新興宗教とはなんだろうか

僕は宗教学を学んだこともないし、宗教史の本をたくさん読んだわけでもないので、あくまで思い付きにすぎない駄文なのですが、新興宗教とはなんなのかについて、書いてみました。

伝統宗教と対置される形で、比較的新しく発生したものを新興宗教(新宗教)と呼んでいますが、その境界はどこなのか、なにが違うのだろうか、というのが、今回のお話です。
Wikipediaなんかでは「日本では、幕末・明治維新による近代化以後から近年(明治以降)にかけて創始された比較的新しい宗教」と書かれていますが、なぜ幕末・明治維新が境界になっているのか、外国でも同じ定義が当てはまるのか、という疑問が生まれます。

僕の答えを先に言うと、新興宗教とは「近代国家(国民国家)の共同体概念が民衆に根付いた後に生まれた宗教」であろうと思います。
そのため、日本においては幕末・明治維新が境界になるのです。

ヨーロッパでは、フランス革命(1789年)以来「国民」という共同体意識を核にした「近代国家」(国民国家)が生まれていきます。
日本では、黒船の来航などで「他者・他国」を意識せざるを得なくなった結果、国民国家を形作る「国民意識」が幕末(1850年頃以降)に生まれます。そして明治維新による近代国家の建設が始まるわけです。
こうした「アイデンティティ危機」の中で新しく興った宗教・宗派が、現在「新興宗教」と定義される宗教群の嚆矢である、ということだと思います。

それ以前の伝統宗教は、集落とかいった世俗の共同体とは異なる、より大きく精神的な(聖的な)「想像の共同体」として機能していました。そうした宗教は時として権力者の庇護を受け、支配や統治に使われたり、逆に権力に抵抗する庶民に結束力を与えたりもしていますが、社会に適応して生き延びたものが残っていきました。
しかし、そうした伝統宗教が担っていた「想像の共同体」機能は、近代においては概ね「国民国家」に取って代わられました。

とすれば、国民国家が成立した後に勃興した宗教には、なにかしら「国民国家」との緊張関係が孕まれていることは、ある程度の必然性を持つように思われます。
国民国家というのは、近代的な人権思想や国民主権の概念に基づいていますから、それらと相反する宗教が人々を惹き付けるとしたら、それはいわゆる「カルト」です。
(ここでは、教義や活動に人権を侵害する要素が強い宗教を「カルト」と呼んでいます)
もちろん新興宗教だから「カルト」だとは限りませんし、「カルト」であることは新興宗教を定義しませんが、新興宗教が問題になりやすい背景として、近代国家の基本理念との緊張関係に留意すべきだろうと思い、このエントリを書きました。

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