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靴底(ショートショート)

 犬の糞を踏んだ。この辺りは犬の糞が多い道なので、普段気をつけていなければならないところであったのだが、考え事をしていて、油断した。
 近くのアスファルトの地面に擦り付けて、糞をとろうとしたが、スニーカーの靴底の凹み部分に糞が入り込んでしまい、どうにもならない。近くに枯れ木が落ちていたので、それを拾って、コサギ落とそうとしたが、うまくいかない。近くの公園に水飲み場があったのを思い出し、水で洗うことにした。
 公園では子供が数人遊んでいた。俺は靴を脱いで、片足状態で、水飲み場の水を靴底にかけて、さっき拾った枯れ木で、コサギ落としていった。
「きったねーうんこだ、うんこだ」
 子供が叫んだ。
「水飲み場でうんこ洗ったらきたねーじゃねーか」
 他の子供が叫んだ。そういわれれば、反論できない。ただうんこを洗っているのではなく、スニーカーの靴底を洗っているのである。誰がうんこを洗うか!
 その時、子供の1人が、俺に体当たりした。片脚立ちだったので、バランスをくずし、俺はその場に転んだ。
「このガキンチョ!」
 俺は怒って洗っていたスニーカーを振り回した。スニーカーから水が飛び散り、ガキンチョに向かって飛んだ。
「わー、うんこの水だ。うんこの水が飛んできた」
 ガキンチョたちは逃げた。
 その隙に俺はスニーカーを履き、ズボンについた砂をはらい、公園から出ていこうとした。その瞬間、ぐにゃっという気持ちの悪い感触が、俺のスニーカーの靴底に感じた。
 公園の入り口にも、犬の糞が落ちていたのだ。またもや不注意だった。1度ならず2度までも踏むとは、今日は何と不幸な日であろうか。仏滅に三隣亡に13日の金曜日に天中殺が重なったような日だ。
 またも俺は水飲み場に向かい、靴底を洗い出した。ガキンチョが近づいてきたので、水を散らして追っ払った。ガキンチョは遠目に俺を見ながら、文句を言い続けていた。
 洗い終えると俺はスニーカーを履いて公園を出ようとした。犬の糞に気をつけながら。瞬間、ガキンチョが水飲み場の水を全開にして、手で押さえ、こっちに向かって飛ばしてきた。俺はびしょ濡れになった。怒り心頭に達し、俺は、ガキンチョに向かって突進した。その瞬間、・・・また犬の糞を踏んでしまった。
 

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