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本屋開業日記 番外編3

実店舗オープンまでの記録をつける趣旨で始めた「本屋開業日記」、番外編では僕自身がどういう経緯で本屋を始めることになったかについて書いてきました。
4月に「番外編2」を書いて、あと1回で終わりの予定だったのに、続きを書かずにそのまま放置してしまっていました。その間にお店もオープンしてしまったのですが、今更ながら完結させてしまおうと思います。
前回まではこちら。

25歳頃、仕事をやめて次は何をしようかなぁと思っていたところ、アルバイト募集の貼り紙を見てヴィレッジ・ヴァンガード(以下VV)にアルバイト入社しました。今はなき熊本パルコ店です。


今のことは分からないのですが、僕が入った時は、最初の数日こそ店内を回って商品の位置やレジ操作を覚えたりと新入りらしいことをしていたものの、すぐにポップを書くようになり、商品の担当を持って発注をやるようになりと、どんどん店の運営に携わらせてもらうようになっていきました。
それは、僕が特別有能だったとかそういうことではなく、VVという会社がそういうスタイルだったんです。
当時は働いている人もみんな変な人達ばっかりだったし、とにかく色んなことを自由にやらせてもらえていたので毎日楽しかった。

2年半だか3年勤めたところで店長もやらせてもらうことになり、社員にも昇格。最終的に7年ほど勤めたのですが、その間に県外に転勤したり、別事業部に異動になったり、会社で知り合った人と結婚したりと、20代半ばから30代前半までの時期をVV社とともに過ごしました。ロクな学生時代を過ごしてこなかった自分にとっては、遅れて来た青春時代といった感じでした。

VV社を辞めたのは2011年でした。なぜ辞めたかというと、自分がやりたいと思っていることが、会社の空気と合わないような気がしてきたんです。
そうは言っても自由な社風自体は変わらなかったので、確固たる意志を持って店作りをして、結果も伴う仕事ができれば良かっただけなんだと今となっては思うのですが、自分の未熟さゆえ不満ばかりが溜まってしまうことになり、結果辞めることになってしまった。

いつもそうなんですが、仕事を辞めたあとのことは全く考えておらず、とりあえず熊本市内に戻ってきて、しばらく雇用保険のお世話になりながらブラブラしてました。
そんな時期に何となく作ったのが、今の前身になる古本屋のオンラインストアでした。本の手持ちは少しあったので、それを売り物にするために写真を撮って、紹介文を書いて、アップするだけ。ほとんどお金はかけずに始めたものの、それ自体は小遣い稼ぎになるようなものですらありませんでした。

その後、無印良品、紀伊國屋書店などで働きながら、イベント出店したりと本屋活動を時々はしていたんですが、だらだら続けているうちにモチベーションも次第に下がっていき、やめる理由がないだけの状態の時期もありました。

熊本地震の後、今働いている医療機関に職場を移して常勤職員になり、生活も落ち着いてきたところで、本屋のことをちょっと仕切り直ししようと思い、屋号を今の「古本と新刊scene」に変更し、オンラインストアも当時使っていたところからstoresに引っ越ししました。

いちおう心機一転ということで、いわゆる一棚店主というのをやってみたり、ちょこちょこ何か試みたりはしたものの、低空飛行は続いていました。
ただ、何かやらないといけないという思いだけはあったんです。そして、そのやれる「何か」というのが、自分にとっては本屋しか残っていなかった。

本屋の仕組みについては、VVと紀伊国屋でおおかたのことは把握していました。スタイルとしては真逆と言っていいくらいの二社で働く経験ができたのは自分にとっては貴重でした。特に一般書店のお客さんの感じというか、新聞の切り抜きをレジに持ってきて「この本がほしい」と言われたりしたことはVVの時には一度もなかったので(まずそういう人にはVVが本屋と認識されてないと思う)、すごく対照的で面白かったです。

2021年になって、自分の今後のことを本当に考えないといけない状況になりました。
医療機関の仕事も、本屋を始める準備のためということで雇ってもらっていたので、本屋をやらないのであれば話は変わってくるし、これからの人生どうしていくかを考えないといけない。
あと、2011年に結婚した妻と離婚するという出来事もありました。理由はあんまりここに書けるようなことではないけど、協議離婚で今も普通に仲良くしている、ということだけは記しておきます。ちなみに子どもはいません。

そんなこんなで、本屋をやるならもう今やるしかないし、やらないなら全部畳んでしまったほうが良いかなという気持ちになっていました。

悩んだ結果、本屋をやることを選びました。一番の理由は、「他にや(れ)ることがなかったから」というのが正直なところです。随分後ろ向きな理由で、読んでもらっている人には申し訳ないんですが(笑)。もちろん本は好きだし、誰かに自分の好きな本を知ってもらいたいという気持ちもあるんだけど、書店文化の継続とか、地域コミュニティの醸成とか、そういう立派な理由は何もなかったんです。
本屋を始める準備にあたって、資金調達の方法としてクラウドファンディングを考えたこともあったんだけど、もっともらしいことを書き連ねて会ったこともない人にお金を出してもらうのは、何だか騙しているようで嫌だったので断念しました(笑)。

それからのことは「本屋開業日記」の本編に書いてきた通りです。

そんなこんなで、紆余曲折ありながらもどうにかオープンまでこぎつけ、とりあえず毎日店を開け続けています。

あまり浮き沈みのない人生で、我ながらこんなのわざわざ人に読ませるようなもんじゃなかったのではと思ってるんですが、もしお楽しみ頂けたとしたら幸いです。

これにて番外編は終わりです。お付き合いいただきありがとうございました。
本編の方もあと1、2回で終了予定ですので、よろしければこちらも最後までお付き合いください。

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