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摂食障害の始まりから終わりまで (第二話:「心の病」であることに向き合う決意)

前回の第一話からの続きです。まだ読んでいない方は、こちらをご覧ください。

過食を止めるための「ダイエット合宿」

過食症を治したい。

そう思ってからは、前回書いたような栄養面からの治療をしてみたり、
どうにか過食して太ってしまった分を取り戻すために断食道場に通ったり・・。
(きっと関東近辺の断食道場は全て行き着くしたと思います)

そして、強制的にものを食べないようにするために、
泊まり込みでダイエットをさせられる「ダイエット合宿」なるものにも参加したりしていました。

「摂食障害プログラム」とホームページに書いてあったので、
ここなら治るかもしれないと、わらをもすがる想いで申し込んだのですが

そこで待っていたのは、まるで地獄のような日々でした。

合宿形式なので、個室ではありますが、寮に寝泊まりします。
摂食障害の人専用の特別なケアは特になく、
普通にダイエットをしたい人と同じように生活をさせられます。


つまり、「痩せるためにひたすら努力せよ」という場所だったのです。

朝は合宿所からおにぎり、サラダ、納豆が支給され、
それを寮で食べてからその施設に向かいます。

みんなでバスに乗って近くの公園を走るか歩くか、20-30分間運動をして、
施設のジムに戻ったら、筋トレと運動です。

そこから栄養に関する説明を受けたり、
発汗作用のあるマシンに入れられたり、
EMSを当てられたり、、、、食事も全て管理されています。

まるで自分の意思はほとんどなく、
ベルトコンベアーの上のもののように、プログラムに乗せられて、
流れ作業のような日々がすぎていく。


周りは、いわゆる肥満体型の人が多く、健康上の問題から
ダイエットが必要とされるような人がほとんどでした。

そんな人たちとの会話は、噛み合うはずもなく・・・

その施設では、
私はただの「ダイエットに失敗してる人」でしかありませんでした。

所長から言われた、衝撃的な一言

今考えると、なんであんなところに行ったんだろう・・・と思いますが、
当時の私にとっては、「太らずして過食症が治る」というのは、
救世主にも思えるプログラムだったのです。


そして、2週間に1回だったかな?
そこの所長のお偉いさんのセミナーを聞かされます。

ダイエットの合宿所なので、「なぜダイエットに失敗するか。」と言う内容です。

私にとっては、命スレスレまで脂肪を削って痩せた経験があったので、
痩せる方法なんてわかっているし、今更カロリーの話なんかされなくても分かっていました。

ましてや「摂食障害プログラム」だから参加したのに、
普通にダイエットをする人と同じ内容を聞かされて、

こういうお菓子は食べちゃダメだ、とかこういう運動をしないと痩せないとか、

永遠とそんな話を聞かせられるので、

この所長さんは、摂食障害という病気を、知らないんだな。と感じました。


そして、私自身は、過食をコントロールできない自分に
絶望していた時だったので、

参加するたび苛立ちと苦しさに溢れて発狂しそうになっていました。

そんな気持ちが態度に出たのか、
セミナーに参加する時にも挙手や発言をしないといけないのですが、
だんだん話を聞くことも苦痛になり、ついには参加しなくなり・・。

そんなある日、所長に呼び出されました。
所長は、声を荒げながら、広い応接間で私にこう言いました。


「君みたいな態度をとる人ははじめてだ。
なんで言われたことを素直にやらないんだ?治す気はあるのか?
「ないんだったらもうここへはこなくていいから、もうやめて帰ってくれ!」


衝撃的な一言で、体が震え、涙が止まらなかったのを覚えています。

やる気がないわけじゃないのに。
コントロールできない病気なのに。

なんで分かってもらえないんだ。。。

そのまま勢い余って帰宅しましたが、
自宅に帰るまでの間中ずっと、電車の中でもお菓子を食べ続けていなければ

心が保てないほど、傷ついた経験でした。


姉の助け

あまりに苦しかった私は、

すぐにお姉ちゃんにこの話をLINEで伝えました。

私の姉は実は私よりもずっと早くの時期に、同じ病気にかかり、
長年にわたって同じような苦しみを経験してきた人で、私にとって
唯一の理解者だったのです。

私の話を聞いた姉は、「本気で言ってんの?どこの所長?場所教えて!」というので、まさかお姉ちゃん、行ったりしないよね?と思いながら、渋々場所を伝えました。

姉は私に、「つらかたったね。もうそんなとこ行かなくていいから、
お家でゆっくりしてな。」と温かい言葉を重ねて、ラインはそこで終わりました。


しかしその翌日。

なんと、姉はその所長のところまで一人で出向き、
1時間にわたり話をしてきたというのです。

なぜそんな発言をすることになったのか、
摂食障害という病気はどういう病気なのか、
妹がどういう気持ちだったのか・・・

など、私の気持ちを代弁するように、
所長に面と向かって話をしてきてくれたのです。


「ちゃんと話してきたからね、安心して」
「でも、施設を出たら緊張で手が震えてたよ笑」と。


私はお姉ちゃんのことが昔から大好きでしたが、

初めて、家族の「愛」のようなものを感じた経験でした。


心の病であることに向き合う決意

栄養指導でサプリをたくさん買ったり、
断食道場に行って「食べない」を強制実行したり、
ダイエット合宿で機械のように痩せようとしたり、
数百万をかけてどうにか「過食」を止めることに必死になっていた私も

この事件でようやく気づいたのです。

それは、

過食症は、「食べ過ぎ」の病気ではなく、「心の病気」なんだ、

ということです。

つまり、

私が命を削ってまでも痩せている自分にしがみついていないといけなかったのも、
手が震えるほどに食べ物を詰め込まなければいけなかったのも、

それ自体は表面上で起こっている「症状」に過ぎないのです。


風邪という病気に例えるならば、

「咳が出る」「熱が出る」というのは風邪の症状で、
それ自体を自分でコントロールして止めることはできないですよね。

本当に風邪を治したかったら、
その根本原因である、ウイルスや免疫力の低さを治さないといけない。


摂食障害でいうところのこの根本原因は、

「自己効力感」「自己肯定感」の低さ。


いつも、誰かに褒められたり、誰かにすごいねと言われる自分でいなければ、
不安で仕方なくなる。

だから、ダイエットという、わかりやすく結果が出るものに依存して、

徹底的に、完璧にダイエットをこなしていたのです。

カロリーはグラム単位で全て計算し、
ランニングをすると決めたら毎日60分、雨の日も雪の日も、
1日も休まず、1分でも長く走り続ける。


そうすれば、体重という数字にも結果として毎日現れ、
他人からも絶対的に褒めてもらえる。


私にとって、いつしかダイエットは、
自分を支える「心の杖」になっていたのです。


そしてそれは過食になってからも同じ。
「痩せていなければ認められない」という根底にある心の問題があるので、
とにかくこの過食を止めなければ、と必死になっていたのですが、

それは表面の症状を止めているだけ。

根本にある、心の問題に向き合わないと、治らないんだなと、
ようやく、気づけたのでした。


そして、精神科への通院と、ひたすら自分の気持ちと
コミュニケーションに向き合う日々が始まります。

続きは、また次回。





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