ケーキの切れない非行少年たち

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もう読まれている方も多いと思いますが、この「ケーキの切れない非行少年たち」という本は、児童精神科医である宮口幸治先生が、多くの非行少年たちと出会う中で、「反省以前の子ども」が沢山いるという事実に気づいていくという話になります。

公立精神科病院で児童精神科医として勤めていた宮口先生が医療少年院に勤務することになり、非行少年と出会って現場で感じたことをまるまま書いているので、とてもリアルな内容になっています。学校で「手がかかる」というレベルではなく、この医療少年院にいる少年の非行タイプは、窃盗・強盗・暴行・傷害・強制猥褻・放火・殺人などの犯罪を行った少年たちの話になります。

そのような子どもたちの特徴は、簡単な足し算や掛け算ができない、漢字が読めない、簡単な図形が写せない、短い文章すら復唱できない。

見る力、聞く力、見えないものを想像する力がとても弱く、勉強することが苦手というだけでなく、話を聞き間違えたり、周りの状況が読めなく対人関係が上手くいかなかったり、いじめにあったりしている。そしてそれが非行の原因になっている事実です。

本来は支援されていないといけない障害をもった少年たちが、なぜこのような凶悪な犯罪に手を染めてしまったのか、その問題について宮口先生の立場からいろいろとお話をされています。

ある一つの例では、粗暴な言動が目立つ少年の前にA4の紙を置き、〇をかいて、「ここにケーキがあります。3人で食べるとしたらどうやってきりますか?皆が平等になるように切ってください。」という問題をだすと、4等分にしてしまったり、先に半分に切ってしまい悩んで先に進まなっかり、ベンツのマークのように3等分することができないのです。(上の本の図のように)

このような切り方は小学校低学年の子どもたちや、知的障害をもった子どもたちの中にも時々見られるそうですが、このような切り方をしているのが、凶悪犯罪を起こしている中学生・高校生の年齢の非行少年たちだということです。

この本のすべてをこの場で語ることはできませんが、反省とか、被害者の気持ちを考えるとか、そういうことでは解決しないということです。

支援を必要としている子どもたちはたくさんいて、学校で早い時期にその支援が必要なこどもたちを発見をすること、そして適切な支援をし、生きやすい社会にしていくことは非常に重要だと感じます。

また、現在私は中学や高校の部活動の現場で指導していることが多いのですが、このような支援を必要とする子どもたちが多くなっているように現場感覚で感じています。

オンライン授業が進み、デジタル化が進めば進むほど、子どもの変化に気づける場所は減っていくのだと感じてしまう。オンライン化、デジタル化が進めば進むほど学校の存在意義が問われている昨今。

デジタル化、オンライン化が悪いと言っているわけではないが、バランスが悪い。このバランスがデジタル化、オンライン化に傾きすぎると、人間のバランスが崩れるように思う。アナログを忘れてはいけない。今回はそんなことを考えさせてもらえるような内容でした。

興味のあるかたは是非宮口先生の本を読んでいただければと思います。



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