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機械翻訳は翻訳者の働きかたをどう変えるのか?

機械翻訳が進化すれば、翻訳者は要らないと思うかもしれない。しかし翻訳業界は、今後人手不足になる。

なぜ翻訳者が足りなくなるのか?

世界中で、ウェブコンテンツや動画コンテンツなどが日々アップされる。それにともない、翻訳対象のコンテンツは増える。その結果、翻訳市場のボリュームも増大する。

機械翻訳が進化すれば、翻訳者は要らなくなるだろう。そう思う若い世代は、将来の職業として翻訳業を選択しない傾向にある。また、現役翻訳者の平均年齢は50歳前後といわれており、今後の高齢化は避けられない。

つまり、翻訳対象のコンテンツは増えるが、翻訳者を目指す人は減り、現役翻訳者は高齢化する。これにより、翻訳者が足りなくなるのだ。


機械翻訳のレベルはどれくらいか?

機械翻訳を使ったことがあるだろうか。機械翻訳は日々進化しているが、現状ではまだ完ぺきではない。使った経験のある人は、多少の違和感を覚えたことがあるだろう。

Google翻訳などのニューラル機械翻訳により、機械翻訳のレベルは上がった。さらに、DeepL翻訳の登場により、機械翻訳はさらに注目を浴びている。しかし、現状の機械翻訳がアウトプットするのは、内容がざっくり分かるレベルの文章だ。つまり、翻訳された文章の意味や前後関係を人間が意識的にまたは無意識に補えば、理解できる。

文書の種類や求める質によっては、機械翻訳で十分足りる場合もあるだろう。企業からすると、重要度の低い文書は、翻訳者より機械翻訳を使ったほうがいい。そのほうが、コスト削減になるからだ。

しかし、重要文書・機密文書・法的文書などは機械翻訳だけでは不十分である。機械翻訳は進化しているが、現時点では翻訳者レベルには達していない。それゆえに、翻訳者はまだ必要とされる。


機械翻訳と連携する働きかたへ

では、機械翻訳と翻訳者はライバルなのか。いや、そうではない。翻訳者は機械翻訳と競い合うのではなく、手を組み共存する、そんな時代になっていく。

これまでのように、翻訳者が自分の手ですべてを翻訳するのではない。機械が得意なことは機械に任せ、人間が得意なことは人間がする。これからの翻訳者は、機械翻訳と連携する働きかたが必要になる。

具体的には、機械翻訳で翻訳した文章を人間が修正する“ポストエディット”という作業がある。このポストエディットを誰がするのか。英語が多少分かる人か、英語を専門に勉強した人か、それとも翻訳者か。それにより、できあがる翻訳文の品質に大きな差が生じる。

たとえば、機械翻訳を使ってある技術文書を翻訳したとする。その翻訳文のチェックを誰に依頼するか。翻訳文の品質は最終チェックによって決まるので、その技術分野を専門とする翻訳者が適任だ。その技術分野の単語、表現、内容を把握しているのは、その分野を専門とする翻訳者だからだ。


生き残るカギは“言語+ α”

機械翻訳がするのは、言語の置き換え。しかし翻訳の仕事は、言語の置き換えではない。これからの翻訳者に必要なのは言語スキルだけではなく、言語以外の知識“α”である。それは、分野を問わずどの翻訳にもいえること。

その“α”は専門知識かもしれない。原文の書き換えを提案する提案力かもしれない。精度の高いチェックスキルかもしれない。言語以外の知識“α”を提供するという柔軟性は、機械翻訳よりも人間のほうが得意なはずだ。


まとめ

機械翻訳が向上し続けるのは間違いない。その状況で翻訳者に求められるのは、より高品質な翻訳をより短期間で提供することである。そのために翻訳者は、機械翻訳と競い合うのではなく共存することだ。

言語スキル以外に、自分はどんな“α”をクライアントに提供できるのか。それをきちんと把握する。それこそが、翻訳者として生き残れるかどうかのカギとなる。今後も翻訳者として活躍するために、自分の“α”を見つけ、それを伸ばすように努めることが大切である。

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