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起業の苦難を越え、子どもが自分と世界を好きになれる社会をつくる

現在、不登校の子どもの数は約24万人。発達障害などさまざまな理由で、学校が合わない子どもが増えています。

「こうあるべき」といった社会の風潮など問題の本質的な課題に気づき、生きづらさを感じる子どもに希望を生み出す起業家 辻田寛明さんの思いを聞きました。

本質的な幸せとは何か、問い続けた先に見つけたもの

-辻田さんが運営する「夢中教室」について教えてください。

夢中教室は、不登校専門のオンライン家庭教師事業で、現在約200名の生徒さんが在籍しています。5教科の学習ではなく、心からやりたいと思えることを見つけ、オーダーメイドの授業をしています。

学校以外の居場所が見つからず、生きづらさを感じる子どもたちが、「好き」を見つけ深めていくことで「自分の物差し」をもつお手伝いをしています。

―「自分の物差し」の大切さには、どのような経験から気付いたんですか?

「本質的な幸せ」について考えたいと思い、大学院で貧困の研究を行いました。

インドネシアのスラム街で、ある女性に「今の生活、大変じゃないですか?」と尋ねると、「大変だけど、大好きな家族と一緒に過ごせて、明日を迎えられる。これ以上、幸せなことはないと思わない?」という答えが返ってきて衝撃を受けたんです。

しかし、日本では多くの人が生きづらさを感じています。僕の友達は、子どもの頃から勉強を頑張ってきて、学力が高い人が多いんです。だけど、彼らが働く姿は全く楽しくなさそうで、働く目的を見失い精神的に参っている人もいました。

日本には、「他人から与えられた物差し」がたくさんあるけれど、インドネシアにはそれがない。他人の物差しに合わせて生きるうちに、自分の物差しが分からなくなることが問題だと思ったんです。

本質的な幸せとは、経済的な豊かさではなく、身近にある幸せを享受できることや自分の物差しで生きられることだと気づきました。

インドネシアの大学にいたとき

―辻田さん自身も、「自分の物差し」が分からなくなる経験があったんですか?

実は、僕自身はそういった経験がなくて。両親は「好きなことは何でもやればいいよ」と言ってくれたんです。さらに、幼稚園の頃からお世話になっている美容師さんは、海外を飛び回った経験があり、面白い本や世界の話をしていつも僕をワクワクさせてくれました。

自分をありのままに受け止め、やりたいことを応援してくれる人がいれば、誰でも人生にワクワクできる。そのためには、「好き」を応援し「自分の物差し」を作る手助けをする大人が必要。そんな仮説から事業に取り組むことにしました。

―ボーダレスと出会ったきっかけは何だったんですか?

たぐっさん(代表 田口)の講演を大学で聞いた時に一目惚れしたんです。ボーダレスには、社会問題解決にまっすぐな人たちが集まり、社会起業家を生み出すエコシステムがあるという話を聴いて「めちゃくちゃ素敵じゃん!」と思ったんです。

「社会起業」という言葉を少し前に知って「起業も面白そうだけど、ビジネスの経験もないし今すぐには難しいかも」と思っていたときだったので、自分の思いとガチっとはまった感じがしましたね。

誰のためにやるのか見えず苦しんだ日々。一人目の生徒との出会いで確信がもてた

―ビジネスを軌道に乗せるまでにどんな壁がありましたか?

起業したばかりの頃は、対象を不登校の子どもに絞っておらず、子どもが通える教室を作ろうと考えていました。しかし、コロナ禍だったこともあり、教室探しが難航。プログラムの構想を頭の中でぐるぐると考える日々が続きました。

そのとき、たぐっさん(代表 田口)から「プログラム内容を検証するためにも、 まずは一対一の家庭教師のような形でもいいから経験を積んでいくことが大事だよ」とアドバイスをもらいました。

ハッとさせられましたね。「このプログラムで本当にいいのか」「発達障害についてもっと理解しておかないといけないんじゃないか」といった不安な気持ちから動かないことへの言い訳をしていたんです。今だったら「とにかく動かなきゃ分からない!」って思えるんですけど。

それからも、チラシを何千枚と配っても反応がなかったり、目の前でチラシを捨てられたり・・・「本当にこれでいいのか」と悩むことだらけでしたね。

―そういった課題をどうやって乗り越えていったんですか?

