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本屋開業日記 その13

前回、オープン当日までのバタバタについて書きつつ、「まだ終わっていないことがある」ということで、次回の更新を予告していました。

オープンして2ヶ月近くが経ちましたが、先日その「まだ終わっていないこと」を済ませました。それは「支払い」です。

今現在営業中のこの場所を本屋にするために、色々な方にご協力頂きましたので、その報酬をお渡ししするという大事な仕事が残っていました。
本棚を始めとする木工造作の工事費、電気工事費等は先にいくつかの業者さんや個人にお支払していましたが、基本設計やプランニングから、現場作業までやってくれたササ企画の佐々木さんと、ショップカードや窓ガラスのサインのデザインをしてくれたシホさんへのお支払いがまだ残っていました。
8/25にそのお二方への報酬をキャッシュでお渡しして、店舗オープン関連の諸々は無事終了。みなさん本当にありがとうございました。

オフィスビルの一室が…
ばっちり良い感じの本屋になりました

空間づくりにかかったお金は、ざっくり100万円くらい。見た目はこれだけ変わっていますが、元々あったものを活かす工夫だったり、施工業者さんのご厚意もあって、かなり安く仕上がったと思います。おかげさまで、大きい金額の負債を抱えずにスタートできました。
やったこととしては「お金を払ったよ」というだけなのですが、区切りとしてそこまで終わらせてから書きたかったので、えらく引っ張ってしまいました。

2月からnoteを始めて、この「本屋開業日記」というタイトルで、店がオープンするまでの記録を付け続けてきましたが、いかがだったでしょうか。
これを読んでくださっている方の中には、将来本屋を自分でやってみたいとお考えの方もいらっしゃるのではないかと思うのですが、少しでもお役に立てたらということで、最後に少し情報をまとめておきます。

■名前をつけて、部屋にある本に値段をつければ、今日からあなたも本屋です。

本屋に資格はいりません。「〇〇書店」と名乗れば、誰でもすぐに本屋になれます。そして、部屋にある本を売り物にすれば在庫も確保できます。メチャクチャ簡単です。ついでにSNSのアカウントでもつくっておきましょう。

■とりあえず、棚貸し本屋とか、一箱古本市とかに出してみては?

店ができたらあとは売る場所。最近増えている一箱本屋、一棚店主など、小さな規模で手軽に出店できる仕組みを利用したり、一箱古本市などのイベントにまず出店してみるのが良いと思います。続けていく気がなくなったら辞めても全然問題ないので、とりあえずこの辺くらいまではやってみると、見えてくるものもあるんじゃないでしょうか。

■もう少しちゃんとやりたいと思ったら、情報収集。

書店の一棚店主などは出店料が必要なのがほとんどだと思うのですが、その上で小さなスペースでガンガン本を売って利益を出していくというのは至難の業です。
もう少し本格的な活動がしたいと思ったら、本を読んで色々調べてみてください。本屋の勤務経験がなくても、情報は出揃っているので、本を読めば大抵のことはわかります。僕が店を始める前に読んで参考になった本はおもにこんなところ。

書店の仕組み的なことが全くわからないという方は、まず「これからの本屋読本」を読むことをおすすめします。少し情報のアップデートが必要な箇所があるかもしれませんが。「IN/SECTS」は本屋に限らず個人店の経営者へのインタビューなどが掲載されているので、心持ちや資金面のことが気になる方は参考になると思います。「建築知識」は書店の坪数や売り場のレイアウト、在庫数など店舗を持つ場合には役立つ情報がいっぱいです。
SNSやネットでは断片的な情報しか手に入らないことが多いので、一度はこういう本を読んでおきましょう。

■それでもやりたいなら、あとはもうやってみるしかない

ここから先に進もうと思ったら、それなりにリスクを背負った行動が必要になってくると思います。店舗を持つのか、移動式店舗でやるのか、ネットだけでやるのか。古本を売るのか、新刊本を売るのか、色々選択肢はありますが、ノーリスクで始められることは殆どないでしょう。

ある程度調べた方は嫌というほど目にしたと思いますが、本屋は利益がたくさん出る商売ではありません。
例えば、月の売上が30万だったとします。その中から家賃や光熱費、消耗品を払いつつ、次に売る本を仕入れないといけません。例えば、僕の店では新刊本は大体販売価格の70%の買切りで仕入れることが多いです。その条件で30万円売った分の本をもう一度棚に加えようと思ったら、21万円は本の仕入れに使うことになります。これだと、手元に残るお金はほとんどないということが分かると思います。今自分で書いていても嫌になってくる話ですが(笑)、こういうことも事前に考えておかないと、あとから分かったではとんでもないことになります。

なんにせよ、見立てどおりに事が進む保証はどこにもないので、知識は充分に得た上で、その先へ進むかどうかは自分の意志の問題だと思います。

■本屋に向いている人、向いていない人

「ここにある本は全部読んだんですか?」と聞かれることがよくありますが、この先もずーっと同じ本しか置かないならともかく、売り物の本を全部読むなんてことが出来ている人は、取り扱っているタイトル数が極端に少ないような特殊な店を除けば、ほとんどいないと思います。
逆に言うと、本のことを何から何まで知っていなくても、本屋にはなれます。

それから、本をたくさん読みたいという人は、本屋には向いていないと思います。本屋に限らず一人や少人数で店を切り盛りするのは大変なので、自由な時間は限られてきます。
僕は、店を始める前から、本は中身を全部読まなくてもとりあえず買えばオッケーというスタンスだったので、読む時間がなくてもさほど気にはしていません。

「本が売れて自分の手元から離れるのは惜しくないですか?」と聞かれることもありますが、僕は全然惜しくないです。棚にある本をいますぐ全部買って頂いても一向に構いません。自分の本を手放したくないと思う人は、本屋には向いていないと思います。

本屋を始めて2ヶ月程度の人間がこんなこと書くのもおこがましいと思いつつ、これを持って「本屋開業日記」というマガジンは終了となります。最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。

店舗がオープンしてからは、「本屋営業日誌」という新しいマガジンを作って、そちらに毎日の記録を付けています。

あとは、何かあれば単独で記事を書くこともあると思いますので、note自体は今後も続けていきます。今後ともよろしくお願いいたします。

最後の最後にド直球のお願いをしますが、本買ってください(笑)。いや、笑い事じゃないか。本が売れないことには続けていけませんゆえ。オンラインでも実店舗でも構いませんので。
という切実なお願いでした。それではまたnoteで。


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