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国際女性デーに発売!希望のシアバターでつくる「レザーケアクリーム」誕生秘話

ビジネスレザーファクトリーは、「国際女性デー」である3月8日(金)にオリジナルレザーケア商品「シアバターレザーケアクリーム」を発売します。

商品開発を手掛けたのは、ブルキナファソの女性に雇用を作るアフリカシアバターと日本最古の靴クリームメーカー ライオン靴クリーム本舗。

プロジェクトを推進したフェローの原口瑛子さん、齊藤誠之さん、下永幸正さんと株式会社谷口化学工業所の河井 悠さんに話を聞きました。

本取り組みは、「コレクティブインパクト※」の一環です。

※企業や行政、NPO、市民などが協力し、社会問題に取り組むことで生まれる成果のことを指す。世界13ヵ国51の社会問題に取り組む、ボーダレス・カンパニオでは、さまざまなコレクティブインパクトが生まれています。

<話を聞いた人>
原口 瑛子氏
ボーダレス・ブルキナファソ株式会社   代表
熊本県生まれ。高校時代に「ハゲワシと少女」の写真を見て「世界の貧困をなくす」という志を持つ。早稲田大学卒業後、サセックス大学開発学研究所にて貧困と開発修士課程を修了。2010年JICAに入構、国際機関との連携事業や中南米地域の円借款事業などを担当。2015年ボーダレス・ジャパンにジョイン、2017年ビジネスレザーファクトリー(株)代表取締役社長に就任。2022年、現代表の齊藤に継承。西アフリカのブルキナファソに渡り、テロの影響を受けた女性たちの雇用創出事業に取り組んでいる。

齊藤 誠之氏
ビジネスレザーファクトリー 事業代表

埼玉県生まれ。高校卒業後、音楽活動を経て小売業界へ。お客様を笑顔にできる小売業の魅力にやりがいを感じアパレル企業へ入社。実務に追われる毎日に心を病んでいき、鬱を患い退職から3年間のニート生活を経験。「はたらく」ことが人の人生において大きな意味を持つことを経験し、同じように悩んだり迷ったりしている一人でも多くの人の力になりたいと思い、2019年ビジネスレザーファクトリーに入社。東京駅八重洲店の店長を努め、2022年新事業の立ち上げに取り組む前代表の原口より継承し、ビジネスレザーファクトリー事業代表に就任。

下永幸正氏
ビジネスレザーファクトリー 店長

広島県生まれ。高校在学中から小売業界へ。おしゃれが好きでアパレル企業へ入社。店舗の閉店や生活が安定しない日々で好きなアパレルを辞め、他業種を経験。そんな中で「自分が働くことで社会の役に立つことはできないのか?」と考え、2017年ビジネスレザーファクトリーに入社。「すべての「はたらく」にエールを送る」という価値観に共感し、店長を務める。

河井 悠 氏
株式会社谷口化学工業所(ライオン靴クリーム本舗)
 
北海道生まれ。小学生から大学時までサッカー部に在籍。大学卒業後は医療機器の営業に4年間従事。海外生活に興味を持つようになり、オーストラリアに約1年間生活。オーストラリアの語学学校で現在の弊社代表の谷口と出会い、帰国後外資系企業で働いたのち、2018年谷口化学工業所に入社。入社後はレザーケア製品の原料について勉強をし、OEMをはじめ新製品開発にも携わる。休日の娘と過ごす時間をモチベーションに、今も日々仕事に勤しむ。


きっかけは好奇心、レザーケア製品をつくることになった理由

ー アフリカシアバターを使ったレザーケア製品を作ることになった背景を教えてください。

下永:原口さんは、ビジネスレザーファクトリー(以下、ビジレザ)での代表を経て2022年の12月にボーダレス・ブルキナファソを設立されました。大好きなブルキナファソで女性の雇用を生み出すためシアバターの原料会社をつくった熱い想いを知っていたので、クラウドファンディングの挑戦を僕も応援しました。

リターンで届いたのは、もちろんアフリカシアバター。缶を開けると、いつも革製品のケアに使用しているクリームとそっくりで驚きました。

人肌にも使えるほど優しい商品なら、きっと革に塗っても大丈夫だろうとの好奇心から、私物の革製品にちょっと塗ってみたのがプロジェクトが始まるきっかけです。

ブルキナファソの女性たちと原口さん

原口:リターンを受け取った下永から「シアバターのクリームを革に塗ってみたら、とてもよかったです!」と連絡がきたんです。

前提としてアフリカシアバターは、ブルキナファソのテロの影響を受けた女性たちの雇用を創出するために、2023年1月から事業を開始しました。現在は、シアバターの仕入れ、製造、販売(BtoB)を行っており、主に化粧品メーカー様を中心にお取引しています。5Kgのシアバターが販売できれば、1人の女性が1ヶ月暮らせるのですが、より多くの雇用を生み出すために、シアバターを化粧品以外に活用できる可能性も模索していたところでもありました。

