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はやる気持ちに、足を止めるゆとりを。〜『水晶体に映る記憶』出航イベント参加レポート前編〜

かなり時間が経ってしまったが、先月初頭の日曜日、久々に会う友人、小林ひかりさんの門出を祝うようなイベントに、参加してきた。

主催を務めるのは、
看護師資格を持つデザイナー、小林ひかりさんと、
店舗を持たない1人書店、「いろどり書房」店主の鳥平純子さんだ。
2人とも僕より若く、ひかりさんは5つ下で僕の弟と同い年、純子さんは1つ下で僕の妹と同い年だ。
自分にとってもきょうだいみたいな年齢の2人が開くイベントを見届けたい、という気持ちもあり、兵庫県の伊丹に向かった。

今回のイベントは小林ひかりさんがnoteをまとめた書籍「水晶体に映る記憶」を出版した、出版記念イベントだった。

主張しないとうっかり忘れられそうになるので敢えて言うが、この2人を繋いだのは、僕である。


昨年夏にひかりさんが山形から大阪に引っ越したということは聞いていて、新しい環境は何かと大変だろうなあとなんとなく気になっていた。

一方純子さんと知り合ったのは昨年11月。
お世話になっている書店「読書のすすめ」の店員である小川さんのイベントに参加した時だ。
小川さんから「1人で本屋さん始めたいって子が来るから、いろいろ教えてあげてよ!」と言われ、イベント会場に向かった、という話を、何回か前の記事で書いた。

本屋さんを始めたいという純子さんの話を聞きながら
「本屋になるなら、ロゴが必要だよな…?」
「あわよくば、大阪に住んでる小林ひかりさんに、依頼してもらえないだろうか…?!」
と、頭によぎる。
僕と同じ1人書店を歩む上で、韋編三絶のロゴデザインをそれは丁寧に、僕の心を引き出すように寄り添いながら進めてくれたデザイナーの小林ひかりさんがこのタイミングで関西に住んでいるのは、この上なくちょうどいい気がした。


ただしゴリ押しはしていない。後日、純子さんがラジオで、「小林さんは、韋編三絶の松浦さんからさらっと紹介されて〜」と言っていた。思惑通りだ。
こういうのは、ゴリ押しではダメなのだ。
条件だけ整えて、あとは自然に任せる。繋がるのも、距離を置くのも、義理や付き合いではなく、当人たちの勘と感性に任せたい。なんだか、これからの時代、力技やゴリ押しは通用しないような気がしているのだ。
力を抜いて、自然体でそっと押し出せば、他力の風が縁をどこまでも遠くへ運んでくれるような、そんな予感がある。


最初にうっかり主張してしまったが、僕の紹介で出会った2人が、その後僕の存在を忘れるくらい仲良くなってくれたのなら、これ以上のことはない。

昔、朝ドラのてるてる家族で、岸谷五朗演じるパン屋を営むお父さんが、「パンを膨らますみたいに、子供が育ったら親は消える。イースト菌と一緒や」と言っていて深く感銘を受けたのを思い出す。存在は消えて、成果が残る。これがいいのだ。

ただ、自分が一押しした流れが大きなうねりとなって、瞬く間に動き出したのには驚いた。

紹介するといった手前、一応2人を引き合わせるため、僕含め3人でZoomを行い、顔合わせはしておいたが、その後は2人でやりとりしてもらい、特に関わっていなかった。

その数日後、以前ひかりさんに、「関西に住んでるならいつか行ってみて」、と僕は行ったことがないのになんとなく紹介していたブックランドフレンズさんが待ち合わせ場所になり、ひかりさんと純子さんはリアルで初顔合わせをすることになる。

その時の出来事が、ひかりさんのnoteに書いてあり、グッときてしまった。

記事はこちら。

続きの文章に進む前に、ぜひ読んでいただきたい。
読んだあと、この文章に戻って来れなくなっても全然いい。ひかりさんの文章は、土や、風や、お日様のにおいがする。読むごとに身体が息を吹き返す。
そういう書き手なのだ。

こんな一日があったあと、話を聞いた読書のすすめ小川さんのアイデアで、2人がブックランドフレンズさんでのイベントをひらくことになった、らしい。

そんな急展開、あります?

紹介した時には、僕はひかりさんが本を出そうとしていることも知らなかったし、なんならその後鳥平さんの立ち上げたいろどり書店さんの方が、僕の韋編三絶よりよっぽど、ひかりさんの本をたくさん、とびっきりの愛を込めていろんな方に届けてくれることになる。

もちろん鳥平さんは、出会ったその日に、書店のロゴと、さらには名刺のデザインもひかりさんに依頼してくれたという。

思惑通りどころか、想像以上の流れになっている。

そんな2人が伊丹の本屋さんでイベントをするという。
行くでしょ、そりゃ。ここで行かなかったら、自分はこの仲間外れ感を引きずって、遠くから応援する達観した先輩になるしかない。特に邪険にされているわけではないけれど、勝手にそう感じて、意固地になってしまうようなところが、僕にはある。

