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振られた男⑲ 43日目:散歩
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43日目 散歩
ここ最近、仕事の繁忙、飲食の乱れ。
そして深酒による睡眠不足。その結果お腹が少しポッコリしてしまった。
まだ20代・・・ポッコリお腹はあまりよろしくない。
デートの予定もあるし、少しでも痩せないと。
思い立ったが吉日だ。
仕事の後ご飯も食べずにすぐに着替える。
高校生の時はぶかぶかだったウインドブレーカーはパンパンになっている。
ランニングシューズを履き、マスクもつける。
マスクをすることで心肺に負荷を掛けることができる。ダイエットには必要不可欠な代物だ。
マンションの前で少し準備体操をする。
10代の頃の感覚で体を動かすと次の日に響く。
特にもも裏、アキレス腱をしっかりしないと明日が有給休暇になってしまう可能性も出てくる。
じんわり汗が出てきたところで体操が終え、イヤホンをつける。
しっかり準備体操したとはいえ、いきなりがっつり走ると、絶対に一日坊主になってしまうので、今日は早く長く歩くことにする。
思い返すと最近は酒酒酒、、、
外に出るのは、たまにのスーパーの買い物と家と駅の往復しかしていなかった。
そりゃ太るわ!!
と一人でツッコんでみる。
今日は駅とは逆側にある公園を目指すことにした。
確かちょうど往復3kmくらいだったはずだ。
公園に向かう途中で、金木犀のいい香りがした。
夜の金木犀が大好きだった彼女を思い出した。
確か去年の今頃もそれ目当てで夜に歩いたなと思い出した。
匂いは昔を思い出す。
そしてその思い出は必ず美化されているからとても卑怯だ。
「私と別れたら金木犀の匂いを嗅ぐ度に私のこと思い出すから大変だね。」
そう話した過去がまさか現実になるとは1年前の僕は思ってもいなかっただろう。
次の彼女を作る為にダイエットをしたらまさか彼女のことを思い出すとは、、、笑うしかない。
公園にだんだんと近づく。この公園ではバドミントンをしたなと思い出す。
文化系だったため運動神経はそこまでよくない彼女だったが、バドミントンだけはやたらと上手かった。
結局勝ったことがなくいつも終わった後のビールをおごっていたな。
この街には思い出がありすぎる。
引っ越した方がいいのではないか?
ここにいる限り彼女の呪縛から離れられないのではないか?
自分の意志の弱さ、軟弱さがとても情けなくなる。
誰もいない小さい公園のベンチに座る。
音楽が妙にうざったい。
イヤホンを外してぼーーっと夜空を見上げる。
もちろん、東京の夜空には星の1つも見えない。
でも、そんな街でも体全体で金木犀を感じることができる。
体が少し冷えてきた。
イヤホンをつけてゆっくりと立ち上がった。
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