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地球(ショートショート)

「モウスグ、トウチヤクシマス」
 宇宙船の機械音がそういった。あれが我々の住むべき新しい都、新しい星だ。
 コンピュータで解析したところ、あの星が1番住むのにいい環境であるようであった。
「地球と名付けよう」
 艦長がいった。我々が今まで暮らしていた星の名前だ。その地球はもはや人が住むのに適さない環境になってしまい、こうして、宇宙船で、新しく住むべき星を探していたのだった。
 問題は新しく地球と名付けた星に先住民がいるかどうかと、食料があるかどうか、だった。空気酸素濃度他は遠くから調査できるので、問題なかったが、生命反応まではわからなかった。
「多分、先住民はいるだろう。どれだけの知能を持っているかが、問題だ」
 艦長がいった。
「先発隊を出して調査させましょう。いきなりこの船でいって。攻撃でもされたらたまらないですからね」
 俺が言った。
「そうしてくれたまえ。A-15と16で調査船を出して報告してくれ」
 A-15というのは俺の名前だ。16は俺の弟だった。2人は宇宙服に着替えて、小さな宇宙船に乗り込んで、地球へと向かった。
 大気圏を難なく通過し、とうとう地球の大地がみえてきた。このうえなく緑色に覆われ、食料もたくさんありそうだった。
 しばらく飛んでみたが、大きな建物は見つからず、文明はあっても大したことはなさそうであった。
「これなら宇宙船が降りてきても大丈夫そうだ」
 俺は艦長にそう連絡した。
 いよいよ宇宙船本体が地球へ着陸を試みた。すると調査では発見できなかった巨人が何人もいるではないか。彼らは貫頭衣と呼ばれる服装をしていた。
「申し訳ありません。調査では発見できませんでした。やつら巨人の存在も住宅も気配さえも気づきませんでした」
「言い訳はいい。とにかくここをやり過ごそう」
 艦長は緊張の面持ちでそういった。
 巨人たちが気づいて、宇宙船に近づいてきた。何かを叫んでいる。我々は必死で逃げたが、重力が重いのか、思ったよりスピードが出ずに、1人に捕まってしまった。この船は輸送船なので武器はない。絶体絶命であった。最高出力を出して、空に向かった。捕まえていた男は振り落とされた。
 宇宙船はそのまま人里離れた森の中に到着して、ここで、やつらに見つからぬように暮らしていくことにした。
 そうこうしてるうちに小さいながらも我々の村は完成した。巨人たちには見つからない様に配慮はしていたが、たまに巨人にみつかることもあった。しかし彼らは意外や優しく、神のように我々に接してくれた。
 いつのまにか彼らが俺たちのことをコロボックルと呼んでいることをしった。
 


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