そんな焦る気持ちの一方で、自分が軽い気持ちで投げかけた波紋が、大きな波になってしまった。その行く末を見届けたい。そういう純粋な部分もあり、仕事終わりに東京駅から新幹線に飛び乗り、西へ向かった。

この旅程のために、朝早起きして、実験を上手くやりくりした。モチベーションさえあれば、こんなことが出来るのか、と自分で自分にびっくりした。

大阪に着いた夜はまっすぐ、靴磨きトラベラー佐原総将くんの実家の串焼き屋さんを訪れた。
こちらがまたとっても素敵なお店だったのだけど、その紹介はまた今度にする。


イベント当日、早めに伊丹入りして、ひかりさんと、校正の前田稜汰さん、純子さんとランチの予定だった。
以前「いのちのしまい方」の記事での時には書かなかったが、ブックランドフレンズさんで待ち合わせた際、こちらの純子さんが30分ほど遅れてきた。
前日いろいろ大変だったらしく、それは仕方ないなと思っていたが、

今回も、30分ほど遅れてきた(笑)
僕もよく遅刻するので、妙な親近感を感じてしまう。

ただ、お店が忙しい時間帯だったため、みんなの料理が運ばれてきたのは、純子さんが到着した後だった。天才的なタイミングである。
こういうところ、持ってるなぁと思う。

その後イベント会場であるブックランドフレンズさんに移動して、中で準備を進める。僕もちゃっかりスタッフのような顔をして混ざる。いいぞ、作戦通りだ。

椅子を並べたり、机を運んだりを手伝う。

準備の途中、店主のこんぶさんが、参加者全員分のコーヒーを入れてくれるとのことで、大量に水を確保してくる必要が生まれた。

店の前に停まった、ママチャリ。
カゴには6本ほどの、空の2Lペットボトル。
主催の2人と、稜汰さんは準備で忙しい。
店主であるこんぶさんに、行かせるわけには行かない。

誰が行くのか?


俺でしょ。


高校時代に授業で聞いた中村文昭さんの言葉が蘇る。

「あなたの期待、上回ります。」

こんぶさんに道を教えてもらうの図


道案内を聞いている間、純子さんのツッコミが冴える。
「あかん、絶対わかってへん」

さすが、よくわかったな。
こんぶさんの道案内が右耳から左耳へ通り抜ける。
「お寺の横の道を入って〜」
「その先を左に〜」

まあ、行けばなんとかなるだろうと、自転車に跨り、漕ぎ出した。

慣れない高さの自転車。
初見の町を自転車で走り、蛇口を探す。

お寺とか言ってたな、寺の中か?

早速迷走を始める。
お寺の境内に自転車で侵入し、砂利を飛び散らせながら、水が汲めそうな所を探す。(本当にごめんなさい)

境内のお墓の後ろに、一応、水が汲めそうな場所があった。

絶対違うでしょと思いながらも、軌道修正をせねばならないので、ビデオ通話を純子さんにかける。二人に目の前の蛇口を見せ、ドキドキしながら正解か否かを問う。


こんぶさんが一言
「それ、墓石洗う水やで」



画面の向こうと手前で、笑い転げる3名。
ボケるつもりはなかったのだが、結果としてお笑いの本場で、関西人2名から笑いを取れたので、この上なく満足した。

よかった、爪痕を残せた…。前回の講演会の時には緊張してこんぶさんとあまりお話しできなかったので、少し近づいた気がした。

気を取り直して、新たなアドバイスをもとに道を少し走らせたら、あっさり目的の水場に着いた。さっきみんなで昼食を食べたお店の近くである。
なんだ、ここの事だったのか。

最短ルートで進まない事から生まれる豊かさを胸に、水を汲む。

ここで、あることに気づく。
皆さんは、2Lのペットボトルをカゴにいっぱいに詰めたことはあるだろうか?
2Lの水、すなわちほぼ2kg
それが6本である。
都合12kgほどの重さに、ママチャリのカゴが悲鳴を上げる。

自転車を壊して返すわけにはいかない。
緊張しながらバランスを取って漕いで、なんとかお店にたどり着く。
こんぶさんが温かく出迎えてくれるが、まだ油断はできない。ハンドルから手を離せば、12kg分の重さと共に、ママチャリが崩れ落ちるのは目に見えていた。
カゴのペットボトルを回収してもらい、晴れて任務完了となった。

ここまでお読みいただいてまだ、講演会は始まらない。

長くなったので、次回に続きます。

次回、講演会本編。



講演会本番を書いていないのに、ちゃっかり告知だけします。


この画像に虹が隠れております。探してみてください。

著者の小林ひかりさん、イラストレーターのmioさん、校正の前田稜汰さんとトークイベントを行います。
前述の鳥平さんにも、本の出張販売を行なっていただきます。
僕も、韋編三絶として出店させてもらいます。

創作、ものづくり、表現などに関わる方々の集まるイベントになりそうです。

新しい春の終わりに、少しゆっくりと流れる時間を、あなたに。

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