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納富信留『プラトン哲学への旅 エロースとは何者か』読んだ

納富信留大先生の新書がKinle unlimitedだったので読んだ。読みやすかった。

著者がプラトン『饗宴』の舞台にタイムスリップするという設定で、臨場感を大事にしている。

アカデメイア遠足の後、宴会場であるアガトン邸に移動する。時代背景や登場人物の説明から始まり、本題である愛とはなにかみたいなことへと進展していく。

前座の人々(といっても歴史に名を残す人々)の演説が終わると、ソクラテスの対話術が始まる。なにを愛し求めることは、自分にないものを求めることである。エロースとは美を求めることであるが、美を得ても自分が美しくなるわけではない。富を得ればリッチになるのとはちがう。

ではエロースの働きとはなにか、、、という段になって唐突にも、ソクラテスにかつて啓示を与えたとされるマンティネイアのディオテマを筆者は訪ねるのだ。

ディオテマによると、エロースの作用は、美しいものの中で子供を生むことだ、とウンダス文明みたいなことを言い出すのである。

いやはや古代の賢人もわれわれとたいして変わらんこと言ってるのはおもしろいですな。

もちろん物理的な出産は女性に限定された機能であるが、ディオテマによると射精することそのものも生むことらしい、、、これはちょっとわからない。

あるいは後世になにかを残すという意味では、芸術や文学の作品も子供のようなものだともいっている。これはよくわかる。

さらに美とは特定の誰かにだけあるものではなく、ほかの人にも見出されるものだ。究極的な美とはある意味普遍的であるから、色々な人の中にあるということはできるだろう。

他の人々にも宿る共通の美を鑑賞することが次のステップだとディオテマが述べるにいたり、そこで著者はたまらず「浮気を勧めるということでしょうか」と問うが、「そんな低次元の話ではありません」と一蹴されるのであった。

『饗宴』なんてもちろん読んだことはないが、面白そうですね。

著者によると光文社のこれなかなか良い訳らしい。しかもKindle Unlimitedだ。

注釈が充実しているのはこちらとのこと。

おお、お高いですな。

とりあえず早くラテン語を終えて、古代ギリシア語もマスターしたいなあと思ったのであった。

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