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詩人としてのポール・サイモン

初めてちゃんとポール・サイモンを聴いたのは、1986年発表のGRACELAND(グレイスランド)です。当時21歳だった僕は、3年ほどアルバイトしていた新宿のデザイン事務所から、上野アメ横にある古着屋に正社員として入社した頃に当たります。これからオリジナルTシャツの展開を考えていた古着屋にとってはグラフィックデザインが多少できると言うことが、採用の決め手だったみたいです。古着屋で2回目のTシャツシーズンに向けて、音楽好きの社長から「ポール・サイモンの南アフリカでのコンサートでバックにいた黒人ダンサーたちが着ている民族衣装のパターンをデザインしたTシャツが欲しい」と言う指示を受けたのが、ポール・サイモンとの出会いだったと思います。(黒人ダンサーたちのことはのちに Ladysmith Black Mambazoだったことを知ります)

Paul Simon- Township jive, zimbabwe 1987 | graceland
https://youtu.be/JeO0CJqjsgU

こっちこっち!
https://youtu.be/Fmf9ZJ_Yn0A

もちろんサイモン&ガーファンクル時代の名曲の数々は知っていましたが、あまりにも優等生っぽい雰囲気にLPを買って聴くということはありませんでした。そういえば1985年のWe are the worldにも参加していましたね。ボブ・ディランとともに笑わない二人(笑)として見ていました。それからずいぶん月日がたってから、ソロのポール・サイモンを何枚か手に入れて聴いています。前述「GLACELAND」の他に、「PAUL SIMON」1972、「There Goes Rhymin' Simon 」1973、「Still Crazy after all there years」1975が手元にあります。今までメロディーラインと歌声で充分癒されていたのですが、これからは、幸いにも全て日本盤で訳詞付きのライナーノーツがあるLPなので、今まであまり気に留めなかった詩を楽しんでみようと思っているのです。そのきっかけとなったのが、鎌倉の出版社・港の人から出ている「アメリカのライト・ヴァース」西原克政著 と言うアメリカ現代詩入門書にポール・サイモンが詩人として取り上げられていたからです。先日ラジオでピーター・バラカンさんも「ボブ・ディランと並ぶ詩人」と評していたし、なおさらのことです。ピーターさんも「ライト・ヴァース」と言う言葉こそ使いませんでしたが、「Stranger to Stranger」2016年の中の「Wristband」と言う曲の詩を紹介されていました。「一服しようと思ってバックステージのドアから外に出たら鍵を閉められた。正面ゲートから入ろうと思ったらリストバンドがないから入れられないって。自分のステージなのに」(映画バードマンでもそんなシーンがあったっけ)このような詩がまさに「ライト・ヴァース」なのだそうです。W.Hオーデンによると「ある時代の日常的な社会生活ないし詩人がひとりの平凡な人間としての体験を主題として扱うもの」と言うことらしいのです。この書には僕の大好きなレゲエ調の「Mother and Child Reunion」にも触れていて、これは中華料理店のメニューで親子丼をMother and Child Reunionとあり、そこからポール・サイモンはインスピレーションを得たとか、、、。

Paul Simon - Wristband
https://youtu.be/9lJHVpH5v8Q

Paul Simon - Mother and Child Reunion (from The Concert in Hyde Park)
https://youtu.be/E_52QR3TptY


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