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ボタニカルコミュニケーター

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「なぜ人は花を美しいと思うのか」という答えのない問いを追いかける連載です。
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2022年5月の記事一覧

#5 植物の進化と花の誕生②

#5 植物の進化と花の誕生②

植物は他の個体との交配によって、様々な遺伝子を獲得し、環境の変化に適応していきました。
花の進化とは、植物がどうやって他の個体と効率よく交配するか、どうやって様々な環境で生き残っていくか、その試行錯誤の結果とも言えます。

植物は、初めはシダやコケのように胞子で自分のテリトリーを広げていましたが、ある時、"種"という画期的な発明をしました。

種は小さく軽く、風や水の流れによって遠くに運ばれ、まだ

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#4 植物の進化と花の誕生①

#4 植物の進化と花の誕生①

地球上で最初に生まれた花とは、どういうものだったのでしょうか。

地球上で初めて"植物"と呼ばれた生き物は、光合成をするひとつの緑の細胞でした。
そこから植物は自分の体を分裂させて、仲間を増やしていきました。
(実は植物は自分のコピーをクローンのようにどんどん増やせます。このあたりのお話は後ほど)

しかし、自分を分裂させたコピーは、自分と全く同じ性質なので、今現在の環境には適応できていても、急に

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#3 花って色っぽい

#3 花って色っぽい

そもそも植物はどうしてエネルギーを使ってまで、花を作るのでしょうか。

もちろん、人間にきれいって言ってもらうためではないですよ。もっと植物目線で生きるために不可欠な理由があります。

"花"と言われてどんなものを思い浮かべますか?
花びらがあったり、ガクがあったり、花の中には何が入っているでしょうか。花が咲いたあと、植物はどうなるでしょうか。

そう、花の中には雄しべや雌しべ、花粉といった、植物

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#2 蕾のエネルギー

#2 蕾のエネルギー

花は植物の体の中で一際目立つ部分です。けれど、植物はその一生の中で、すぐに花を咲かせるわけではありません。

小学生の頃のアサガオの観察日記を思い出してみて下さい。
タネから根が生えて、芽が現れ、まず茎が伸び、葉を茂らせ、植物は自分の体を大きくし、太陽の光をたっぷりと浴び、栄養を作り出し、またどんどん体を大きく伸ばしていきます。

そしてあるタイミングで、植物の体の中でシグナルが鳴り響きます。

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#1 花は呼吸する

#1 花は呼吸する

植物は一日中呼吸をしています。

と、書くと、「あれっ?植物って光合成してるんじゃないの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

植物は光合成によって、二酸化炭素と水から生きるために必要な糖を生み出し、同時に酸素を作り出しています。

けれどそれは日中、光がある時間のお話。
日中の大きな光合成活動の陰に隠れて、実は植物は一日中、酸素を吸って二酸化炭素を出しています。私たち人間と同じように。

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