見出し画像

真実の眼4(快傑サッソー)


「おそらくザブ島でも片目だけ嵌めて、もう片方は秘密に隠してあったはずだ。そうでないとおかしい。神の像によじ登って片目だけ盗んでいったのかな、アラブのセレブにこの宝石を売った泥棒は」
 CIAの男がいった。
「泥棒?そうか。カネになると思った泥棒がザブ島に入り込み、隠してあった片目だけ盗んでいったんだ。よじ登ってとったのなら両目ともいただくはずだ」
 サッソーがいった。
「それにしても、あなた。ただのCIAの職員とは違うみたいね。正体は何」
 李麗春が聞いた。
「確かに私はCIAの職員ではない。兵器開発部のものだ。人は俺のことをドク・クレイジーと呼ぶ」
 ドク・クレイジー。どこかで聞いた名だ。サッソーはふと思った。
「真実の眼は一緒にさせたら危ない。1つでも工夫すれば、核兵器より恐ろしい武器になりうるのだ。使い方を間違ってみろ。とんでもないことになるぞ」
 その時突然、ザブ島の連中がガラスのようなケースを外し、真実の眼を取ろうとしていた。
「やめろ、やめさせろ。危険だ」
 バリバリバリ、と電気が走り、真実の眼を手にした者は黒焦げになった。
「ああいわんこっちゃない。今、実験の途中なのだ。電気が通っている。使い方を誤ると基地ごと吹っ飛ぶぞ」
 皆後すざりした。
「危険だから、ザブ島の人たちは片目だけ嵌めておいて、片目はどこかに隠していたというわけなのか。そしたらむしろ放しておく方が安全なはずなのに、なぜ2つ一緒じゃないと祟りが起きるんだ」
 ホウがいった。
「そんなのは先祖代々守り続けてきた奴らの迷信だ。事実は逆なのだ」
 ドクがいった。
「金だ。金が関係あるんだ。2つないと金ができないんだ。この真実の眼は錬金術に使えるのだ」
 いままでずっとだまっていたザブ島のリーダーが喋った。
 兵器にもなるし、金も錬金できる、とあっては、これを手に入れた者が世界を征服できるということと一緒ではないか。恐ろしい。なんと恐ろしい宝石であることか。
「祟りはある。ザブ島にあるべき真実の眼がなくなると、神の像を守っている守護神がやってくる。俺はそっちの方が怖い。そいつが動き出す前に、真実の眼を渡すんだ」
「何だって。何が来ると云うのだ」
 サッソーが聞いた。ドクは黙って聞いていたが、
「その守護神から片方の眼を守るしかない。守護神に両目を揃わせたら、確実に世界は終わるぞ」と叫んだ。
「だから島に早く戻さなければならないんだ。俺たちは世界征服何て考えてやしない。早く渡してくれ」
 島のリーダーは涙ながらに懇願した。サッソーやホウ、麗春にはどうしたらいいかわからない。
そこへ大きな地震が襲ってきた。ここは地下15階。早く上に上がらなければ危ない。
 ドクは電源を切り、真実の眼を自ら掴み、階段を使って上へ向かった。皆、それに従った。
 縦揺れがすごかった。まるで何かが地面に向けて落ちてきているように。
「守護神がとうとう動き始めたんだ」
 島のリーダーがいった。
 15階を一気に登りついたサッソーたちは地上に出て驚いた。そこには、片目の守護神、石でできたはずの神の像がいて、暴れているのである。
「あれが守護神」
 サッソーがつぶやいた。
 守護神はドクを見つけると、あっという間に捕まえてしまった。そして彼が持っている片目を奪おうとした。ドクは思い切り真実の眼を遠くへと投げた。だが捕まった状態では遠くへは飛ばせず、守護神の足元にそれは転がった。
 サッソーが素早くそれを奪って逃げた。守護神が追いかける。サッソーが捕まりそうになると、ホウにパスされる。巨人と忍者のラグビーである。
 宝石をホウに渡したサッソーは立ち止まり、攻撃に転じた。胸を広げると、いつぞやはマジックハンドがでてきたが、今回はマシンガンである。
 ダダダダダダダダダダダダダダダダダ。
 守護神には効かない。思い切ってサッソーは飛んだ。そして、守護神の肩に乗った。守護神は気持ち悪そうに、捕まえて、放り投げようとする。サッソーはスルリと逃げる。そして、顔の方に行き、片目をもぎ取った。
 瞬間、守護神は動きを止め、その場に倒れこんだ。
 サッソーは素早く飛び降りた。
「すげえな、サッソー、よくやったぜ」
 ホウが近づいて労おうとすると、ドクが止めた。
「それ以上近づいては危険だ。お互い真実の眼を持っておる」
 2人はあわてて飛びのき、ホウは宝石を麗春に渡した。サッソーが持っていた宝石はドクに渡した。
 サッソーとホウは抱き合った。とりあえず事件は解決した。後はアメリカとザブ島の問題だ。もっともそれが世界の未来を決めかねない話し合いになることは予想でき、アメリカのほうに絶対的に分があるのは間違いない。では自分たちは何をすればいいのか、サッソーは考えざるを得なかった。
                        <つづく>

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?