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ビジコンで気づいた本当の思い。目からウロコだった「社会起業」との出会い

清水愛
夫婦の本音をシェアして助け合うコミュニティ「フタリノ」代表取締役社長
不妊治療の体験をSNSで発信するうち、多くの夫婦が深い悩みを相談できずに悩んでいることを知る。身近な人には話しにくい夫婦やカップルの悩み事を抱え込まず、多様な選択肢に触れることで、ふたりらしい答えを見つけられる社会の実現を目指す。「こたえはふたりの中にある」がモットー。フタリノ公式Instagramのフォロワーは8万人を超える。

ビジコン参加でクリアになった社会問題への意識

ビジネスコンテストでグランプリを受賞

――清水さんの起業のきっかけを教えてください。

清水: もともとは、私自身の不妊治療の経験をSNSで発信したことが始まりです。徐々にフォロワーさんが増え、結婚式のノウハウや夫婦・カップルのお悩みなどのリクエストに応えていくうちに、夫婦に関する深い悩みを相談されるようになりました。

個別のご相談を通して、多くの人が夫婦のことを一人で抱え込んで、誰にも話せず思い悩んでいることが分かりました。専門家でもない私に「話を聞いてもらってスッキリしました」と言ってくださり、深刻な悩みほど安心して話せる場所がないんだと気が付きました。

こうした悩みの本当の原因は、夫婦のことは二人で解決すべきという固定観念だったり、身内のことを外で話すのはみっともないと考える文化なんじゃないかと思えてきて。社会の認識を変えていかないと、この問題は解決しないと考えるようになりました。

夫婦の本音をシェアして助け合うコミュニティ「フタリノ」

――個人ではなく社会全体の問題だと思うようになったんですね。

清水: はい。どうしたら社会の認識を変えられるだろうと、SNSでの発信のほか、有料サービスやオンラインサロンも試してみたり。はじめはほぼボランティアみたいな形で、別の仕事で得た売上をこの事業に回していました。自分だけならそれでもいいんですけど、思いに共感して手伝ってくれる人が増えても、何も返せない。

善意だけで回すのは持続可能ではない。これが必要な人にきちんと届いて、社会の中にあり続けるものにするためにも事業化しないとだめだと思いました。

とはいえ、経営を学んでいたわけではなく、自分の頭で考えていても全然進まない。事業プランを作っては、ビジネスコンテストやアクセラレータープログラムに参加していましたね。通る通らないではなく、事業プランのどこに落とし穴があるのかフィードバックが欲しかったんです。

――ビジネスコンテストではどんな学びがありましたか。

清水: いくつものビジコンに出て、事業プランがブラッシュアップされると同時に、自分の考えもどんどんクリアになっていきました。

私が目指しているのは、今まで表に出てこなかった夫婦の課題が、普通に話されるようになって、多様性が本当に実現したといえる社会だと気づいたんです。

正直事業化することに必死であらゆるビジネスモデルを試していたので、何のためにやるのか目的を見失いそうになったことも一度や二度ではなかったし、目先の売上がほしくて軸がブレそうになったこともありました。

でもこの事業は、市場規模があるから、それが伸びていくから、はじめた事業じゃない。ソロバンをはじいて、仮に10年後に10億円の売り上げになっていたとしても、社会が変わっていなかったら何も嬉しくないなと思ったんです。

目指す社会はどんどんクリアになるのに、現実が追いつかず、どうしたらいいのかもう分からないという状態でした。

まさに目からウロコ。「社会起業」との出会い

――ボーダレスを知ったのはそんな時だったんですね。

清水: SNSで「9割の社会問題はビジネスで解決できる」という本のことが流れてきて、今読むべき本だとすぐに購入しました。私がやろうとしていることが社会問題という種類のものなら、どう解決できるのかを知りたくて一気に読みました。

一番刺さったのが「ソーシャルインパクト」。これまで私がずっと大事に思っていて、でも言語化できていなかったのはこれだったんだとスッキリしました。「社会貢献は儲かってからやりなさい」とたぐっさんが言われてきたというエピソードも、自分に重なりました。

事業をするなら、売上を追って利益を出すのは当然のことです。でも、売上、利益以外の指標である「ソーシャルインパクト」を一番に考えて事業してもいい!という考えがめちゃくちゃ腹落ちしました。すぐにボーダレスのHPから、ボーダレスアカデミーへの申込みと社会起業家へのエントリーを行いました。

――色々な選択肢があったなかで、なぜボーダレスで起業しようと思ったのですか。

清水: 私の場合、社会や文化を変えたいと思っていたけど、これを「社会問題」とはっきり認識していたわけではないんです。でも、社会問題しかやらないボーダレスに入ることで、多くの人がこの問題を知って、社会として早く変えたほうが良いねという追い風になるんじゃないかと思いました。

