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司馬遼太郎が好き

 司馬遼太郎のファンを公言している。「坂の上の雲」が一番好きで、新しい明治という時代になって、まだ間がない日本人たちのナショナリズムや悲哀、勤勉、滑稽さをよく表現している。 司馬遼太郎の小説は明るい。明治という時代は、そんなに明るい時代でもなかったはずなのに、希望に満ちた時代であるかのごとく文章を進めていく。
 さすがに二〇三高地、旅順攻撃の悲惨さは明るくは書けなかっただろうけど、そのわりにあとを引かないのは勝ったからというのもあるが、児玉源太郎が突然やってきて、指揮権を奪い、あっさり旅順を攻略したからであろう。それまでの悲惨な状況をふっとばしてくれる痛快さがあった。
 もっともそれで無能呼ばわりされた乃木希典は気の毒の他ないが、司馬遼太郎は小説家である。ノンフィクション作家として紹介されているものもあるようだが、間違っている。あくまで小説家である。だから嘘を平気でつく。そこは十分に考えて読まなければならない。
 司馬作品の魅力は1つにはそんなところにもある。実在しない人物を書いて、いかにも本当にいたかのように書くので、錯覚をおこしてしまう。「風の武士」の柘植信吾などは最たるものであろう。
 「翔ぶが如く」の物語も前半は作り話が多いが、いかにも本当にあったかのような内容があって、面白い。それだけ登場人物が生き生きとして活動している。桐野と川路の会話などそうであろう。
 ただ1つ残念なのは、読書家で研究も細かいところまでされていた先生がノモンハン事件に関しては、認識と実際に大幅なずれがあったことである。幸いなことには小説としてのノモンハン事件は書くのを諦めたので、作品として残ることはなかったが。
 司馬遼太郎に関しては、他にも語りたいことがたくさんあるが、1ついえるのは、どれも魅力的で、明るいとまではいかなくても、暗い内容のものは1つもないということだろうか。
 僕は司馬作品を読んで日本史が好きになり、自分なりに勉強して結構な日本史通になったと思う。暇があったら是非司馬作品を読んでいただきたい。絶対に面白いから。

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