ビジレザが革製品を扱うブランドとしてオリジナルのレザーケア製品を提案できれば、きっとお客様にも喜んでいただけるのではないかと考え、現代表の齊藤に連絡し、下永と一緒にプロジェクトをスタートすることにしました。ビジレザに提案するので、「最高のプロダクトを作ろう」と心に決めていました。

ようやく見つけたパートナー、原口のオーダーは「できる限り多くのシアバターを使う」

ープロジェクトはどのように進んでいったのでしょうか?

原口:良い商品を作ろうと動き出したものの、製造に協力してくれる企業が全く見つかりませんでした。おそらく、日本全国ほとんどの企業様に掛け合ったと思います。諦めかけたその時に、お返事をいただけたのが日本最古の靴クリームメーカー「ライオン靴クリーム本舗」の河井さんでした。

河井:ちょうど、弊社がOEMに力を入れていきたいタイミングだったことと自然成分を使ったOEM製造の実績があったため、一度お話を伺うことにしました。

通常の商談では、まずはじめに製造における希望価格を提示されるのですが、原口さんのオーダーは異なりました。「ブルキナファソの女性の雇用を一人でも多く生み出すために、できるだけたくさんのシアバターを使用したい」ということでした。

原口さんとオンラインでお話して、事業の背景にある社会問題や自分たちの思いを丁寧にお話しいただき、とてもパッションのある方だと感じ、プロジェクトに参画することを決めました。この時は、今回の商品開発が予想以上に難航するとは誰も思ってもいませんでしたね(笑)。

ライオン靴クリーム本舗

80回以上の試作を繰り返し、ようやくできた奇跡のクリーム

ー具体的にどのような課題があったのでしょうか?

原口:一般的なレザーケア製品は、製品の形状が安定しやすい石油系オイルを使用していることが多いのですが、今回私からの依頼は自然由来のシアバターをできるだけ多く使って欲しいというものでした。他のソーシャルビジネスも同じだと思いますが、ものづくりとしての高い品質を実現しながら、社会に対するインパクトを最大化していく、その両方を追いかけていく難しいプロジェクトでもありました。

河井:私の役割は、原口さんや下永さんの想いを汲み取って職人たちとコミュニケーションをとることでした。通常シアバターの配合量は10%以下なのですが、今回は50%以上の配合に挑戦していました。何度も試作を繰り返していく中で、2種類のうち1つの商品は形状の安定性に大きな課題がありました。自然由来の原料は癖が強く、配合を少し変えるだけで状態が大きく変化してしまうのです。その時は良くても、1週間後に変わってしまうケースも多々ありました。

下永:原口さんはアフリカにいらっしゃることもあり現物確認ができないので、僕が働いていたビジレザの店舗に試作品を送っていただいていました。形状が安定しないシアバターが何十個と届き、配合率の答えが見つからないもどかしさを感じつつ、自分でも原材料をつくってテストを繰り返していました。

僕の場合、商品を形にしたい気持ちが人一倍強かったんです。それは、既製のレザーケアクリームを触ると手荒れが起こってしまう知人の存在でした。彼女のためにもなんとかして自然由来のレザーケアクリームを完成させたいと思っていました。

河井:80回以上の試作をしても、なかなか商品は完成せず・・・。繁忙期に差し掛かってしまったこともあり、自ら夜な夜な配合率をノートに書き出していました。最終的には、頭で考えすぎず培ってきた感覚で配合したところ、形状が安定する理想の商品が完成しました。これは、本当に奇跡的でした。

下永:その頃、原口さんの一時帰国のタイミングに合わせて、僕も一緒に工場に訪問する予定を組んでいました。道中、2人で「当初の予定よりかなり長期戦になっているので、今日で断られるのではないか」と不安な気持ちを抱えながら、足を運んだのを覚えています。

到着すると、河井さんが開口一番「できました!」とおっしゃって、正直理解が追いつきませんでした。しかし、実物を見た瞬間、「これだ!」と感動しました。

原口:最後まで諦めずに力を貸してくださったことが本当に嬉しかったですね。

工場を訪れるのは、その時が2回目だったのですが、職人の方々の働く姿や元気に挨拶をしてくださる出荷の方々の姿を見て、「谷口化学工業所の皆さんと一緒にできて本当に良かった」と心から思いました。温故知新というか、高い技術だけでなく、新しいことに柔軟に挑戦される企業だと感じました。

工場を出た後は、下永とスカイツリーを見ながら嬉しくてハイタッチしましたね。

原口さんと共にライオン靴クリームの工場を訪れた下永さん

「誰かのためになりたい」ビジレザメンバーの強い想い

ーおしゃれなパッケージに仕上がったと伺っていますが、デザイン等はどのように進めていったのでしょうか?

