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花と犬とカウリスマキ

わたしは花と犬と映画がすきだ。

趣味を聞かれた際はそう答える。

基本的にひきこもり体質なので、映画を観ているかアニメを観ているか、漫画や本を読んでいるか、音楽を聴いているか、花を愛でているか、愛犬と散歩しているか、年中そんな感じだ。

小さい頃から映画がすきだった。
祖父の影響で、テレビで流れている昔のモノクロ映画やサイレント映画がすきだった。
BSでひっそりと放送されている、知らない時代の映画を観るのがすきだった。

すきな作品やすきな映画監督を挙げればキリがない。

中でも3人ほど、殊に愛しい映画監督がいるが、そのうちの1人アキ・カウリスマキの映画について、勝手に熱弁させていただきたい。

スクリーンで彼の作品がまた観れたことがうれしくて泣いた

なぜわたしはカウリスマキの映画がすきなのか。

一言でいうと
彼の作る映画は生きとし生けるものすべてにやさしいからである。

いいときも悪いときも、どんな気持ちの時もカウリスマキの映画はやさしくわたしを受け入れてくれる。

フィルムクラブという謎の会を高校の同級生と結成している。(会員は2人)

定期的に最近観た映画について、好き勝手にしゃべるだけの会だ。

はじめはポッドキャストでもやる?(どこに需要があるのかは置いておいて)
とか意気揚々と言っていたのだが

我々は根っからの根暗なので表立った活動はもちろんしておらず、フィルマークスやDMで好き勝手に情報を垂れ流すだけという会だ。

これではもはや会を結成している意味は全くなく、クラブと呼べるものではないので笑ってしまう。

その子が、カウリスマキの映画がだいすきだったのと

わたしがもっとも敬愛する映画監督:小津安二郎

お分かりいただけるだろうか
彼の作品の唯一無二の美しさを

の影響を受けている映画監督という項目に、必ずカウリスマキの名前が記載されていたので、興味が湧き、観たのがはじまりだ。


カウリスマキの作品は、だいたいいつも流れは一緒である。だいたい出ている俳優もお決まりメンバーだし、構図も構成も色もだいたい一緒だ。

↑小津の影響を思いっきり受けている彼なので、すべて納得。

永遠であれ...愛しのマッティ・ペロンパー

カウリスマキの作品には必ず出てくるものがいくつかある。
マッティ・ペロンパー、カティ・オウティネン、労働者、敗者、花、犬、ヘアコーム、一張羅のジャケット、珈琲、酒、チンピラ、ジュークボックスから流れる音楽、レコード、廃れたライブハウスやパブ...etc

文字の羅列だけでも、俄然興味が湧くだろう。(ごく一部の人にとっては)


カウリスマキの作品に出てくる主人公は、とにかく不器用だ。

花を持つマッティ・ペロンパー
見るだけで愛しくて泣ける

観ていてお腹を抱えて笑ってしまうほど、不器用で愛しい。そしてやさしい。

このデートシーンは後世に語り継がれるべき

失業しても
どんなにお金が無くても
どんなに孤独でも
チンピラに襲われ大怪我をしていても

必ず

珈琲を飲むし
デートのときには 一輪の花をプレゼントするし
犬にはソーセージをあげるし
どこに行くにも、食卓にも犬が隣に居るし
大切な人と囲む食卓には 花を飾るし

希望を象徴するものとして花や犬が描かれるのだ

ホックニーのような構成
色味が統一された美しい画面
赤、青、黄
カウリスマキの色
いつでも珈琲と花
必ず寄り添ってくれる犬がいる

小さなやさしさで、画面を満たしてくれるカウリスマキの作品が本当にだいすきだ。

結局のところ人間は
少しのやさしさと愛と そこに犬と花が居てくれれば
どうにか生きていけるんじゃないかと思わせてくれる。

彼が作る映画、不器用な主人公が発する冴えない言葉のひとつひとつに救われる人間が、世界の片隅にいるのだ。(ここです)

カウリスマキの愛犬:タハティ
別名:ハンニバル

”人生は前にしか進まない”

"過去のない男"の、このキャッチコピーに何度救われたことだろうか。

引退するする詐欺をしているカウリスマキだが、6年ぶりに映画館で観ることができた作品"枯れ葉"。

デビュー作から一貫して変わらない
彼の視点のやさしさと、揺るぎなく有る希望

映画館でまた観れたことがうれしくて
こんなに真っ直ぐでやさしい映画撮れる人もう2度と出会えない...と思ってわたしはもちろん泣いた。


"過去のない男"に出演している犬は、カウリスマキの愛犬:タハティ。(役名ハンニバル大笑い)

"街のあかり""白い花びら"に出演している犬も、もちろんカウリスマキの愛犬だ。

"ル・アーヴルの靴みがき"に出演している犬は、カウリスマキの愛犬:小さいライカだ。(もちろん大きいライカも過去に居ます)

"枯れ葉"に出演している犬は、カウリスマキの愛犬:チャップリンだ。

どこに行くにも一緒らしい

そう、カウリスマキは9割愛犬を出演させる。そしてその愛犬たちは、3代以上続くカウリスマキの家で生まれ育った子たちなのだ。

愛しい。愛しすぎる。


そして、ここ数年カウリスマキはなにをしているのかと思ったら

自分の住む街:フィンランドのカルッキラに古く廃れた工場を改修し、映画館を作ったらしい。世界一犬にやさしい映画館を謳っているとか。

サウナがあり、珈琲が飲めて、ロビーのカフェのテーブルの上にはいつも花が飾ってある。犬も一緒に入れるらしい...名前は”キノ・ライカ”。愛しすぎるだろう。

カウリスマキのやさしさが溢れた場所だ。

時折カウンターの奥にカウリスマキが居るらしい。ぜったいにいつか訪れたいと思っている。

彼の敬愛するチャップリンの街の灯でも花

花と犬とカウリスマキ。

わたしのすきな映画には、花と犬。

突然炎のごとく
行雲流水嗚呼永遠の節子
いつだって犬がそばに居てくれる

今夏も花と犬を探す映画旅に出る。

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