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起業1週間でまさかの事業変更ホームレス問題でForbes U30選出

ホームレス問題をビジネスで解決する起業家 市川加奈さんは、2022年Forbes主催の『FORBES 30 UNDER 30 ASIA 2022』に選出され、メディアなどにも多数出演。注目が集まる起業家の背景には、多くの困難を乗り越えてきた日々がありました。

路上生活者を初めて見たときのショックが忘れられなかった

―市川さんが取り組むホームレス問題を解決する事業について教えてください。

Relightが運営するホームレス問題解決のための事業は2つあります。

1つは、住居や携帯電話がなくても応募可能な寮付きの仕事を紹介する「いえとしごと」。もう1つは、身分証がなくて家を借りられない人向けに個室の物件を紹介する「コシツ」という事業です。

累計で「いえとしごと」から就職した方は572名、「コシツ」の入居者の方は23名います。いずれもホームレス状態にあった人が、仕事と住居を得て生活を立て直し、不安定な生活から抜け出せるようサポートしています。

―なぜホームレス問題を解決するために起業しようと思ったんですか?

子どもの頃からおじいちゃんおばあちゃんが大好きで、介護の仕事に興味がありました。

高校進学を機に少し都会に出てきて、初めて見た路上生活者の姿に驚きました。おじいちゃんおばあちゃんが寒空の下、外で寝ているのに誰も声をかけない。「何だろうこれは・・・」と衝撃を受けました。

その体験から、進学して貧困問題を学ぶことに。学生時代は、ホームレス支援のボランティアに参加し、炊き出しや声掛けの活動をしていました。

ボーダレスを知ったきっかけはサークルのイベントでした。自分が解決したい社会問題に対して、まっすぐに事業を創れる点に惹かれたんです。

当時からボーダレスは様々な領域で事業を展開していて「ここなら、ホームレス問題にも取り組めそう!」と思い、エントリーしました。

ボーダレスの面接では、私の生い立ちから取り組みたい社会問題まで話していたら、なんと3時間以上経っていました(笑)

周りには社会問題に興味をもつ人がいなかったので、自分のやりたいことを素直に語れて、それを応援してくれるボーダレスに衝撃を受け「ここだ!」と確信しました。

ホームレスの就労のアイデアとして農業を学んでいた時

事業開始後、1週間でプランを変更。コロナの影響で問い合わせが増加

―ビジネスを軌道に乗せるまでにどんな壁がありましたか?

プランニングでは、正解がない中で正解を見つけようとずっと模索しているのが一番しんどかったですね。

ネットカフェの前で当事者になりそうな人に声をかけて「こんな事業を考えているんですけど、どうですか?」とヒアリングしました。

相手にされなかったり、ひどいことを言われたり…。「この事業って本当に必要とされているんだろうか…」と、とても悩みました。

何とかプランを完成させ事業をスタートしたのも束の間、事件が起こりました。Relightが企業から請け負った仕事を相談者さんに取り組んでもらう事業モデルを考えていたのですが、急に企業からキャンセルされてしまって…。

すでに相談者さんもいらっしゃったので、苦労して作ったプランを1週間で変更。相談者さんに寮付きの職場を紹介して、企業から人材紹介料をいただく事業モデルに切り替えました。

―すごいトラブルに見舞われたんですね…。モデルを変更してからは、スムーズに事業を進めることができたんですか?

何もない状態から相談者と企業をマッチングさせていくのが大変でしたね。最初は、相談に来てくれる人を全員助けたいという気持ちの方が強く、福祉的なマインドになっていました。

相談者の元まで行って数日分の生活費を渡して「明日ここで待ち合わせね」と約束したのに、すっぽかされたことも。食事代や宿泊費など10万円ほどかかったのに、結果的に騙された形になってショックでしたね。

日本には相談できる行政や支援してくれるNPOもたくさんあります。わざわざ会社を立ち上げてビジネスでそれをやるのか?と考えたときに「やりすぎていたな」と反省しました。

困っている人全員を助けようだなんておこがましい、まずは本気で働きたい人を優先してサポートしていくと決めました。ようやく対象者がクリアになったわけです。

それから、コロナ禍という世間の状況も重なり多くの問い合わせがありました。

ー様々な相談者の方がいらっしゃる中で、大変なこともあると思います。それでも事業を続けられるのはなぜでしょうか?

相談者さんに刃物をちらつかせられたり、闇金から電話がかかってきたり。難しい人に困ることも多々ありますが、心のどこかで面白いと思っているんですよね。

私は、使命感をもって社会問題に取り組むよりも、みんなで楽しくやっていきたいタイプなんです。

相談者さんのハチャメチャなところや感情的なところに触れると「なんでそうなるんだろう?」と興味が湧くんです。いろいろな人がいて面白い、楽しいから続けられるのかなと思います。

相談者さんが身分証を取得できて、職場に居場所があると思えたり、仕事に誇りがもてたり。困っている状況から、先のことが考えられるようになった姿を見ると、事業をやって良かったなと感じますね。

相談者さんの就職サポートを行う市川さん

必要なのは、ポジティブな勘違い。売上や利益より大切なもの

―社会起業家に必要なものって何だと思いますか?

「自分なら絶対にできる」と勘違いし続けられる力だと思います。できるって思えないと、なかなか前に進めないんですよ。思ったようにできなくても、そのうちできると思ってやりきることが大切だと思います。

つらくても続けられるのは、「できる!」という勘違いに「絶対やりたい!」という気持ちが合わさって、ポジティブに進んでいけるからだと思います。

ーボーダレスの一員として起業してよかったことは何ですか?

時々出資のお話を頂くことがあります。株式会社のため当然ですが、売上や利益に関するお話がほとんどです。一方で、社会にもたらすインパクトについてはあまり議論になりません。

ボーダレスではその問題に取り組む理由や、当事者にもたらされる変化といった議論が一番になされます。そのうえで事業の黒字化や成長について考えていけるのが、とてもいいと思っています。

それと、何者でもない人がチャレンジできるところも良さだと思います。「どこの会社で、何をやってきた人です」といった経歴や肩書ではなく、ボーダレスではその人の本質を大切にしています。

「社会を良くしたい」という志をもって行動してきたか、自分のためではなく、みんなのために行動できる人か、そんなマインドが備わっている人なら誰でもチャレンジできるのがボーダレスの良さですね。

何度でもやり直せる社会をつくるために、プランニングし続ける

ー今後のビジョンについて教えてください。

今は、ホームレス状態にある人に家と仕事を紹介していますが、仕事が難しかったり、やりたいと思える仕事がなく離脱してしまう人がいることも事実です。

生活インフラを整えて、いろいろな形で生きていくことをもっと応援していきたいです。

事業を始めて4年ほど経ちますが、まだまだ社会問題に対して今のサービスで十分だという実感はもてていません。

メディアで取り上げられたり、評価していただくこともありますが、自分の中ではまだ腑に落ちていない部分もたくさんあります。

日々自問自答しながら事業を進めつつ、本質的な解決につながる方法について考えています。ずっとプランニングを続けているという感じですね。

ープランニングし続けた先に、どんな社会を創っていきたいですか?

誰も孤立せず、何度でもやり直せる社会をつくりたいです。仕事や家を失ったときに、生きるか死ぬかという選択肢ではなくて、どう生きていくか前向きに考えられるようにしたいんです。

人生はやり直しが効かないと思うと追い詰められてしまう。だから、誰でもどんな時でも一から人生を始められる、やり直せる、そう思える仕組みを社会実装していきたいと思います。

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