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ボクは愛に殺される③

【二章】
ある時、ボクが作曲の先生に曲を流して聴いてもらっていた。

ボクは学校でよく思われてないみたいで、みんなとの付き合いを諦めていた。
だけど作曲に関してだけは誰よりもストイックにやろうと思って、いかなる批判も覚悟して、誰よりも曲を先生に聴かせに通った。

運命の出会いってこういうことを言うのかな?
見知らぬ…同性の…先輩?が、曲を流しているのを熱心に見ていた。

それも、何曲も、何十分も、うんうんと頷きながら、だ。
その人、年齢は上だが後輩らしい。
『とてもいい曲を書く』『友達になりたい』ボクはそう言われ、素直に嬉しくて、握手した。

それから毎日のように、
学校で会っては何時間も、音楽の話をした。
彼の感性はずば抜けて繊細で、色んなボクの知らない曲への理解がある。

アドバイスも勿論的確で、彼の言葉を噛み締め、そのたびに作曲への理解や曲作りのレベルは上がっていった。

いつしか二人は親友だと認め合う仲になった。
人生始まって以来の、人間関係構築が下手くそなボクにとっての、本当に初の親友ができた。

音楽の話、学校の同級生の愚痴、恋愛の話、月の話。
多岐にわたる話を、親友とするようになった。

親友は、ボクの精神面の心配を人一倍──ともすると、月以上に──していた。

毎晩のように喧嘩しては腕を切り刻んだり、OD(オーバードーズ、過剰服薬のことだ)をしてしまうボクを、励ましつつ見守っていてくれた。
親友もボクと同じく、ADHDを持っているらしい。

ADHD。注意欠陥多動性障害。
発達障害のひとつで、周りの人間に比べて落ち着きがなく、常にそわそわしてしまったりと集中力が持続せず、
衝動性の高さから思いついたことを後先考えずにやってしまいトラブルに陥る。
しかし好きなことに対する集中力は常軌を逸していて、深く、長時間取り組もうとする。
そのせいで他のことに手が回らず、叱られてしまう。
そんな障害だ。

親友には結婚を考えるほどに真剣に愛し合い続けている年下の恋人がいるらしい。

だからこそ、ボクには幸せになってほしいと、『ずっと一緒に音楽を頑張ろうな』と、声をかけてくれる。

すごく頼もしくて、楽しくて。

月も親友との出会いを聞いて、『いい友達を持ったね』なんて言ってくれるし、正直、月が妬いてしまうくらいには、ボクは親友を大好きなようだ。

月が忙しくて電話に出られない時。
学校の休み時間。
アルバイトがない日の放課後。
たくさんの時間を、親友と共に過ごした。

流石に幸福度合いでいえば、月の隣にいられる時間の方が上だけれども、月が忙しい時でも、親友と話していれば寂しくならない。

そのくらい、大好きで、頼り甲斐のある。
これからもずっと音楽の道を共に歩んでいける、
そう信じていれば頑張れた。

……そう、そう信じていれば。
ずっと音楽の道を歩いていけていたら。

…親友は──

【第二章 完】

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