一人目の生徒さんとの出会いが、決定的な出来事でした。その子は発達障害と診断され、人とのコミュニケーションが苦手でした。でも、2の30乗まで全部言えるほど数字に関してすごい才能をもっていたんです。

でも、その子が「僕は学校に行けないからダメだと思う」と話すのを聞いて、こんな素敵な才能があるのに自分を否定する必要なんて絶対にない!と思ったんです。

保護者の方は、「外の居場所がなくなり、人との出会いがなくなってしまった。だから、 辻田先生と出会えて本当に嬉しい」と涙ながらにお話しされました。

その時に、自己肯定感の低さで苦しんでいる子の中でも、不登校の子どもに絞って、その子たち全員に届ける勢いでやれば事業として十分にやっていけるはずだと思ったんです。

不登校の子どもへのオンライン授業

ー夢中教室を運営するなかで、社会問題の解決につながっていると実感することはありますか?

じつは、「好き」を見つけることと同じくらい、信頼できる大人と出会えることも大切だと思っています。伴走先生と呼んでいる夢中教室の先生たちは、子どものことを絶対否定しないマインドや傾聴力、観察力をもっています。伴走先生たちと一緒に、子どもの自己肯定感を温める夢中教室のメソッドを作り上げてきました。

ある生徒さんは、夢中教室を通して海外に行きたいという思いが芽生えたそうです。そして、留学制度がある通信制高校を自分で選び、今年の春から学校に通うようになりました。

少しずつ自信を取り戻したり、外の世界に出るきっかけが作れたり。そんな生徒さんを見ていると、「子どもの自己肯定感」の問題の解決に少しはつながっているのかなと感じますね。

ーボーダレスの一員として起業して良かったことは何ですか?

いろんな事業モデルやフェーズの多様な起業家たちがいて、いつでも助け合える環境は貴重ですね。個人で起業していたら、他の企業で起きている課題を知る機会って少ないと思います。でも、ボーダレスでは起業家がぶつかる壁や自分では思いつかないアイデアなど、経験のシェアやフィードバックをしあうことで、共に支え合い高め合っています。

また、同世代の起業家と飲みに行くと「もっと社会を変えていきたい!」「若い世代からボーダレスを盛り上げたい!」という話になります。そのために自分がどう成長するか、どういうことを仲間や社会にギブしていくかみたいな、ちょっと青臭く感じることも自然と話せる関係性が居心地いいですね。

子どもたちへの選択肢を増やし、一人ひとりが自分と世界を好きになれる社会へ

ー日本の教育をビジネスで変えていく可能性についてどのように考えていますか?

選択肢を作ることが大事だと思っています。日本でも多様性が認められ始めていて、文科省は学校外の施設で相談・指導を受けた日を出席扱いにすると定めています。

大人の社会でも、選択肢の多様性を切り開いてきたのは、新しい働き方に積極的に取り組んできた企業の存在だと思うんです。教育においても、民間だからできることが絶対にあります。

夢中教室の生徒さんが千人、二千人と増えていった時、培ってきたノウハウを義務教育全体に還元していくことで、子どもたちへの選択肢を増やしていきたいです。

―最後に今後の展望やこれから目指していきたい社会についてお聞きしたいです。

さまざまな理由から、いわゆるマジョリティといわれる生き方が難しい人たちがいます。どんな背景があっても、一人ひとりが当たり前に幸せに向かっていける社会を創りたいと僕は思っています。

そんな思いを「自分と世界が好きになれる出会いと伴走を」というパーパスに込めました。数字でも、推しでも、何でもいいから世界の一か所だけでも好きになれたら、それが希望になり生きている面白さに変わると思います。

ゆくゆくは不登校の子だけじゃなくて、病気や障害で外出が難しい子や 性的マイノリティの子、日本語が不得意な外国籍の子など、さまざまな生きづらさを感じる子たちにも届けていきたいですね。

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