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タイムスリップ

  小学校の頃の遊び場は近所の神社だった。社殿は奥にあり、社務所の前に子供たちが遊ぶには丁度いい広場がある。高学年になって、サッカーとか野球とかするにはせますぎるが、そうでなければ十分な広さだった。ボール遊びも軟式テニスボールを使って素手で遊んでいた。
 自転車を初めて買って乗れるように練習するのもここだった。
  夏休みのラジオ体操もここで行われた。ラジオ体操が終わると、家には帰らず、そのまま神社で蝉取り等をして遊んだ。
 秋になると、神社のお祭りがあり、夜店がいっぱい並んだ。神楽も行われた。
 大人になり、この場所とは離れた土地に住み、半世紀近く経った。今あの神社はどうなっているのだろう、ふと気になって、グーグルマップで探してみた。行くには到底遠い場所だから。それはすぐみつかり、上からの画像しか見れなかったが、あの頃と変わらぬ風景がそこにはあった。果たして今も子供たちが遊んでいるのだろうか?地図ではわからないけれど、続いていてほしいな、と思った。
 今住んでいる土地にも神社はある。もっともここは昔遊んだ神社よりも格段に広場は狭い。社務所近くの広場で遊ぶのは危険なのだろう。遊んでいる子はいない。神社の石段を下りたところに広い公園があって、幼児用と高学年用で区切ってある。みんなそこで遊んでいる。僕らの頃とは違って小学生低学年でもサッカーをやったりしている。
 いつの時代にも子供たちは広場を見つけて遊ぶ。昔から神社の前が広かったので、神社で遊ぶ子が多かったが、今では遊ぶ内容も変わり、神社では遊べなくなったところもあるようだけれど、何だかそれでは神様も淋しかろうと思ってしまう。
 神社と子供のはしゃぐ声がする風景。ベンチに座って目をつむり、しばらく聞きいっていた。懐かしい。タイムスリップしたかのような感情。この景色がずっと続いてくれたら嬉しいのにな。

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