人は毎日夢を見ます。決して減る事はありませんでした。つづく
2021年7月9日 07:14
神は時々友人達を食事へと招きました。招かれたのは8人の王様たち。彼らは自分達の見る夢を楽しく話しながら「神」がやってくるのを待っていました。そう、神は友人を招きはするが姿を見せた事はなかったのです。必ず1人の王がこう言って食事会は始まるのです。「神は忙しくてね。私達だけで始めよう」つづく
2021年7月7日 06:48
やがて神の吐いため息が世界を取り巻く風を作り、笑って流した涙が海を作りました。ひび割れたたまごの穴には神の言葉が吹き込まれ、静かな時間を刻み始めました。13日の時が過ぎ、太陽と月が生まれ、私達の住む「夢」の世界が生まれたのです。つづく
2021年7月5日 06:41
宇宙の底に落ちてヒビの入ったたまごを拾い上げ、神は息を止めました。「これは誰も予想をしていない結果となった」神はリンゴをひとかじりし、ヒビの入ったたまごを覗き込みました。「何もない……が、光があったか」そう言って神は笑いました。宇宙に広がる神の笑い声はどこまでも広がっていきます。誰もいない食卓で神はいつまでも笑っていましたが、それはやがて小さなため息に変わりました。つ
2021年7月2日 06:50
昔むかしの話。神の朝食は宇宙の真ん中でいつも1人です。星の瞬きはとても静かでとても綺麗。しかし、それはとっても退屈なものでした。神は食卓にある卵に手を伸ばしこう呟きました。「なま卵なら新しい世界を。ゆで卵なら新しい命を作ってみよう」神の手から離れた卵は宇宙の中をゆっくりまわる……それはまるで生まれたての淡い月の様にも見えました。(つづく)