内面着陸

手の届くものになってしまった
君の横顔を重ねることも
手をかざして消してしまうことも
出来なくなってしまった
ピントを合してシャッターを切るのは
君を時を宙に浮かせたいだけなのに

あの星には君がいるけど
おいしそうには見えないかな
目指すのはあのぼんやりとした月
雲をまとったあの柔らかな光のことで
見つめる先の黒い瞳にあの月が
1回転した自分がいる

鏡の前のあの人は今も
時計ばかりを見つめている
大丈夫だ、きっと全部写るさ、いずれ
今朝割った卵の黄身を目指そうよ
自由に料理できるから

離陸も着陸もいつも同時で
舞台はいつものクレーター公園
君とふたりで流行の曲でムーンダンス
金色の草原で読書と昼寝

手の届くものになってしまったけど
横顔の君が振り向いてくれるし
君が食べてしまうこともできる
シャッター音と同時に気が付く
君が着陸してきたんだね