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ミサンガ

 Jリーグが開幕した年、ミサンガ(プロミスリング)が流行した。御多分に漏れず、妻も、当時は恋人だったが、お互いミサンガをつけ合った。切れたら、願いが叶うとかいっていたが、丈夫でなかなか切れなかった。
 当時、彼女との結婚には3人姉妹の長女が反対していた。「あんた騙されているのよ」くらいいわれていたようだ。
 確かに彼女には既に2人子供がおり、僕より年上で、しかも一番上の子は知的障碍者である。こんな環境の女性にプロポーズする馬鹿な男はいないであろう。
 障碍については、騙された感がある。ギリギリまで僕は知らされていなかった。初めて知った時は、男としてもう後には引けないところまできていた。それだけ真剣に彼女を愛していた。
 だが彼の障碍がかえって奏功する。普通は年頃の子(中学生)は母親が男を連れてきたら抵抗反発しそうなものであるが、それが全くなかった。すんなり受け入れてくれた。下の子は最初から懐いてくれた。
 障壁となっているのはさっきもいったように長女である。結局向こうのお母さんが許してくれたので、うちの両親と向こうのお母さん(父親は早逝している)、次姉、子供2人が出席して神前結婚式を挙げた。近所の若松の白山神社である。祝詞を上げている間、賽銭を入れて柏手を打つ音が背中に響いた。
 僕と彼女の間に子供が生まれた頃、長姉も結局許してくれて、今では和気藹々になっている。
 ところでミサンガである。汚れて汚くなっても、ちぎれることはなかったので、2人はそれを外し、大事にしまっておくことにした。ちぎれなかったけれど.願いはかなったのだから。
 

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