形も方法も違っても、ただ真っ直ぐに人を想うって…〜映画『サイレントラブ』〜
バリアフリー字幕のモニターでご縁をいただいていた作品。
ストーリーも結末も知っているけど、やっぱり劇場で観たくて、行ってきました!
映画『サイレントラブ』公式サイト
https://gaga.ne.jp/silentlove/
もちろんチャンプも一緒。(上映中、彼は昼寝)
いつもは字幕メガネとして、EpsonのMoverioを使っていましたが、今回初めてXREALを使いました。
そちらのレポはまた後日。
サイレントはサイレントでも
「サイレント」と言えば一昨年、一大ブームを巻き起こしたテレビドラマ「silent」が記憶に新しいところ。
今回、ヒロインの浜辺美波ちゃんが視覚障害ってことなので、山田涼介くんが聞こえない役?
聞こえない男性と見えない女性のラブストーリー?
って、山Pの『SEE HEAR LOVE』の男女逆バージョン??って思ってたのですが、、、。
『SEE HEAR LOVE』のレビューはこちら。
山田涼介くん演じる蒼は、言葉は発しないけれど、同僚(古田新太さん)のスマホの音楽が聞こえるように直してあげたり、ガムランボールをシャランと鳴らして聞いたりしてるシーンで、耳は聞こえるってことが初めの方ですぐに伝わります。
「なんでしゃべれないのかな?
「そもそも、しゃべれない?しゃべらない?どっち??」
でも、正直、映画が始まると、聴こえるとか、聞こえないということなんかより、「彼の暗く、全てを諦めたような表情が衝撃的すぎて、なんでこんな顔してるの??」って、そっちの方が気になってしまって、、。
俳優さんの振り幅
だって、私の中での「山田涼介」は、ドラマ『王様に捧ぐ薬指』のキング東郷だし
「よにのちゃんねる(旧ジャにのちゃんねる)」で「一粒万倍日」を「ひとつぶ万倍日」って言っちゃう天然山ちゃんだから。
なのに、、
この映画では、最初の屋上のシーンから目が死んでる彼の表情に引きずり込まれました。
また、浜辺美波さんの、ちょっと高飛車な、でも自分の置かれた立場の突然の変化に戸惑い、受け入れられない美夏の姿にもグッときました。
普段はなんとなく、ちょっと1テンポ遅れた、ゆるーい柔らかーい印象なのに。
俳優さんってすごいね。
違和感を超えて引きずられて
まぁ、見えなくなって、こんなにすぐに1人で外出できてるとか、一人暮らしできてるとか、綺麗にメイクできてるとか、ちょっとツッコミたいところはありましたが。(婆がお世話してくれてるとしても、美しすぎる!(笑))
でも、学校内の交差点?のシーンはリアルでした。
先生から「夢を諦める」道を示され、それを断って1人でズンズン歩く美夏。
それは「自分は変わってない」という美夏の意思表示。
でも、他の人と肩がちょっとぶつかって体の向きが少し変わってしまっただけで、体がどちらを向いているか、分からなくなり立ち往生してしまう。
これって、実は視覚障害者あるある、なんだそう。
白杖が触れる路面や聞こえてくる音、顔に当たる日差し、漂ってくる香りや、そういう情報を頼りに歩いているから、突然、体の向きが勝手に変えられてしまうと、どちらに進んだら良いのか、分からなくなってしまうということが起きるとのこと。
駅のホームでの転落事故とかも、そういう理由で起きてしまうこともあるくらい、体の向きって見えない人にとってとても大事なことだそうです(見えない人を勝手に引っ張ったり、盲導犬を呼んだりしないでね、というのはそういう理由)
「見ること」を頼りにしている聞こえない私が、カーテンや仕切りで視界を遮られると寝ることができなくなってしまうのも、同じようなこと。
見えて聞こえるのが当たり前の人は、たとえ歩きスマホで画面だけを見て歩いているようでも、実は、耳から入る音や目の端に映るもので、周りの状況を把握して歩いているはずなのですが、多分皆さん意識してないでしょうね。
その真っ暗闇で、手探りするような不安な気持ちを、見えない美夏の頼りである「音」も消してしまうことで強調し、そこに聞こえてくるガムランボールの音、、「変わってない」と肩を怒らせていたのに、一気に奈落の底に落とされたような美夏にとって救いの道になったことがすごく伝わってきました。
カカオ95%のチョコレート
蒼も、美夏も、悠真(野村周平さん)も、自分の置かれた環境と、自分の想い、願いのギャップに苦しんでいて、自分を見失うような、、正直、「恋愛」モノと思えない深さ、暗さがあったように思います。
恋愛映画にあるはずのハート❤️が全然飛び散らないどころか、笑顔すら、ほとんど見られない恋愛、、、。
