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三島由紀夫『葉隠入門』

先日の記事の続きだ。

本書の初版は1967年、三島が自決する3年前である。

『葉隠』は戦中は非常にもてはやされていたが、戦後は打ち捨てられた。三島は戦中から魅せられており、その思いを昭和中期にあえて書いてみたって感じだ。

『葉隠』の名言をいくつか取り上げてその魅力を解説していく。さらに原書の大事な部分の抜粋と現代語訳が付いているのがありがたい。

「武士道といふは、死ぬ事と見つけたり。二つ二つの場にて、早く死ぬ方に片付くばかりなり。別に仔細なし。胸すわつて進むなり」という一節はあまりにも有名である。

迷ったときは死に近いほうを選びなさい、そうすることで生は充実するという趣旨である。死を賛美しているのではなく、どちらかというと生のエネルギーの賛歌である。しかし三島はその一方でニヒリズムも見出している。

山本常朝は主君に殉死することを許されなかった。鍋島藩は幕府にさきがけて追腹を禁じていたからである。それで出家して葉隠を著したのであるが、そのような境遇でニヒリズムに陥るのは自然なことのように思われた。

『葉隠入門』は重々しいタイトルであるが、こんな感じで気軽に読める内容だった。もしかしたら『葉隠』も寝っ転がって気軽に読めばいいのかもしれないね。



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