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#454 読書論19|友情(武者小路実篤)

本日は武者小路実篤の名著「友情」を紹介したいと思います。

これ読んだのはもういつだったか覚えてないんですが・・・
中学校時代にリスペクトしていた先生が「読んだ方がいい」と勧めてくれたのでずっと覚えており、なにかのタイミングで読んで、面白かったので印象に残っています。


当時の時代背景

1906年に東京帝国大学(現東京大学)に入学し、その時の同級生だった志賀直哉らと「白樺」という文学雑誌を共に創刊したことから、武者小路実篤は「白樺派」とカテゴライズされております。

大正デモクラシーなど自由主義の空気を背景に人間の生命を高らかに謳い、理想主義・人道主義・個人主義的な作品を制作した。人間肯定を指向し、自然主義にかわって1910年代の文学の中心となった。

wikipediaより抜粋

この時期は日露戦争に勝利していた時期で、国民が「日本は強い!」とハイになっていた時期と重なりますが、この白樺派は全員がアンチ軍国主義、アンチ軍人であったとのことです。

そんな白樺派の中心人物として名作を世に残し続けたのが、武者小路実篤ですね。


友情 あらすじ

この物語は色々な登場人物が出てきますが、3人だけ覚えておけばいいです。

主人公の野島は新進気鋭の脚本家です。その名前から「ひとつ屋根の下」「家なき子」などの脚本を手掛けた平成のヒットメーカー野島伸司を想起し、その先祖とも思えてしまうのですが、とにかく今でいう拗らせ系男子で、プライドが高く卑小な男で、クソめんどくさい男です。

で、そんな野島はあまり友達がいなかったんですが、数少ない友達が大宮です。大宮は小説家で、スポーツ万能でお金持ち。みんなに愛される存在で、野島というダメ人間にも優しい、今でいう陽キャですね。

で。ヒロインの杉子です。
この杉ちゃんは、野島と大宮の共通の知人の妹なんですが、野島がその知人の家で杉子の写真を見て一目ぼれして、野島は妄想ストーキングをしまくります。

そんな感じで第一章は野島を中心に物語は進みます。
杉子への淡い恋心があり、それを相談する相手は親友の大宮で、大宮はアドバイスをくれたり、おぜん立てをしてくれるのですが、ある日大宮はヨーロッパに渡欧します。そんな中で野島は杉子に告るんですが、あえなく撃沈ズッコーン!!!です。

で、これだけの物語だったら、タイトルは「初恋」になるはずなのですが・・・第二章が面白い。

オチを書いてしまいますが、杉子は野島に嫌悪感を持っており、大宮に惚れていたんです。で、それを察した大宮はこのままじゃマズいと渡欧したんですが、日本の杉子から手紙で執拗なアプローチを受け・・・
大宮も陥落おち てしまうのです。今でいうNTRですね。

そうして大好きな男が、大好きな女と結ばるという、野島目線だったら地獄のようなストーリーなのですが・・・
大宮は堂々とその手紙のやり取りまで見せるんです。これもなかなかエグイですが・・・こうして裸一貫、本心で向き合う事こそが「友情」という事ですね。
野島は最後「仕事でお前らをギャフンと言わせてやる!キエーッ!」と我にかえるのですが、死んでもおかしくないダメージですね笑

この漫画が分かりやすくていいですね。


友情 まとめ

100年前のストーリーですが、こうした屈折したラブストーリーは今と何も変わらないですね。

野島は、杉子が他の男と盛り上がってるだけで「ファック!」とクラウザーさんばりに怒るような嫉妬の鬼で、どう考えても杉子に好かれる資格が無いんですが、それでも妄想してしまうあたりが青春です。

この辺の野島はよく日記を書くのですが、浮かれポンチだった時の下記のような手記が凄い好きですね。

このよころびは何処からくる。これをくう と云うか。空にしてはあまりにも深すぎる。
彼女の美しさは何処からくる。これを空と云うか。それにしてはあまりに美しい。
彼女は何処から来た。何のために来た。彼女の存在を空と云うか。空にしてはあまりにも清い。
すぎゆく美か。それにしてはあまりにも尊い。
魔力か、魔力か。それにしてはあまりにも強すぎる。
愛しないではあられない。失わないわけにはゆかない。断じてゆかない。
神よ、あわれみ給え。二人の上に幸福を与え給え。
神よ、私を彼女に逢わし、かくまでも深く恋させてくださった神よ、彼女を私から奪いはなさりますまいね。それはあまりにも残酷です。


そして、最後の大宮からの手紙もエグいんですが、それは読んでのお楽しみということで割愛しましょう。

とにかく昔の小説ですが今読んでも普通にサクッと読めるので、お薦めです。
まぁ内容ほとんど全部書いちゃってますが・・・笑






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