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幻の酒日記
【幻の酒】
仕事で福岡出張に行ったとき、仕事が終わったあと、上司が飲みに連れて行ってくれた。
その時に飲んだ地酒の日本酒がとても美味しく、今まで飲んだ日本酒の中で一番の味だった。
けれど、銘柄をしっかり確認していない状態で酔っ払ってしまい、どの日本酒を飲んだのかさっぱり覚えていない。
どうしても旨い酒の名前を知りたい。
福岡から帰ってきて、沸々と気持ちが湧き上がってきた。
まず初めに、飲みの席に同席していた同僚に聞いてみる。が、同僚も酔っ払っていたらしく、覚えていないらしい。
次に上司に聞こうかと思った。が、酔っ払った姿を見せてしまったのが恥ずかしく、聞けずに数年が経ってしまった。
銘柄なんて上司もきっと覚えていないだろう。
あの日、私は本当に旨い酒を飲んだのだろうか。幻だったのではないだろうか。
あの酒はきっと「幻の酒」だったんだ。そう思うことにした。
【終】
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