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初デート(ショートショート)

 以前より恋しく思っていた女の子に、思い切ってデートに誘った。返事はYES。天にも昇る気持ちだった。そういうわけで、明日は遊園地でデートなのだ。
 興奮して眠れない。何とか眠るために、俺はウイスキーのバーボンを飲んだ。いつものオンザロックだ。興奮している時は、いくら飲んでも酔えない。悪酔いするばかりだ。明日寝不足で彼女との折角のデートを台無しにしては以ての外だ。
 でもグイグイ、バーボンを飲んでいく俺が悲しい。
 次の朝、約束の時間に遅れることもなく、俺は目が覚め、彼女と待ち合わせ場所で落ちあった。
 少し、酒臭くもあったが、ガムで胡麻化した。
 まずはやっぱりアベックは観覧車だろう。ウキウキしながら2人は観覧車に乗った。思いのほか風が強い日で、観覧車は揺れ、俺は思わず、昨日の酒を戻しそうになったが、必死になってこらえた。
「顔色が悪いけど、大丈夫?」
 彼女が優しく訊ねてくれたが、口を押え頷くことしかできなかった。まさかここでゲロするわけにはいかない。一生の恥になる。
 何とか観覧車をクリアすると、とりあえず、喫茶でお茶を飲むことにした。俺は何といってもポカリである。この状態を救うのはポカリスエットしかない。
 何とか持ち直した俺は、次は何に乗るか彼女に訊いた。
「ジェットコースターに乗りたい」
 難関である。揺られながらゲロしないように我慢できるか、ここが男の正念場であった。
 2人はジェットコースターに乗った。ゆっくりジェットコースターは昇っていく。そしていきなり、シューと音を立てて、ガタガタいわせながら、急 勾配を降っていく。その繰り返しである。俺は必死の形相で吐き気を我慢した。そしたら突然、腹の方が痛み出した。いかん、肛門が緩んでくる。上から下からピンチの連続であった。
 それでも無事ジェットコースターを俺はクリアした。そして「ごめん。トイレ」といって、彼女を残し、急いでトイレに向かった。
 上から下から、俺は出しまくった。これ以上出ないくらいまで振り絞った。だが次の瞬間不幸が待っていた。神に見放された。紙がないのである。
 俺は一旦そのままズボンがうんこで汚れないように、ボタンはつけずに、上まで手で持って行くと、ドアを少し開け、回りに誰もいないのを確認し、隣の個室に向かった。だが、あわてたせいで、思いっきり転んでしまった。
 尻丸出しで転倒した。あわてて俺は隣の個室に向かった。ところが何ということか。この遊園地の管理状態はどうなっているのか。隣の個室にも紙がないではないか。
 こんな不幸があっていいのだろうか。俺は元の個室に戻り、自分のパンツで尻を拭いて、パンツはそのままトイレに捨てて、出てきた。これしか方法はないではないか。
「ごめん、ずいぶん待たせたね」
 俺はそういうと、「次は何にする」と聞いた。瞬間、彼女は驚いた表情で、「キャー」といい、逃げてしまった。何がどうしたというのだ。俺がポカンとしていると、警備員が2人やってきて、両方から俺の腕を掴み、事務所まで連れていかれた。
「な、何事ですか」
 俺が叫ぶと、警備員が俺の股間を指さした。ズボンのファスナーを閉め忘れ、イチモツがしっかりのぞいていた。

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