#678 蹴球論61|2006年 ドイツワールドカップ① 日本vsオーストラリア ~カイザースラウテルンの悲劇~
日韓W杯から4年・・・
自国開催というアドバンテージがあった前回大会、初の勝ち点獲得、初の勝ち星獲得、初の決勝トーナメント進出を果たしたサッカー日本代表でしたが、その実力は本物だったのか?
その真価が問われる大舞台、ドイツW杯が開幕しました。
この大会は前大会でオランダが出場できなかったように番狂わせが無く、強豪国はおしなべて出場しており、最終的にはイタリアが栄冠に輝くのですが、それはまた後の記事で紹介するとして・・・
我らが日本代表が所属する、グループFについて解説しましょう。
初回はまだアジア所属では無くオセアニア所属だったオーストラリア戦、いわゆる「カイザースラウテルンの悲劇」です。
日本代表スターティングメンバー
第2戦のクロアチア、第3戦のブラジルという徐々に強くなっていく相手を考えると、この1戦は勝ち点をGETしておきたいところ。
日本は当時のベストメンバーでこの試合に挑みます。
キーパーはアジアカップ2004で全幅の信頼を獲得した川口。
フランスW杯の守護神が2大会ぶりにワールドカップのピッチに立ちました。
DFは中澤、宮本、坪井の3バック。
田中誠の離脱はあったものの、宮本・坪井はジーコジャパン始動当初から呼ばれ続けていて全幅の信頼を置かれており、中澤に至っては完全に守備のキーマンでしたので、この3枚で妥当でしょう。
MFは5枚で、ウイングバック左は通訳も兼ねて三ちゃん、右は成長著しかった加地さんが直前のテストマッチでシュバインシュタイガーのアホに削られたのでアテネ組の駒野がまさかの抜擢スタメン。
ボランチは国内組ながら抜群の安定感、守備力でスタメンの座を勝ち取った福西と、コンビを組むのはフランスW杯、日韓W杯の全試合と、これまでW杯の全試合でスタメンで出場し続けている唯一の日本の象徴・中田英寿。
そしてトップ下は前大会メンバー落選の雪辱に燃えるファンタジスタ・俊さん。
FWは2枚。
2000年のシドニーオリンピックからコンビを組み、阿吽の呼吸である高原&柳沢のツートップ。高原にはドイツ戦張りの確変に期待でした。
そんな感じで日韓W杯と比較すると、4年前と現在で同じくスタメンなのは中田英・宮本・柳沢の3人と大きく入れ替わりました。
そして宮本も正しくはスタメンでは無いのでそういう意味だと2人だったりするんですが、三都主・福西・川口はメンバー入りはしていたので、スタメンの6人はW杯経験があり、5人が初出場という布陣ですね。
とにかく、これが当時のジーコジャパンの最強布陣だったことは疑いないでしょう。
相手のオーストラリアは、この時期一番強かったんじゃないですかね?
英語圏であるが故にプレミアリーグに所属していた選手が多く、国際経験豊富なメンバーが多かったですね。
GKのシュワルツァー(ミドルスプラ)、FWのヒドゥカ(ミドルスプラ)、ケーヒル(エヴァートン)、プレッシアーノ(パルマ)etc…
そして何と言っても10番でリバプール所属、ウイイレで誰もが愛して使ったと言われているハリー・キューウェル。かなり良い選手でした。
まさかマリノスの監督になるとは思っていなかったですね笑
キックオフ
2006年6月12日は平日でした。
仕事が終わって家に帰って、さて観戦するべとスタンバっていたところ、同僚2人も家に来たので3人で試合観戦をした記憶がありますが、調べると22時キックオフだったようです。
(当時僕は会社の最寄り駅に住んでいたので)
前半
あんま試合の展開覚えてないんですけど、前半26分でした。
俊さんが右サイドでこねくりまわして、中央の高原あたりにクロスをあげると、シュワルツァーと高原がまさかの交錯で、そのままクロスがゴールに吸い込まれました。
明らかにキーパーチャージでしたが、VARも無かった時代なのでそのままゴールと認められて、1-0で先制。
ちょっとすっきりしないものの、俊さんのワールドカップ初ゴールです。
そんな感じで前半戦は1-0で終了。
残り45分をしのげば、ホーム以外での初のワールドカップ勝利です。
後半
徐々に、暗雲が漂い始めます。
とに書くこの日のカイザースラウテルンは猛暑で、尚且つ日本の放映時間に合わせたこの時間はドイツでは15:00とかだったようで、まぁ暑かった模様。
選手はバテバテで足が止まりまくりまクリスティーでした。
そんな中、坪井が足がつったとか、脱水症状を起こしたとか諸説ありますが不本意な形で交代となり、茂庭に代わります。
敵将のヒディングは「60分で日本の足は止まる」と分かっていたようで、その後もオーストラリアはガンガンパワープレーに出て、ケーヒルやケネディ、アロイージという攻撃的な選手をガンガン交代で投入していき、日本メンバーはガンガン消耗されます。
そんな下、ジーコが狂います。
完全に足が止まっていた柳沢に代えて小野を投入します。
意図としては高原ワントップで、オフェンシブに俊さん&中田英、ボランチに福西&小野と置きたかったのでしょうか意図は不明ですが、選手たちも「攻めるの?守るの?どっち?」と混乱し、もっと言うと小野自身もよく分かっていなかったらしく・・・
顕著に「監督の差」がこの局面で出てしまいます。
そして、ここからはあまりにも有名ですが、
後半39分、左サイドからのスローイン、飛び出した川口はボールに触れられず、こぼれ球をケーヒルに押し込まれて1-1の同点に追いつかれ、ここで日本は完全に力尽きました。
その直後、この試合を契機に日本キラーと呼ばれたケーヒルに逆転弾を許し、肉体&精神疲労で完全に足が止まっていたDFをアロイージにスイスイ抜かれて追加点を許し、1-3・・・
そしてこの後に、途中出場の茂庭を大黒に代えるという、途中出場の選手を交代するというトルシエがトルコ戦でやらかした最悪の悪 手を行うも、焼け石に水。
ワールドカップという舞台が監督の采配を狂わせるのも分からなくはないですが、やはり明らかに監督に差がありました。
日本対策をして、日本が嫌がる攻め方を行い、攻撃的なメンバーを次々に投入してそのメンバーが得点して逆転勝ちするという理想の展開が完璧なヒディング采配でしたね。
そして1-3で敗戦。
あまりにも痛い敗戦でした。
試合を振り返って
この試合を振り返ると川口が叩かれていますが、川口はその直前まで何度も決定機を防いでくれたと思ってますし、川口がいなかったらその前に何点取られていたか分からなかったので、僕はそんな責任は無いと思ってます。
むしろ、相手が守勢の前半などで得点できなかった攻撃陣に、どちらかというと責任があるとすら思ってしまいます。
小野も叩かれていますが、小野も責められないと思います。
小野も「なんで自分が入るのか分からない」との事でしたので・・・
そして、色々な所で選手や関係者が話しますが、「このチームはバラバラだった」と言っていますね。
ただ勝利が欲しくて苦言を呈する中田英が不協和音扱いとなり、腫物になって、軋轢を生み、そして監督何もしないという悪循環の極み!
誰が悪いわけでは無いですが、チームは崩壊寸前だったようです。
負けるべくして負けた、そんな一戦だったのかも知れません。
そして絶望を覚えながら、次のクロアチア戦を迎えます。