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ハリーポッターと装飾写本の小部屋

久しぶりに美術館へ。
見に行ったのは
去年の開催予定が延期となってから約1年待った
「ハリーポッターと魔法の歴史」展。
2017~18年にロンドンの大英図書館で開催された
展覧会の巡回展です。

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カリグラフィーを書いていると、
時々「魔法のようですね」と言ってくださる方がいます。

幻想、空想を意味する「fantasy/ファンタジー」の語源は
古典ギリシア語で
φαντασία(phantasía, 可視化)、
さらに辿ると
φαίνω(phaínō, 私が照らす)なのだそう。

そして装飾するという意味の
「illuminate/イルミネイト」の語源は
ラテン語で「照らす」。

言葉や感じたものを
自分の手で形にする時、
そこにきらきらとしているものが
あるのかもしれない。



展示では
ハリーポッターの世界観を揺るぎなく裏付けする
大英図書館の歴史ある資料の実物を見ることができます。
その資料である装飾写本の中に
カリグラフィーの文字があり、
魔法の歴史に触れながら
当時の手書きの技術も
自分の目で確かめることができました。

装飾写本とは、印刷技術がなかった時代に
神聖な書物や学芸の書を
写字生が一文字ずつ書き写した本のことです。
文字を書くだけではなく、文字やその周りを飾ることで
神聖さを表現しているそう。

紙が普及する前の時代に使われていたのは
羊皮紙(ようひし)と言われる、
羊の皮などをなめして作られたもの。

羊皮紙に書く前には下準備が必要で、
その研磨粉に必要なものと手順は、


・カトゥルボーン(コウイカの石灰質の粉)
・プミス(粉末の軽石)
など

これらを乳鉢に入れてサラサラになるまで潰し、
その粉でやすりをかけるように羊皮紙の表面を滑らかにしたら
綺麗な羽で粉を落とし、決して手で触らないこと。



だそうです。

このレシピがもう
魔法のように見える。
ファンタジー感。


紙が使われるようになった現代でも
羊皮紙は存在しています。
書くためにはもちろん、
身近なものだと
タンバリンの叩く部分に使われているのだそう。

展示物の羊皮紙は一見古い紙に感じますが、
やはり元は皮。紙よりも厚さがあるのが見て分かりました。
開かれた書物のページをガラスケースの上から見るより
側面からの方が距離が近くなって確認しやすいです。


展示では
ハリー・ポッターが通う魔法学校のカリキュラムに沿って、
「呪文」「錬金術」といった魔法や魔術の歴史が
紐解くことができます。

魔法魔術学校に入学、という夢を叶えるような気分で
ワクワクしながら踏み込む大人は
私だけではなかったはず。

実際の装飾写本の筆跡に
魔法の世界の底に流れる歴史と
カリグラフィーをする自分の共通点に光を感じながら
ロマンに浸る時間を過ごしました。

最近、英国に縁を感じて嬉しい限り。
私も紅茶占いがしたくなりました☕️

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展示にあった「占い学」についてのお話は
こちらで。


「ハリーポッターと魔法の歴史」展


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【参考文献】

ティモシー・ノード 画
パトリシア・セリグマン 文
鶴岡真弓 訳
(1996年)『装飾文字の世界 カリグラフィー入門』三省堂


語源:
Illuminate
https://ja.wiktionary.org/wiki/illuminate

Fantasy
https://ja.wiktionary.org/wiki/fantasy



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