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部活動の可能性を引き出す中学受験

 夏期講習の合間の休日に、知り合いが出場していたので、東京都中学校サッカー選手権大会の決勝を観戦に行きました。修徳中学校VS多摩大学目黒中学校の一戦です。

 試合は、2-0で修徳中学校の勝ちでした。内容は素晴らしく、両チームともレベルの高いサッカーをしていました。特に、修徳中の前線の何人かの選手は、「才能」という言葉だけでは説明がつかないフィジカルで、ディティールまで努力していることがうかがえました。それは、もう中学校の部活動というレベルではないと感じました。

 サッカーのU-15世代は、一般的にはクラブチームの方に優秀な選手が流れ、基本的にはクラブチームの方が上位にいきます。たとえば、Tリーグなどを見れば、修徳中も多摩大学目黒中も、現在はT2に所属しています。

その上にはT1があり、さらに上には関東リーグがあることも考えると、中学校の部活動のレベルの方が、クラブチームよりも下位にあることは否定できません。

 だだ、そうだからといって修徳中や多摩大学目黒中のサッカーのレベルが低いという話にはならなりません。この2校が、しっかりと育成に力を入れていることは、U-18年代の結果を見るとわかります。U-18になると、どこの高校もU-15のクラブチームから良い選手を集めて強化に努めています。しかし、修徳や多摩大学目黒は、U-18年代でも中学校から育てている選手が活躍している印象です。もちろん、高校から入学した選手も活躍しています。中学校の段階で良い選手を獲得している可能性もあるので、単純に「育成している」と表現できないかもしれません。ただ、そこに結果があるのであれば価値を否定できないもので、そこには何か価値があるのだと考えるべきでしょう。それは、学校の取り組みを高く評価するべきではないでしょうか。

 それとは別の視点で、決勝戦以外の結果からも私立中学校の価値が見えてきます。

76回大会は、都大会出場53チーム中、私立中学校が25校を占めています。その中からベスト8に進出した中学校は、全て私立中学校です。興味深いのは、その中に明治大学付属明治中学校攻玉社中学校暁星中学校駒場東邦中学校という、中学受験でも難関校になってくる学校があることです。

※攻玉社中学校については、以前も記事を書いたので参考までに。

 ベスト16まで広げれば、学習院中等科開成中学校慶應義塾中等部武蔵中学校本郷中学校の名前が確認できます。他にも、中学受験の難関校の名前を多く確認できます。その名前を並べた一覧を作り、中学受験家庭に「これは何の集まりですか?」と質問しても、「中学校サッカーの都大会での上位校」という答えは、ほとんど返ってこないのではないでしょうか。

 個人的な考えではありますが、「サッカーは好きだけど、プロサッカー選手は目指さない」という子は、私立中学校でサッカーをした方が良いです。
 その一番の理由は、高校受験で競技を中断しなくていいからです。競技のゴール地点を高校サッカーに置くのであれば、高校受験での中断があるよりも、継続してチーム強化が進んでいる方が好ましいです。そのグループの中で仲間と長い時間をかけてチーム作りをすることは、将来で役立つ経験になることでしょう。
 二番目の理由は、施設・環境の充実度です。公立中学校では考えられないような施設が充実している学校が多いです。クラブチームだと転々としてしまう練習環境が、充実度の高い形で固定されていることは魅力です。施設が固定されないと、遅い時間に練習をしなければならないこともあり、勉強との両立が難しくなります。

 人生をサッカーに賭けるのであれば、気にならないマイナス面かもしれませんが、そうではないのであれば、私立中学校の部活動の方が勝っている部分は多いと思います。

 以前にも記事に書きましたが、もし部活動を競技の結果ではなく豊かな人生経験を積ませるためと考えるのであれば、やはり私立中学校の方が環境が良いはずです。それは、都大会決勝戦を観戦して、確信に近いものを感じました。
 どんなカテゴリーでも、「勝利を目指す」という経験は重要なものだと考えています。その意味で、クラブチームと部活動が分けられているU-15の活動は、多くの子に良い経験をさせてあげられる素晴らしい環境だと思います。プロを目指す子は、そのための環境とリスペクトを得るべきですが、プロを目指さない子にもサッカーから学ぶ権利はあります。多感な時期に良い経験ができる環境があることは重要です。その点、私立中学校には様々な形で経験を積める可能性があると考えています。

 また、競技とは別に、多摩大学目黒中の子達には感心をしました。それは、試合中、ずっとチャントを歌い続けていた登録外の生徒たちにです。暑い中で試合を走り続けるのは、とても大変なことですが、その時間にずっとチャントを歌い続けることも大変なことです。自分がピッチに立たずとも、チームの一員としてチャントを歌い続ける姿勢には感心しました。
 それを良い思い出に変えられる子と変えられない子に別れるとは思いますが、そういう子達の姿は評価されるべきではないでしょうか。そんな姿から、多摩大学目黒中のサッカー部には、しっかりとした教育力があり、それはもっと評価されて良いのではないかと感じた次第です。

 そういう中学受験は、そういう中学受験としての評価を受けるべきでしょう。必ずしも、偏差値の高低が中学受験の評価基準にはならないというのは、多摩大学目黒中の子達の姿に表現されていると考えています。
 私たちの教室では、そういう風に中学受験に多様な可能性を求めています。だからこそ、今の中学受験のカリキュラムの早さに合わせなくとも、しっかりと可能性を広げられる中学受験の指導も大切にしたいと考えております。
 そういったスタンスの学習塾でもよろしければ、ぜひ一度学習相談にお越しください。


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