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住宅街のホームセンター

 住宅街にある店は、入口の門の前の道が小学校の通学路になっている。そのため出勤時は通行止めになるので、特別の通行許可証をもらう必要があった。前任者はそれを怠り、警官の虫の居所が悪いとキップを切られる虞があった。
 実際、よく警官が来ており、配達業者の車が注意を受けていた。ただキップを切られた者は誰もいないようだが。
 赴任して最初にしなければならないことが、それであった。各従業員の車検証と免許証のコピーを警察署に持参して、申請した。結構な数である。
 この店は周りを住宅街、マンションに覆われていたためか、風が無茶苦茶強かった。夜中、社旗が揺れる音がするのが五月蠅いと苦情をもらったこともある。園芸のミストシャワーの実演器を使ってみたら、ミストになった水が民家に降り注いだので、慌てて取りやめた。
 園芸に置いていたパーゴラが、ある日、吹っ飛んで木端微塵になったこともある。最初、ラドンが飛んできたかと思った。実際園芸の所に行くと風の強い日は息も出来かねるほどである。
 この店は小学校が近くにあるため、運動会は要注意だった。運動会を見にいこうとする父兄が、勝手に車を駐車場に停めていくのである。おかげで、お客様の車を停める場所がなくて困ったことがある。そのため翌年からは、ギリギリまで門を開けずに対処し、小学校にも駐車をしないでもらうよう父兄にお願いしてくれるように頼んだ。それが奏功し、その年からは何とか凌ぐことはできたが、車を停めさせて欲しいとお願いをしに来る父兄は何人かいた。
 駐車場問題は小学校だけではなかった。近くに日蓮宗のお寺があり、法事とかがあると、これまた店の駐車場に車をどんどん停めていくのである。最初は何事かと思ったが、店のすぐ近くに住む常連のおばあちゃんが、事情を教えてくれた。たびたび起こるので、何度目かに、直接お願い(文句)しにいった。すると相手は恐縮して、以降は停めないように門徒❔檀家❓信者?
の人たちに伝えるとのことであった。おかげで無くなりはしなかったが、極端に減ってはくれた。
 住宅街に店があると、クレームなどが発生して、お客様の所へ行くのは徒歩である。これが田舎の店となると、どこそこの隣といっても随分と向こうだったりすることがあるので、車で出動するのが当たり前だが、住宅街だと店から大体近い所に住んでいる人が多いし、車を停める場所もない。まさにところ変わればといった感じである。
 この店も思い出深い事件がいくつかあったが、既に書いていることもあるし、書かずにいることもある。何といっても従業員が店で亡くなったことが、忘れえぬ大事件であった。このあと僕は山口県へ異動になる。
 

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