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コンビニエンスストア(ショートショート)
男はホームレスだった。いつも公園のベンチで寝泊まりを繰り返して3か月にはなる。この日、日雇いで稼ぎがあった。久しぶりにまともなものを食おうと、コンビニに向かった。
店内に入ると50代の男性店員が一人いた。時間的にも深夜近く、お客さんは誰もいなかった。
せっかくきたのだから、とりあえず男はトイレを借りることにした。公園のいつも使っているトイレは汚くて、あまり好きではなかった。
トイレのドアを閉め鍵をかけると、男はズボンを下ろしだした。大だった。男はきばり、何とか排出物を出すことを達成した。碌なものを食っていないので貧相なうんこであった。
その瞬間!
まさに男が排出物を出したその瞬間、強烈な音と振動が起こった。
グァアアン!
すさまじい音と振動に一瞬お尻を拭くことを忘れかけたが、ホームレスであっても、育ちはちゃんとしていたのか、シャワートイレのボタンを押して、お尻を洗おうとした。
が、水がでない。壊れているようだった。久しぶりにシャワートイレの快感を味わえると思った男は多少ガッカリしたが、すぐに思い直し、備え付けのトイレットペーパーを使って尻を拭いた。そしてレバーを引き、うんこは流れていったが、補充の水が入ってくる音がしなかった。水道管と電気がさきほどのものすごい音で分断されたようだった。
男はズボンをはき、トイレのドアを開錠し、外に出ようと、ノブを回し、ドアを押してみたが、今度はドアが動かない。
さては地震で何かがドアを押さえているのではないか。男はそう推理し、思い切って全身を使ってドアを開けようと試みた。
なんとかドアは男が外に出られる程度には開いてくれたので、その隙間から外へ出た。
果たして壊れた壁がトイレのドアに横たわっているのがわかった。すごい地震だったのだろう、コンビニの店内はきっとグチャグチャだろうな、と思って店内に戻ってみると、なんと外壁のガラスは全部砕け、店内側に破片が飛び散っていた。
冷蔵庫に入っている瓶や缶はかろうじて無事だったようだが、陳列棚にあった商品はほぼ全部床にぶちまかれていた。
店員は何処にいるのだろう、と思って、入口レジ付近にいってみると、自動ドアそばで、真っ黒に焼けた死体が一体転がっていた。もはや誰かなんぞは判別はつかないが、ここの店員に違いない。
男は後ずさりをした。地震ではなかったのか。これはいったいどういうことなのだ。
コンビニの外に出てみた。各所に火の粉が上がっていた。建造物は木造のものは全て崩れはてていた。
地震ではなかった。これはいったい何が起こったのか。男はコンビニに戻り、電話機から110番を掛けてみたが、電話線も切れているようで、無言であった。
コンビニの事務所に入り、TVがあったので、つけてみたが、こちらも反応がなかった。ラジオを探した。電池式のラジオならなにか、聞こえるかもしれない。事務所の机の上にスマホを見つけた。ああ、これなら何かわかるかもしれない、と思い、開いてみた。家族の画像であろうか、可愛い娘さんが壁紙で、でてきた。
グーグルを開いてみた。ところが、インターネットに接続されていません、と出てくるだけであった。
どうなってしまったのだろうか。どこかの国からミサイル攻撃でも受けたのであろうか。どの程度被害は広がっているのだろうか。情報がほしい。
ラジオは売場にあった。防災用の小さなラジオで、男は、売り物の電池を入れて、スイッチを入れた。ガーガーいうだけで、電波を拾うことはなかった。
これはひょっとすると、自分以外は全て全滅してしまったのかもしれない。
男は悲嘆にくれ、その場にしゃがみこんだ。しゃがみこんだところに、おにぎりが転がっていた。
その瞬間、男は気づいた。豊富な食べ物と飲み水がある自分の家ができたことを。
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