齋藤:完成した製品の商品名やパッケージデザインは、ビジレザの方で決めていきました。「ビジレザのプロダクトだからビジレザで決めて欲しい」と原口さんに言っていただいたこともあり、創業期からビジレザに在籍しており店舗設計なども担当した加藤に託しました。

原口:一時帰国中の限られた時間の中で、加藤と出張先が同じだったので移動時間を合わせて新幹線の中でミーティングをしました。パッケージデザインは、たくさん議論したというより、二人ともビジレザの店舗やお客様のイメージしながら、割とすぐに決まりました。チョコレートのカカオのパーセンテージからインスパイアされていて、ビジレザのブランドに合うデザインに仕上がり、素敵だと思います。

完成したシアバターレザーケアクリーム


齋藤:新商品の販売にあたり、事前にメンバーへの商品説明会も開催しました。みんな熱心に耳を傾けていて、すごく誇らしく感じましたね。

原口:説明会のときに「この商品を1つ販売すると、どれだけのソーシャルインパクトに繋がるんですか?」という質問をもらった時には、最高の仲間に支えられているなと心から思いました。「この商品について、これから熱く語っていきたいと思います。」と話してくれるメンバーもいて、普段からバングラデシュのことをイメージしながらお客様に提案している様子が伝わってきました。

齋藤:接客のプロとしてどうやったらお客様に喜んでもらえるかを第一に考えているメンバーが本当に多いです。ビジレザは、「誰かのためになりたい」という思いをもった仲間のおかげで新しいことに挑戦し続けられています。

全ての働く人を応援するブランドだからこそ、「ケア」する時間を楽しんでもらいたい

ビジネスレザーファクトリー名古屋店の様子

ー最後に、プロジェクトを振り返って今の気持ちを教えてください。

河井:難しいチャレンジではあったものの、たくさんの学びと発見があり、今回のご依頼を受けて良かったと思っています。弊社が培ってきた技術が社会問題を解決するために貢献できたことを嬉しく思います。自分自身としても、会社としても大きな成長のきっかけになりました。

「シアバターレザーケアクリーム」を通して、多くのお客様に「ケア」することで実感できる艶や長持ちする感覚を味わってもらいたいです。革製品を長く大切に使う人が増えることが私の願いです。発売されてからが本番でもあるので、お客様の声をいただきながら今後も改善に努めていきたいです。

下永:ようやく、安心で安全なレザーケアクリームを完成させることができました。一番届けたかった人に早速使ってもらったのですが、クリームを塗布して磨くと手の痒みが軽減されるとのコメントをいただきました。一番お客様の近くにいる自分だからこそ、お客様ファーストでこれからも仕事に向き合っていきたいと思います。

齊藤
今回のプロジェクトは、人々の利他の心が集まったからこそできたプロダクトだと思っています。最後まで諦めなかった一人ひとりの思いが結実し、最高の商品が仕上がりました。これからは、自信をもってお客様のもとに届けていきます。

レザーケアクリームでお手入れする時間を通して、お客様が「また明日から頑張ろう」という前向きな気持ちになっていただけると嬉しいです。

原口:今回のプロジェクトで「レザーケアが植物性オイルのシアバターで作れる」という新しい選択肢を示せたことは、業界の変革の一歩に繋がるのではないかと思っています。大量生産・大量消費の時代において、ものを長く使う価値観や、その原料がサステナブルであることを、多くの人たちに伝わるといいなと考えています。

今回、ブルキナファソの仲間が作ったシアバターが、ライオン靴クリーム本舗さんの工場の人たちの手で素晴らしいプロダクトになり、ビジレザを通して、日本の働く人々の日々を応援していくという一連の流れがとても美しいと感じています。

人々の想いが重なり、奇跡のような最高のインパクトが生まれる。コレクティブインパクトとは、まさにこういうことだと身をもって感じました。

本当にありがとうございました。


シアバターレザーケアクリームは、各店舗で購入いただけます。

プレスリリースはこちらをご覧ください。

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Text: Kumi Sakata
Edit: Mikiko Mine


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