見出し画像

志ん生

 来秋の朝ドラが「ブギウギ」にきまった。東京ブギウギの笠置シズ子をモデルにしたドラマになるらしい。誰が主役になるかオーディションで決めるらしいが、難しい役になりそうだ。
 シングルマザーで苦労しながらも、明るく元気な大阪弁で喋る姿は、晩年をTVで見た記憶はあるが、最盛期の頃は当然ながらしらない。
「銀座カンカン娘」という映画で、彼女は高峰秀子とともに主演で出ている。その映画を10年くらい前に見て知っているくらいだ。
「銀座カンカン娘」といえば、古今亭志ん生も出ている。映画の最後のシーンは高峰秀子と灰田勝彦が2人で、家を出ていくシーンだったと思うが、それに合わせて古今亭志ん生が落語を披露する。2人の門出に1席、てな感じだったろうか。そのわりに2人は列車の時間だからといって中座する。それでも志ん生は止めずに落語(替わり目)を演じ続ける。銀幕が下りる。
 これってほとんど残っていないとされる古今亭志ん生の貴重な映像音源である。これだけでもこの映画の価値は計り知れないだろう。
 古今亭志ん生。伝説の落語家である。大河ドラマ「いだてん」でたけしと、森山未來が志ん生役を演じた。
 息子はこれも天才と謳われながら夭折した古今亭志ん朝である。
 正直これほど無茶苦茶な人もいない。口座に上がりながら酔っぱらって居眠りしだしたのを、お客が「寝かせといてやれ」といわしめる落語家なのである。
 噺の内容も途中で別の噺に変わってしまったり、登場人物の名前も途中で変わったりすることもあったらしい。(この稿も笠置シズ子がいつのまにか志ん生になっている)
 このどこが天才なのかは後年生まれた僕らにはわからない。ただこの映画の話し方のせっかちで速い(その意味ではたけしに似てる)落語を聞いて判断せざるをえないのであろうが、全然わからない。
 だが丁度戦中戦後のその時代の中にうまく嵌まったのだろう。
 その志ん生の落語が先入観なしに天才だといえる人なぞ現代には多分いない。その当時の空気を一緒に吸った同じ時代の人たちだけが共有できるなにかなのだろう。そんなふうに感じる。
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?