ここに至るまでに、個人で2年ほどトライしていて、わたしが食べていく分だけなら何とかなったと思います。でも、それがしたい訳じゃない。

こうしている今も夫婦のことで困っている人、悩んでいる人がたくさんいる。早くこれを形にしないといけない。そのために事業を大きくしていく責任があるし、自分の手の中で揉んでる場合ではないっていう感覚が強かったです。

――実際、いかがでしたか。

清水:  「ソーシャルインパクト」を最上段において、そこから絶対にぶれないというのが良かったです。ボーダレスの起業家は、みんなそれをぶらしたくなくてここにいると思うんです。実現したい社会、そこから逃げずにやるっていうのがこの環境の醍醐味かもしれないですね。

あと、思っていた以上にたぐっさんや鈴木さんとの距離が近かったです。いつでも扉が開いていて、困った時や意見が欲しい時にすぐにそこに入れるみたいな感じ。事業のプランニング中は、毎日、たぐっさんに相談の時間をもらっていました。

たぐっさんから「自分のミッションは、起業家が一番想いの乗るポイントで事業のスタートが切れるように支援すること。一番よく知っているのは起業家で、僕の中に答えはない。僕が言うことは、一つの視点と捉えてほしいし、違和感があればはっきり伝えてほしい」とお話しされたのを覚えています。

市場規模やグロースの話は一切聞かれず、解決したいのは「誰のどんな課題なのか」というソーシャルコンセプトを固めること、私の考えを深掘りすることにとことん付き合ってくれました。これまで事業を軌道に乗せられなかったので、自分なりのやり方を否定されても仕方がないなと思っていましたが、たぐっさんも鈴木さんもそれが全くなかった。押し付けられない心地よさがありました。自分のエゴみたいなものが一切ない人なんだって、その時に感じていました。

一人社長だった私が考える、ボーダレスで起業する利点

清水がボーダレスにジョインした際の社長会の様子

――社会起業家にとってボーダレスはどういう環境でしょうか。

清水: 事業の裁量は、一人でやっていた時と全く変わらないです。自分でやることは変わってないんですけど、 心強さが全然違います。ボーダレスの起業家や、スタートアップスタジオやバックアップスタジオのメンバーが、同じ方向を見て応援してくれる。仲間が一気に増えた感じで心強いし、自信につながりました。

40人以上いる起業家同士のつながりも、もっと希薄かと思っていましたが、全然違いました。事業分野は全く異なっていても、変えたい社会問題やお客さまのことを自分の事業かのように捉え、時には厳しいことも伝えてくれる。こんな起業家同士の関係性はほかにないと思います。

一人でやっていた時は、考えるにも限界があったし、悶々とする時間が長かった。でも今は、忖度なく意見や視点をくれる人や、同じ目線で考えてくれる人が、常にそれだけいるというのは、環境としてめちゃくちゃ恵まれてるなと思います。

――ボーダレスはどんな起業家に合うと思いますか?

清水: 自分の枠を超えてでも挑戦したいって、本気で思っている人。やろうと思ってることのスピード感と今の自分とのギャップというのを感じていて、それを埋めてでも実現したいと思っているかどうか。

ボーダレスは起業家がやりたいことに対して、自発的にアクセスすれば、なんでも活用できる環境です。ギャップを埋めようと思った時に、頼れるものがここにはたくさんある。自分の今の力量を超える挑戦をしてでも社会に大きなインパクトを出していくには、 この仕組みはすごくいいと思います。

望めばこれ以上ないほどのサポートを受けられる環境ですが、そこに期待しすぎて受け身になってしまうと逆に何も進まず辛いかもしれないです。

――この先どんな風に事業を進めていきたいですか。

清水: 誰もやったことない分野にこの環境で挑戦できる意味を考えた時に、やっぱり、自分が目指したい社会に対して、率直に、嘘なく、真っ直ぐに向かっていける道を選びたいなと思いました。小さくまとまらず、この環境だからこそできるチャレンジをどんどんしていきたいと思います。

今、チャンスをもらえてることに本当に感謝していて。だからこそ、恩送りする側に早く回りたいです。自分と違うテーマにチャレンジしてる人が、ここにはたくさん集まってくる。自分の事業で得た利益が新たな挑戦をする起業家に回ることで、社会ともっと良くなっていく。そういう集合体であることが面白いですよね。

自分では成しえないテーマに挑戦している、尊敬できる起業家が周りにこんなにたくさんいることが、本当にありがたいです。

転載元:ボーダレスマガジン


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