私の好きなドラマ『美しい彼』で、「♪甘くて苦いカラメル♪」(song byもさを)とあったけど、この映画はそんな甘さもない感じ。
「カカオ95%のチョコレート」ってところでしょうかね。
食べたことないけど、かなり苦いらしいから、ね。
人と人を繋ぐ「手」
それから、私的にこのドラマのキーは「手」だと思いました。
声を持たない蒼と、視力を持たない美夏の共通のツールが「手」。
コミニュケーションに指でトントンする「手」、
ピアノを弾く「手」
美夏が歩く道をかき分ける蒼の「手」
そして、悠真が失う「手」
たとえ直接触れたりしなくても、「手」のつながりは「心のつながり」になっていく。
触ればすぐに、ピアニストの手ではないとわかる、薄汚く荒れた蒼の手。
だけどそれが、美夏の進む道を拓いてくれる「神の手」だって、美夏は分かってたんだなぁ、とそこでも涙、、、。
全体的に、どんよりした重い流れですが、その中に、それでも「夢」って大きくても小さくてもいいから、「持つ」ことが大事なんだなって思わせてくれるんです。
夢も希望もなく、ただ生きているだけだった蒼が、美夏の夢を支えることを、自分の夢と考えられるようになって、わずかに「生きることへの希望」が見え始めた時の悲劇。
辛すぎる、、、。
言葉を発せないことで生じてしまう行き違いが苦しかった、、、。
フィナーレにさらなる涙を誘うMrs.
そんな苦しくも哀しいお話に一条の光が見えたエンディングで流れるのが、主題歌 Mrs.GreenAppleの「ナハトムジーク」
マジで神曲です!
YouTubeのMV、字幕をonにすれば歌詞がきちんと流れるので、どんな歌か、私も知っていました。
知っているのに、エンドロールで流れた時のあの感動!!
実は、字幕メガネで見ていると、エンドロールの時に主題歌が流れると、歌詞が字幕として出るんです。
(一般の方には音楽が流れるだけ。これは字幕メガネ使用者の特権❤️)
だから、ストーリーの締めくくりの感動に、この歌の歌詞の言葉ひとつひとつがグイグイ来ちゃって、ウルっと、字幕が滲んじゃいました。
なんでこんな歌が作れるの?Mrsさん?大森さん?って感じ。
数年前、娘の部活のスライドショーで「青と夏」を取り入れてから、名前だけは知っていたグループ。
昨年、レコ大取ったり、ボーカルの大森元貴さんの突発性難聴の公表があったり、で、、烏滸がましくも「同病」仲間みたいな親近感持っちゃって、他の曲もいろいろ聞いて(見て)いたのですが、どの曲もすごいですよね。
何より「他の人を思うのも大事だけど、まずは自分を愛してあげて」って言ってくれるような、、
そんな歌に多くの人が励まされ、力づけられるんだろうなぁ、と。
どうか、突難を克服し、歌を送り出し続けてほしいです。
いや、万が一、、万が一にも聴力に影響が残ってしまっても、彼ならこれからも素敵な歌を作り出せるだろうな、と(何様な私)
ただ、今回、映画の中に流血や暴力、グロいシーンがあるから観にいかない、というJam'sさん(ミセスのファンの皆さん)たちの声がけっこうあって、、。
もちろん「ナハトムジーク」単体でも素晴らしい感動的な曲なのですが、あのグロい、辛い、そういうシーンを「ナハトムジーク」が濾過してくれるようにも思うので、ちょっぴりもったいないなぁ、と。
まとめ
今回は、あらかじめ知っていても胸がギュッと締め付けられるシーンや叫びたくなるシーンもあり、恋愛ものを見ている気持ちではありませんでした。
でも「誰かを想う」ことの尊さを強く感じました。
山田涼介くんが、恋愛映画での主演が初めてっていうのも意外でしたが、「たかがアイドル」の映画って括りにされないといいなぁ。
「サイレント」は単に声無しという意味の「沈黙」ではなく、心の中で何かを誰かを想う、そういう「静けさ」なのではないか?と思いました。
おまけ
声を出さない蒼のコミニュケーション手段として、スマホに打ったり、読み上げ音声を使ったりしてました。
聴覚障害者と視覚障害者のコミュニケーションは、昔は音声でのやりとりも手話でのやりとりもできないため、なかなか難しかったのですが、ITの進歩で今はそのハードルも下がってきてます。
私も視覚障害者のある友達と、UDトーク使ったりしながらおしゃべりしてますし。
ツールの使いよう、ですね。障害の違いを乗り越えられるのだから、障害の有無も乗り越えられるよね、絶対に、、なんてね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
毎度毎度長くなってしまいます。
でも、とにかく感動したよってことが伝わるといいなぁ、と。
またお越しください!